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新しい運転教習!準中型免許の教習に迫る

こんにちは、静岡大学自動車部です。夏が終わったと思っていると、あっという間に冬になり、夏休みに自動車運転免許を取得した方の中には自家用車などで練習してそろそろ運転に慣れてきたころですね。

ところで、皆さんは自動車免許を、“MT”で取りましたか?“AT”で取りましたか?実は、一番初めのいわゆる免なしのときから取得できる免許は、普通自動車だけではありません。それよりもう一段階大きな車両を運転できる準中型免許が、昨年新しく設けられました。しかし、まだ設けられて2年弱しか経っていないことや、普通車免許と比べて教習にかかる費用が割高であることなどから、その教習内容は一般にはあまり知られていません。

そこで、今年準中型免許を取得した私が、自らの体験から準中型自動車の教習では具体的にどんなことをするのか紹介していきたいと思います。

序. そもそも準中型自動車とは?

まず、教習の内容を紹介する前に、準中型自動車の定義を確認しましょう。準中型自動車とは「車両総重量6400kg以上7500kg未満」「最大積載量2000kg以上4500kg未満」「乗車定員10人以下」の3つの条件を全て満たした車両のことです。それらのうち1つでも基準を超えてしまうと、中型自動車あるいは大型自動車になってしまいます。国産車ではデュトロ(日野)、ダイナ/トヨエース(トヨタ)、エルフ(いすゞ)、キャンター(三菱)、タイタン(マツダ)、アトラス(日産)といった車種が該当します。

ただし、これらの車種でも、クレーンなどの特殊装備を装着している車両については、車両総重量が7500kgを超えてしまうため準中型免許では運転できない場合があります。自分が運転しようとしている車両が準中型免許に対応しているかどうかを確認するためには、先程の3つの条件と照らし合わせる必要があります。

静岡大学自動車部の使用する準中型トラック

静岡大学自動車部の使用する準中型トラック

1.貨物の最高地上高を体験する

まずは、自動車学校で習ったことの復習です。普通自動車(3輪の自動車と排気量660cc以下の自動車を除く)に荷物を積載する際の“高さ制限”は、何メートルまででしょうか。そうです、地上3.8mまでです。準中型自動車も高さ制限は、地上3.8mまでです。準中型自動車の第1段階教習では、トラックの荷台に骨組みを立て、地上3.8mまで積載した状態に見立てて、教習所の場内を走ります。画像は準中型車でも教習所のものと比べて全長の長いタイプのものですが、骨組みのイメージはこんな感じです。

最高地上高体験のイメージ

最高地上高体験のイメージ

ちなみに、教習所ではダブルキャブといって、普通自動車でいうところの4ドアのトラックが使われています。これは検定時に、不正を防ぐために第三者をリアシートに乗せて監視してもらうためです。中型車などの場合は2ドアですが、助手席の後ろに横向きに第三者用の席が設けられています。

さて、話を戻しますと、この教習では主に教官が運転し、生徒は頭上に架線のようなものがあるところで助手席の窓から顔を出して荷台の貨物がその下を通過する様子を観察します。一見地味な教習に見えますが、これにより最高地上高3.8mを視覚的に覚えることができます。何故このような教習が必要なのかというと、規定された最高地上高を無視した積載によって起こる事故を防ぐことが理由です。その高さを超えて積載した場合、トンネルや高架下などで天井に衝突してしまうことや、単純に横転してしまうことが考えられます。もしそのような事故が起こった場合、自動車学校の教官曰く違法な積載は指示した人にも責任が生じるので、準中型車を運転しない人でも貨物を取扱う場合は、準中型車の最高地上高3.8mはしっかり覚えておく必要があります。

2.踏切と坂道発進

準中型自動車の教習でも普通自動車同様に第一段階教習では、踏切・S字・クランク・坂道発進といった技能を練習します。その中で少し注意必要なのが、“踏切”と“坂道発進”です。注意するべきポイントは、「ギアの選択」です。

意外と知られていないことなのですが、準中型自動車とそれより大きな自動車は普通自動車と比べてパワーもトルクも大きいので基本発進時は2速ギアに入れて発進します。ただし、踏切のようなエンジンストールを起こしては困る場所や、坂道発進のような大きな力が必要なところでは1速ギアに入れて発進します。準中型自動車の運転に慣れてくれば、そのようなギアの選択は難しいことではないです。私の場合は中学・高校・大学とバス通学だったのでイメージがつきやすかったのですが、自動車学校に通うようになってから知った方は、少し意識して操作する必要がありますね。

