極東ロシア:ウラジオストク訪問記(その3)
前回の(その2)に続きまして、その3でございます。
今回のウトジオストク渡航は、その1でも記載のとおり、初めての訪問でした。航空便の都合で研修に使用出来るのは二日間のみでのタイトスケジュールでしたので、ほとんど観光らしいことは出来ていません。商売柄、気になるのは… 街ゆく自動車の車種や年式、あとはロシア美人とかですかね(笑)そんな、弾丸ツアーですが日本から輸出された中古車の販売状況も確認しに行きました。
グリーンコーナーの様子
手前から、丘の向こうまで全て中古車だ!
80%以上が日本車。韓国車や米車も在庫される
高年式から低年式まで在庫種類は多様である
日本の中古車輸出業者の間では通称「グリーンコーナー」と呼ばれるウラジオストク郊外の丘陵に、ロシア語で“緑の一隅”意味する(зелёный угол:ゼリョーニィ/ウーゴル)と呼ばれる、巨大な中古車販売市場があります。推定1万台は在庫してあろうかと言う中古車が展示販売されている。アポイント無しでの見学でしたので、あまり歓迎される雰囲気では無いのは現状での中古車展示即売ビジネスが転換期を迎えているからでしょうか。
今回の訪問記その1でも記載しましたが、ウラジオストクでの中古車ビジネスの発端は、ロシア船員のお土産携行品輸出からのスタートだと言われています。1980年代頃は5万円以下の領収書があれば簡易通関が可能でした。その後、領収書の偽造や盗難車の横行で、抹消登録書の写し等が必要になって現在では輸出抹消が必要になって行きました。1980年代から90年代は年間推定10万台から15万台くらいの中古車が、日本海側の港である、新潟港、富山港、伏木富山港などから輸出されて行きました。それらの港付近にはロシア人船員向けに中古車販売するお店が多数乱立しました。2000年頃には、年間推定20万台を超える台数が輸出されていたと言われていまして、日本海側の港付近の輸出向け中古車販売業者も活況でした。しかし一方で、ロシア人向けに販売する業者は日本人だけに留まらずに、パキスタン人やスリランカ人にブラジル人等々の日本人以外の中古車販売店も多くなってきて、日本人の経営する店舗とのイザコザが発生するようなトラブルも多く発生しました。この2000年頃には、80%程度がパキスタン人の方が経営するロシア人船員向け中古車販売店だったと言います。イスラム教のパキスタン人への嫌がらせで、イスラム教の経典であるコーランを破り焼払いをするなどの蛮行をする事件まで起きました。良い中古車を求めているロシア人にとってはどの国籍の人から買い求めようが問題は無く、お土産輸出向けの中古車販売店では、ロシア語と英語、パキスタン人が使うウルドゥー語が飛び交い、車両の代金決済はアメリカドルで行われる等の、日本国内とは思えないような有様だったと当時を知る、中古車運送業者さんの話を聞いた事があります。また、タイヤーやカーステレオの盗難。最悪なケースは車両盗難が後を絶たない時代に突入したのも、この時代でした。パキスタン人に雇われた日本人が盗難をして逮捕される事件まで発生して、中古車ビジネスの闇の部分でもあります。
自動車リサイクル法が完全施行された2005年からは輸出抹消制度が始まり正確な統計データーが出ています。その2005年には、ロシア向けの中古車輸出が年間約24万台。2008年には年間563,369台まで増加して、その殆どが、新潟港、富山港、伏木富山港等々の日本海側の湾港から輸出されて行ったのです。しかし、2008年9月15日からのリーマンショックからの世界的金融危機と、2009年には、ロシア側の中古車輸入関税の大幅な引上げ措置、右ハンドル規制への政治的な流れ等々が重なり、年間の輸出台数は53,180台まで減少しました。筆者が渡航した2015年の前年2014年では128,312台と回復したように見えるが、実際は2014年のウクライナ危機・クリミア危機やルーブル暴落を受けて、回復基調から減少していく感じになっています。
