こんにちは!広島大学自動車部です。今回は、「自分の愛車の色を簡単に変えてみよう」と言うことで、塗装について記事にします。
皆さんは塗装について、どのようなイメージをお持ちでしょうか?「自分でやるのは難しいだろうなぁ」「業者さんにやってもらうようなことだ」とさまざまなイメージをお持ちでしょう。
塗装についての知識をお持ちの方には、このコラムはあまり意味のないものかもしれません。しかし、お金のない大学生が、出来るだけ安く、最低限のクオリティを求めて、塗装してみたものとして、お読み頂ければありがたいです。
まず塗装において、最も大事と言ってよい「下地作り」の作業についてお話しします。「下地作りをちゃんとする」ということは、「塗料の乗りをよくする」という効果があります。「塗料の乗りをよくする」と言うことは、「塗料とボディが密着して、塗料が剥がれにくくなる」事を指します。
今回の下地作りは、どのようにするかと言いますと、800番の耐水ペーパーでボディを磨きまくります!インターネットや、本で調べてみると、600番か800番で磨いていることが多かったので、今回は800番の耐水ペーパーを採用しました。ホームセンターに行ったときに、600番が売っていなかったというのが本当のところなのですが。なぜ耐水ペーパーかと言いますと、磨いた時に出る粉を、水で流すことができ、自分や周りが、粉で汚れることを防ぐ目的があります。
ここで、ドライペーパーで磨くことのメリットも、一応お話しておきます。ドライペーパーは、磨いた跡が分かりやすく、磨ける量も多いです。耐水ペーパーと、ドライペーパーのどちらがいいというものではなく、それぞれにメリットとデメリットがあり、どちらを選ぶかは、好みや状況に応じて変わります。
僕は最初、600番のペーパーが売っていなかったため、グラインダーの600番の歯を買い、ドライペーパーのようになると想像し、グラインダーで削っていきました。しかし、これは失敗でした。元の塗装を削りすぎて、塗装面に段差ができてしまいました。塗装の話の時に、詳しくお話する予定ですが、塗装を多少重ね塗りしたくらいでは、カバーしきれないくらい、大きな段差ができてしまいました。
磨き終わったら、一度洗車をします。洗車をするのは、塗装の時に粉などのゴミがあると、後々塗料が剥がれ落ちる原因となってしまうからです。洗車が終わったら、水を拭き取るなどして乾かします。筆者は水洗いで、スポンジで流し、ウエスで軽く拭き取り、自然乾燥させました。次の工程である、脱脂材での拭き取りがあるため、大体でいいだろうと思ったからです。
次に脱脂材を使い、ウエスでボディに付いている、見えない油を拭き取ります。この作業をする意味は、油が付着していることによって、後々塗料が剥がれ落ちてしまう原因になるからです。
これで、塗装前の下地作りが、どれだけ大切なものかは、分かっていただけましたか?
耐水ペーパーでボディを磨いている様子
塗料がかかってはいけない部分(ガラスやエンジン部やミラー)を、保護する作業です。マスキングテープ・ビニール・新聞やダンボールを使います。マスキングテープは、塗料に対応しているものが必要です。対応していないマスキングテープでは、塗料が侵入し、大変なことになってしまう可能性があるからです。保護する場所は、塗料がついて欲しくないところです。人によってポイントが違うでしょう。僕はそんなにこだわりが無く、また面倒なので最低限しかしませんでした。
通常の塗装工程では、マスキングの次は下地作業を行います。プライマー・サフェーサー(通称:プラサフ)という、ボディのキズを埋め、錆びを防止し、さらには塗料の密着を高める材料を吹き付けます。筆者は今回、敢えてその工程をしませんでした。
ネットの情報では、「プラサフは必要である」とする情報はたくさんありますが、なかには「プラサフを使用しなくても良い」という情報もありました。プラサフを使用せずに、素人が本気で塗装するといった情報は見つからなかったので、今回筆者が実践してみようと、お金の節約のためもあり、敢えてこの工程を飛ばしました。
マスキングは丁寧に
ダンボールや新聞紙も活用します
