皆さんこんにちは‼
北海道大学体育会自動車部です。
突然ですが、みなさんはシーニックバイウェイというものをご存じでしょうか?
北海道を自動車で観光している人にとっては馴染み深く、「あー、あれね」とすぐに思い至ることでしょう。
そうです……あれです。
具体的に言いますと、中山峠で彼女とドライブなんかしちゃって、峠の頂上のサービスエリアで、揚げ芋なんか食べている時とかによく見かけるやつです。
北海道をドライブしていると、写真のような看板をよく見かけるのではないかと思います。
シーニックバイウェイ
しかし、皆さん。
よく見かける『シーニックバイウェイ』という言葉ですが、これが一体何なのかをご存じでしょうか?
今まさに、女の子とドライブしているそこのあなた‼
助手席に座っている女の子に「シーニックバイウェイってなに?」って聞かれて答えられますか?
そんな急な質問に対してまごついて、「しーにっくばいうぇいね…… シーニック…バイ…ウェイ。きっとシーニックなバイウェイなんだよ‼」
とか、ダサい返答をしてしまってはいませんか?
せっかくのデートが、その会話一つで台無しにならないようにするためにも、今日この場でしっかりと、シーニックバイウェイの理解を深めて、頂けたらなと思います。
シーニックバイウェイとは、『景観』や『シーン』といった意味を持つ『Scene』の形容詞です。
シーニック『Scenic』と、『脇道』や『寄り道』という意味を持つ、バイウェイ『Byway』 という二つの単語を掛け合わせて作られた造語です。
主に、自動車が走行する道路上の視点から、景観や自然、地域の特性などを利用して、観光や地域活性化を目的とする道路や、政策の事を言います。
アメリカで先行的に取り組まれている制度を参考にし、平成17年度より全国に先駆けて「シーニックバイウェイ北海道」として、本格的にスタートしました。
2019年(令和元年)8月現在では『支笏洞爺ニセコルート』や『萌える天北オロロンルート』などといった16の指定ルートで、展開されています。
豊かな自然資源を利用した観光業は、北海道において、北海道経済を支える主要産業の一つとして位置づけられています。
自家用車を利用した、個人旅行の増加などから、新しい旅行形態への対応が求められるようになりました。
平成10年4月、政府は「第6期北海道総合開発計画」において、自然との共生を基本とし、北海道らしい個性的な景観の保全・創出、観光振興を主要政策の一つとして打ち出しました。国土交通省北海道局では「わが村は美しく―北海道」運動を、平成13年2月に開始しました。
北海道において、平成13年10月に「北海道美しい景観のくにづくり条約」および「北海道観光のくにづくり条例」を制定するなど、景観保全・活用や観光振興に対する取り組みが活発に行われるようになりました。
こうした全国的・全道的な、景観整備および観光振興に関する関連施策が、展開されていく中で、自動車利用が活発な米国で行われている『シーニックバイウェイ制度』が景観の保全や創出、さらには観光産業の向上に効果があると期待さるようになりました。
また、国土交通省は平成13年8月に平成14年度の国土交通省重点政策の一つとして『優れた景観を有する観光ルート(シーニックバイウェイ)の指定・登録制度の導入』を打ち出しました。
こうした後押しもありつつ、国土交通省北海道局は、米国シーニックバイウェイ制度を参考にして、地域住民と行政が連携し沿道景観を保全する、総合的な施策を展開することで、北海道独自のドライブ観光の創出・振興、観光資源の充実、観光産業の活性化を目的としたシーニックバイウェイ制度を、導入することを目的としました。
「北海道におけるシーニックバイウェイ制度導入モデル検討委員会」を平成15年2月に設立しました。
シーニックバイウェイまでの取り組み
北海道における、シーニックバイウェイ制度導入モデル検討委員会では、制度の理念として北海道の将来像と、それを実現するために必要となる2つのゴールを設けました。
さらに、ゴールに到達するための基本的戦略として、基本方針を3つ設定しました。
景観に優れるといった美しい道路の形成や、北海道の地域資源を見出し、保全・活用することで地域住民が誇りに思え、旅行者が安全で快適に過ごせる環境を創造し、そういった北海道の豊かな環境の中で、地域住民と旅行者、地域産業と観光産業が共生できるような新しく美しい北海道を実現します。
⒈沿道景観整備などによる美しいツーリング環境の創造
沿道景観整備とともに、交通安全対策や、ユニバーサルデザインの導入など、皆が安全快適に利用できる美しいツーリング環境を作ります。
⒉地域資源の保全や、改善等による個性的で居心地の良い地域環境の創造
季節ごとの美しい景観や歴史、レクリエーション資源といった多様な地域資源の保全や改善等を通して、個性的で居心地の良い地域環境づくりを目指します。
⒈地域住民の運営体制づくり
地域住民や、民間企業などが運営主体となり、民間だけでなく関係行政機関も一体となった、創意工夫にあふれた推進体制の構築を目指します。
⒉ブランド形成によるコミュニティビジネスの創造
対外的な、プロモーションを積極的に行っていくことで、北海道らしい質の高い観光資源としての、ブランド形成を図ります。
また、訪れた人々が満足のできる個性的で、質の高いサービスを提供するため、新しいビジネスを積極的に開発し、地域の雇用創出にも繋げていきます。
⒊持続的サポートのための仕組みづくり
シーニックバイウェイモデルルートごとの、活動団体への技術支援や、関係機関との相互協力を持続的に推進していくために、支援センターを構築し持続可能なサポート体制を構築します。