ちなみに、2014年に日本から輸出された中古車の総台数は、1,283,390台です。その台数と順位は、
1位 | ミャンマー | 160,437台 |
2位 | ロシア | 128,312台 |
3位 | アラブ首長国連邦 | 112,636台 |
4位 | ニュージーランド | 110,333台 |
5位 | チリ | 73,364台 |
6位 | ケニア | 67,059台 |
7位 | 南アフリカ共和国 | 53,450台 |
8位 | キルギス | 48,351台 |
9位 | グルジア | 38,759台 |
10位 | パキスタン | 38,228台 |
で、以下は、タンザニア・モンゴル・スリランカ・フィリピン・マレーシア・ウガンダ・モザンビーク・ザンビア・バングラディシュ・トリニダード&トバコと続きます。(日本中古車輸出業協同組合の統計による) 先に記載した2009年の関税引上げ後に、盗難車に全損事故車で売買された廃車の車台番号の付け替え鈑金加工等を施し、正規の書類を付けた偽装車(ニコイチ)接合車が数多く流通するようになった。不正輸出はもちろん犯罪で、ロシア側からも車台番号のおかしなプリウスがあると日本側に問い合わせがあり、不正輸出グループが検挙された事件もある。いずれにせよ、利益を上げにくくなった事が要因と考えられるが、ロシア側でも、切断車や水没車は日本車と言えども敬遠されるようで、日本のオートオークションの出品票が品質保証書のように、ディスプレイされている車もあった。
委託販売されている場合もある
ロシア全土から買いに来るらしい
日本製の日用品を、非課税で販売していた
お土産品で非課税だった、酒類。
ライセンス無しのアルコール販売は違法かも?
日本製の日用品は品質も良く人気がある
このグリーンコーナーでは、輸入業者としてお店を出しているパターンと、個人でお土産携行品として個人輸入した人が、月に5000ルーブル程支払い場所を借りて展示しブローカーに委託販売を依頼しているパターンがあるとの事だ。また、おみやげ品で非課税枠にて持ち込まれたた、アルコール類を初めとして、箱ティシュ、紙おむつ、ウエットティシュ、お菓子、虫よけスプレー、シャンプー、リンス、コーヒー等々様々な品目の販売をしていました。それに、日本製の日用品はとても人気が高く、特に紙おむつの品質は他国の製品では無い高品質だと人気が高い。小遣い稼ぎでやっているかと思いきや、中古車の販売が不振なので少しでもカバーしたい思惑も働いているとの事。どうやら、自動車中古部品販売業者と同じくWEB化の波が押し寄せているようで、その2で記載した、Japancar.ru と、Dorm.ru の存在が過去のビジネスモデルを凌駕しつつあるようだ。特に中古車に強いDorm.ru は、取引のポータルサイトとして利用されている様で、日本のオートオークションで仕入れた段階で、そのオークションデーターや画像をそのままサイト掲載して、到着予定日等を入れる事で従来のグリーンコーナーでの展示を介さずに、中古車を求めるユーザーに届いてしまうからだ。
日本のナンバープレートが装着された画像
日本A・Aの出品画像をそのまま掲載
上記の画像は、ロシアでの中古車販売サイトをキャプチャしたものだが、2009年式のトヨタ車が10,800USドル(1$:120円計算で1,296,000円)で掲載されていた。札幌ナンバーがついて、日本のオートオークションの画像がそのまま利用されているのが分かるだろうか。ウラジオストクに着くまでに売れれば、通関後に即お客様に納車可能となり、キャシュフローも良いし、在庫リスクも小さくなるので、ネット商取引が活発化して来たのだと言う。また、2015年のニュースとして日本のオートオークション運営会社である、A商事がウラジオストクのS社と業務提携をして、ウラジオストク旧空港跡地で日本式のオートオークションを開催して、新しい中古車販売ルートとして注目されている。またそのオートオークションを Dorm.ruと連携する話もある。いずれにせよ、日本との距離を考えれば、ウラジオストクがロシアにおける日本製の中古車や中古部品流通の拠点となっているのは間違いない事で、web上でのネット取引サイト充実により価格の透明性が保たれると共に、需要が把握しやすい事となっている点は、今後とも流通拠点として残ると思われます。