今回は「黒」の車を、「白」に変えます。車のサイズによりますが、原色の塗料が約3.5kg必要であるとの情報を得、念の為4kgほど購入しました。ベースの塗料が4kg、シンナーなども含めて、調合された塗料の重さは約7kgとなります。これは、車の全塗装には十分すぎるくらいにありますが、プラサフを吹かずに、黒を白に変えようとしていたため、下地が透けないように、この量を準備しました。これだけあれば、失敗してもまたペーパーで削り、塗り直すことができる量です。
調合されているもので4kgあれば、車1台を全塗装するのに十分と言われています。色によって必要な塗料の量は変わりますが、3kg強あれば塗れている方もいました。
塗料の配合方法ですが、説明書に書いてあるですが、一応紹介したいと思います。まず計量器を準備し、原色を一定量入れます。オススメは、きりがいい数字を選ぶことです。後の作業が楽になります。そして次に硬化剤を10%の量入れます。出来る限り正確な量を入れましょう。塗料の質に影響すると言われています。最後にシンナーを50%〜60%の量を入れます。
この量は、今回私が使用した塗料での配合比率です。実際に挑戦される方は、購入した塗料の説明書をよく確認して、調合してください。ラッカー系や水性、ウレタン系や塗装の対象によって、配合比率が変わる場合があります。十分注意してください。筆者は、百均の計量器を使い、ざっくりとした調合で塗装に挑みました。
計量器
エアコンプレッサーは、自動車部所有のものがあったため、重力式ガンを使用しました。口径は1.3mmの、6000円くらいで買えるものです。
なぜ重力式ガンを使用したかといいますと、重力式ガンは、カップの向きを変えながら吹くことができ、ちゃんと塗料をガンに送りながら360°あらゆる方向に吹けるので、角度に強いというメリットがあります。ただし、カップのサイズはあまり大きなものが無く、何度も継ぎ足しながら作業することになります。
ガンにはもうひとつ、吸い上げ式というものがあります。吸い上げ式は、カップの容量が大きく、継ぎ足しの回数が、少なくて済みます。さらに、カップの底面は平らで、地面に置きやすい。カップ部分だけ取り外しができるため、作業の途中でも色合わせがしやすい、などのメリットがあります。しかし吸い上げ式は、塗料の吐出量が重力式ガンに比べて少なく、本体も重いものが多い、というデメリットがあります。
どちらにもメリット・デメリットがありますが、プロは普通車サイズの全塗装には、重力式ガンを使用する事が多く、扱いやすさもさほど変わらとの事なので、今回は重力式ガンを選びました。
ここで、ガンの使い方について、覚えておいて欲しい3つの機能について、紹介します。ガンには、塗料の噴出量を調節するつまみ、スプレーの形状調節つまみ、空気量を調節するつまみ等、少なくとも3つのつまみが付いています。
塗料噴出量のつまみは、時計周りに閉めると吐出量が0になります。スプレーの形状調節つまみは、時計回りに閉めると、小さい丸型になり、反時計回りに緩めると、大きく楕円形になります。空気量調節つまみは、時計回りに閉めると少なくなり、反時計回りに回すと多くなります。ちなみにですが、ガンの先端にも回せる突起物があるのですが、それを回すことで、縦長の楕円形にするか、横長の楕円形にするかを調節できます。
これらを、そのときの状況や、自分の好みに合わせて調節し、スムーズな塗装作業が出来るようにします。つまみの位置はガンによって違いますので、作業前にどのつまみがどのような役割をするのか確認しましょう。筆者は、塗料のつまみを少し緩め、スプレーパターンも少し大きくしました。
塗料は調合したあと、棒でしっかりと混ぜ、ろ過用紙を使って、ガンのカップへ流しこみます。流し込む時は、ゆっくりとこぼれないように注意しましょう。筆者は少しだけこぼしてしまい、こぼれた塗料を塗装作業中の車に垂らしてしまう、という失敗をしましたので、みなさんは同じ失敗をしないようにしてください。
筆者は、少々の液垂れは気にしないのですが、本気でプロ並みの塗装を試みる方は、相当ヘコみますよ。本気で塗装をする場合は、ものすごく繊細な作業ですので、すべての工程で気をつけなければなりません。