また、地域に問わず多様な主体による協同を、支援するための情報共有システムの構築をめざし、ITを活用することで、様々な旅行者のニーズに対応できる情報提供システムを構築します。
以上のような、経緯や目的があって作り上げられたシーニックバイウェイ制度ではありますが、実際にどのような道路(制度)になっているのか、札幌シーニックバイウェイ藻岩山麓・定山渓ルート(以降定山渓ルートと省略)を例にとって見ていきたいと思います。
定山渓ルートのテーマは『「住んでよし、訪れてよし」の都市空間 ~都市と自然と人が紡ぎだす札幌の魅力~』となっています。
札幌市の南西部に位置し、都心から約一時間の距離にある等、交通のアクセスが良くなっています。
また、開拓使時代からの歴史や温泉、国営公園などでのキャンプや乗馬、森林散策など豊かな環境と、人々の暮らしが調和する魅力的なエリアとなっています。
定山渓ルートがどこを通っているのか詳しく説明します。
札幌中心部から中山峠山頂までの国道230号(石山通り)を中心として、真駒内公園の辺りから、恵庭市のほうへ抜ける国道453号と小樽市のほうに抜ける道道1号線から成り立っています。
藻岩山麓・定山渓ルートの地図
北海道大学自動車部が執筆していることも相まって、出発地点は北海道大学にしてみました。
北海道大学は、JR北海道札幌駅北口側に位置しており、近くをJRや地下鉄が走っているだけでなく、レンタカー会社も多数あることから学生も、気軽に遠出できる環境になっています。
北海道大学の西側には先にも、述べた石山通り(国道230号線)が走っていますので、何も迷うことなく、シーニックバイウェイの一つである定山渓ルートに、至ることができました。
しかし、定山渓ルートに入ったはいいですが、札幌市中心部はなかなかに交通量が多く、札幌市中心部を脱出するだけで、約30分はかかりました。
その間、特に目新しい光景があるわけでもなく、混んでいる道を眺めて
「ある意味でこれが環境と人々の暮らしの調和か」
と思うだけでした。
そうこうしているうちに、車通りも少なくなり真駒内を過ぎたあたりで、写真のような看板が出現し、徐々にシーニックバイウェイらしさが出始めてきました。
藻岩山麓・定山渓ルートの看板
窮屈な街並みや、列をなすテールランプなどは見る影を潜め、逆に背の高い山岳や、見晴らしの良い景色や、駐車場などがお出迎えしてくれました。紅葉の時期になると辺り一面色づいてきれいになるのではないかとか思いつつ、周りの景色を楽しみながら山頂を目指します。
途中の山々
途中の山々
だんだんと道幅も狭まり、ワインディングに富んだ、走りごたえのある道に変わっていきました。
その頃には、景色を楽しむというよりも、走りを楽しむことに夢中になってしまい、景色のことなど頭から完全に忘れ去られ、気が付いたら山頂に着いていました。
山頂でのんびり休憩した後、ただ同じ道を引き返しただけでは味気ないと思い、道道1号線を通って小樽のほうへ寄り道(バイウェイ‼)してみることにしました。
ルートとしては、山頂から定山渓温泉まで引き返し、そこから道道1号線に合流します。 道なりにしばらく進み、一番に出迎えてくれたのが、定山渓ダムによって出現した札幌湖でした。
山奥に急に現れた湖は、どこか浮世離れした空気を放っており、運転している最中ではありましたが、目を奪われました。
そのまま流れるようなハンドル捌きで、展望台駐車場に吸い込まれてしまいました。
定山渓ダム
そこで景色を十分に堪能し、英気を養った後運転を再開しました。
どんな道でも走り抜けられる気持ちで、走り始めたのですが、ダムもあるような山奥の峠道であることも相まって、右へ左へ曲がる曲がる、峠道でした。
仕舞いには、三連続ヘアピンもありとても走りがいのある楽しい道でした。
そして、山や湖を抜け、徐々に人影も増えたころには、小樽市内の国道5号線に合流し、定山渓ルートは終了しました。
全体的に橋や山頂からの眺望、湖といった景観に優れた道である印象を受けました。
また、ワインディングの多い楽しいドライビングコースや、道中の温泉や果樹園といった観光施設など、レクリエーションに富んだルートだと思います。
こうして改めて見てみると、基本理念に沿っていることが良くわかりました。
道道1号線の終わりにあるオタルナイ湖
以上でシーニックバイウェイの説明を、終わらせていただきます。
シーニックバイウェイについて、深く理解していただけたことだと思います。
また、今回は定山渓ルートしか紹介しませんでしたが、この記事を読んでほかのルートも気になった方は、自らの足で北海道シーニックバイウェイルート(全16ルート 令和元年現在)を探索することをお勧めします。
最後になりますが、この記事をきっかけにシーニックバイウェイへの関心が高まり、北海道各地への観光者が増える事を切に祈っております。
Citation
『北海道におけるシーニックバイウェイ制度導入モデル検討委員会報告書』
(http://www.mlit.go.jp/hkb/scenicbyway/report/report.htm 令和元年8月現在)
『第1部 シーニックバイウェイ制度導入の背景と思考の前提条件としての理念および基本方針』
(http://www.mlit.go.jp/hkb/scenicbyway/report/report01.pdf 令和元年8月現在)
『札幌シーニックバイウェイ藻岩山麓・定山渓ルート』
(http://www.scenicbyway.jp/routes/sapporo 令和元年8月現在)
『シーニックバイウェイ北海道 制度のご案内』
(https://www.hkd.mlit.go.jp/ky/kn/dou_kei/ud49g7000000n0ut-att/splaat000001lqs9.pdf 令和元年8月現在)
以上
執筆 北海道大学体育会自動車部