ウラジオストク市内、交差点でも信号機が少ない
ジクリー(ラーダ)と、韓国製小型トラック
市内の交差点、横断歩道も無い
郊外に走ると、悪路の地道も多い
市内のスーパーマーケット、品揃えは良い
街の至る所には落書きが目立つ
郊外の公園レストラン内の遊具
放水するとミサイルでも撃てそうな消防車
冒頭で記載のとおり、殆ど観光らしい場所には行けてないのですが、“鷹の巣”と呼ばれる展望台に行きました。なぜ鷹巣と呼ばれているのか、どうやらお金持ちや権力者達が、市街を見下ろせる高台に住むことが多いので、展望台近くのマンション等の建屋は高級住宅街になっているそうです。
“権力者=鷹”⇒“権力者の居住区=鷹の巣”と言う事らしいです… ホントかな(笑)
鷹の巣から湾内を望む
恋人たちが、愛の鍵をかける遊び
筆者は嫁ちゃんを思い、鍵をかける。
ここウラジオストクは、シベリア鉄道の終着駅でもあります。中古自動車部品もシベリア鉄道に載せて西方に向かうそうです。西の始発駅は首都モスクワ。約9300kmを8日間かけて走るそうです。世界一長い鉄道です。そういった点でも、ウラジオストクを起点に中央アジアからロシア西部に向けての中古部品流通ハブの一つとして考えても良いでしょう。記載したとおり他のUAEのシャルジャや、チリのイキケ、マレーシアのクアラルンプール等と違い、NET取引が多くWEB上で商品の画像等を確認が容易という点と、WEB上で複数社の価格が比較可能なので購買しやすい環境である事に加え、シベリア大陸横断鉄道がその商品の運搬を補っている事だと思われる。そんな事を思い、帰国予定日の朝に早起きをしてウラジオストク駅を観に行きました。
ウラジオストク駅の、駅舎
シベリア鉄道、ディーゼル車かな
ウラジオストク駅のバスターミナル
どこまでも続く線路
筆者は、今回の訪問が初めてのロシアでしたが、ウラジオストクの人々は思った以上に親日であり、言葉が通じない筆者に対してもとても親切に接してくれました。朝、ホテルの近所を散策していると必ず道路清掃しているおばさんに挨拶され、こちらが片言のロシア語で挨拶を返すと皺くちゃな顔をさらにくしゃくしゃにした笑顔で答えてくれるなど、とても好印象な国でした。
中古車輸出のビジネスは、ロシア以外の国々も日本の中古車を欲しており、輸出先国間での価格競争が激しくディーゼル中古トラック等の現状では高額車になった車は、韓国製の安い新車にシェアを増やされている様ですし、中古部品に関しても、ウラジオストク以外の他国の都市でも、その部品獲得競争は激化している状況です。しかしウラジオストク、ロシアの規制が大きく厳しくならない限り、商品の流通は求められるような懐の深さを感じました。
帰国向けの機内から見た大陸
マトリョーシカ(Матрёшка)
筆者がロシアに出張すると聴いて、子供たちにせがまれたお土産は、マトリョーシカ。中から次々と出て来る人形に驚きながら、次に訪問したらウラジオストクは何を出して来るのか?何が発見出来るのか?楽しみな気持ちでいっぱいです。
仕事、頑張って! 再度、訪問できるようになりたいと思う訪問先でした。
その1からその3までの長文乱文を読んで頂きましてありがとうございました。
パーツやメタル資源として再利用し国内外に販売!
車解体の資格を持つ廃車.comの工場と直取引だから高く買取れる。
すでに払った31,600円の自動車税も返ってくる。
(4月に廃車/1,600cc普通自動車)