さあついに、待ちに待った塗装作業です。まず最初は、「捨て吹き」と言う作業を行います。車全体に軽く塗料を吹き付け、塗料の浮きがないか等を確認します。脱脂の作業が出来ていないと、油分で塗料がはじかれてしまい、塗装面に塗料が乗らないということがあります。そのようなことに防ぐために、確認する作業です。
それでは本番の塗装作業に入ります。塗装のポイントは、塗装面とガンの間の距離を、20㎝くらいに保ちながら吹くことです。さらに、塗料が垂れないように、適度なスピードを保つことも重要です。プロの塗装職人は、色にもよりますが、2度塗りや3度塗りで、きれいに仕上げます。しかし素人の場合は、5度塗りくらいするつもりで、ムラをあまり気にせず、しっかり塗りましょう。丁寧にしすぎると、塗料がたれて、汚く、取り返しのつかない状態になってしまいます。
もうひとつ、ガンを20cmほど離す理由を説明します。ガンがあまりにも近いと、吹きつける塗料が十分に広がらず、垂れてしまう原因になります。逆にガンが離れ過ぎていると、一見塗料がまんべんなく付着し、きれいに塗ることが出来そうですが、実は塗料があまり付着せず、少量だけが乾燥しながら付着し、みかん肌のようになります。
みかん肌とは、ざらざらとした細かい凹凸が、塗装面にできることを意味します。みかん肌は、見た目ではわかりにくいですが、触ってみるとざらざらしていて、すぐにわかります。みかん肌があまりにも酷いと、最悪の場合、塗装のやり直しをしなければなりません。かくいう筆者も今回はみかん肌になり、またペーパーで磨き再塗装をすることになりました。
ベースの塗装がうまくできたら、最後にクリアを、塗料と同じ要領で吹きつけて終わりとなります。しかし筆者はここでも失敗してしまいました。その失敗した理由、ここで分析して行きます。
今回私は、プラサフを吹かずに黒から白に変えようと思いました。車の状態は、表面に塗装の剥げがあり、下地の劣化が見られる所がありました。劣化したところの塗装は、ベースカラーだけではなかなか劣化が隠せませんでした。そこで厚塗りをし、下地が見えなくするのに時間を要しました。
本来であれば、劣化した所は、ペーパーで念入りに削り、プラサフを吹いて傷を埋めるべきなのです。さらにプラサフは、塗料が乗りやすいので、きれいに仕上がります。そのため、車全体にプラサフを吹く方もいます。私の失敗の原因の一つは、プラサフを吹かなかった事です。
もう一つ原因として、「季節」があると考えられます。塗料が乾く時間は、気温によって大きく差があります。塗装で大切な要因の一つに、「表面の硬化時間」があります。表面の硬化時間は、早くても遅くてもダメで、作業に合わせて適当でなければなりません。塗料は重ね塗りを行います。一度吹きつけて、次に吹きつけるときに、あまり乾きすぎていると、塗料の密着が悪くなります。これもみかん肌の原因になります。
温度が高い夏は、塗料の乾きがそうとう早いため、日陰や屋内などの、温度が高くならない場所での塗装が必須です。乾燥を遅らせるために、シンナーの分量を増やす、という方法もあります。逆に、冬のあまりに寒すぎる日ですと、塗料が乾燥するのに、長い時間がかかり、重ね塗りの時に塗料が垂れる原因となります。
私が失敗してしまった最大の原因は、コンプレッサーから空気を送る「ホースの破損」によって、作業が続けられなくなった事です。重ね塗りの途中で塗装が終わってしまうという悲しい結果となってしまいました。これを読んでくださっている皆さんは、作業のための道具は前もって点検してください。
下地の黒が薄っすら見える仕上がり
今回このコラムを書くにあたり、塗装を終えることが出来なかったことが悔やまれます。私は失敗してしまいましたが、また塗装を削ってチャレンジできます。
皆さんも失敗を恐れず、チャレンジしてみてはいかがでしょうか。時間やお金が少しかかりますが、経験として面白いですよ。
私はまた塗装にチャレンジし、自分の愛車をきれいに塗ります。今回の私の経験が、皆様の反面教師となれれば幸いです。最後までお読みいただき、ありがとうございました。
<執筆:広島大学自動車部>