3.車両にはたらく力を体験する

準中型自動車の第二段階教習で、一番初めに実車に乗るときに行うのが“急ブレーキ”と“急カーブ”の体験です。どちらも、教習所の場内で行います。“急ブレーキ”は、その名の通りスピードの乗ったところから思い切りブレーキペダルとクラッチペダルを踏み込んで停止します。最初に数本教官がお手本を見せるのを助手席から見た後、生徒も自分で操作を練習します。ある程度古い車両であれば、タイヤをロックさせないようにペダルの踏み具合を細かく調整する必要があります。最近の車両では、タイヤのロックを防ぐための装置であるABSが作動して、車体がガタガタ揺れるくらいまで踏み込む必要があります。ちなみに私が体験したときはABS付車両のほうでした。

一風変わった体験が、“急カーブ”です。まずは教習車の荷台に2tのおもりを載せて時速30km程で場内の急カーブを曲がり、車両がグリップ走行で曲がることのできる限界の速度を体感します。私の通った教習所では、2tのおもりを荷台に固定した専用車に乗りかえて体験を行いました。こちらも最初に教官がお手本を見せた後に、生徒も実際に操作します。次に、一度荷台を空にして、貨物に見立てたカゴなどを荷台の上に縦に並べます。この状態で先程と同じようにある程度の速度で急カーブを曲がり、どこに置いたカゴが一番初めに遠心力によって滑り始めるかを観察します。ここでは終始教官が運転して、生徒はトラックの後ろの窓から観察します。

急カーブ体験の再現

急カーブ体験の再現

この観察をもとに、重い荷物ほど荷台のどのあたりに置くと良いかを考えます。その際、トラックは荷台に荷物を積んでいないときは、前後バランスの悪い不安定な車両であるから注意して運転しなければならないという話も教官からいただきました。これらの体験を通して、トラックは前後左右のバランスが不安定になりやすいことを意識した荷物の積み方や、運転の仕方が重要であることが体感できます。

4.排気ブレーキ

準中型車と、それより大きな車両の多くには“排気ブレーキ”という減速装置がついています。第二段階の最初の路上教習では、この排気ブレーキの使い方を学びます。

排気ブレーキのスイッチ(黄色い丸印)

排気ブレーキのスイッチ(黄色い丸印)

そもそも排気ブレーキとは、意図的に排気を妨げることでエンジンの燃焼を抑える装置のことです。排気ブレーキのついた車両にはマフラーに可動式の弁がついていて、排気ブレーキのスイッチをONにするとその弁が閉じられます。すると、排気管内に排気ガスが溜まり、排気管内の圧力が高くなります。それによりエンジンの吸気側からも空気が入りにくくなり、その結果エンジンの燃焼を抑えることができます。このような仕組みからもわかる通り、排気ブレーキはあくまでも減速を補助するものであり、基本はエンジンブレーキとフットブレーキで減速または静止することになります。

では、なぜ排気ブレーキが必要なのでしょうか。結論から言うと、ディーゼルエンジンは他のレシプロエンジンより、エンジンブレーキが弱いためです。これには、エンジンの構造上の理由があります。レギュラーガソリンやハイオクなどのエンジンでは、燃料と空気の混合気をエンジン内部に噴射するため、吸気の量を調節するためのスロットルバルブがついています。

しかし、ディーゼルエンジンでは、液体燃料を直接エンジン内部に噴射するため、燃料そのものの噴射量を調節することになるので、吸気の量を調節する役割のスロットルバルブはついていません。これにより、エンジンブレーキを発生させる要因のうちの1つである吸気側の抵抗がディーゼルエンジンでは発生しにくいのです。裏を返せば、エンジンブレーキにおいてスロットルバルブの代わりになるものが排気ブレーキというわけですね。

排気ブレーキ作動インジケーター(黄色い丸印)

排気ブレーキ作動インジケーター(黄色い丸印)

さて、教習に話を戻しますと、教習自体は単純に長い下り坂のあるコースで排気ブレーキを使用して走るというものです。空荷の準中型トラックでは申し訳程度のエンジンブレーキが得られるくらいですが、教官曰く中型トラックくらいになると明らかにエンジンブレーキがかかる感覚が体感できるそうです。

また、学科教習の内容になりますが、排気ブレーキが存在すること自体は普通乗用車のドライバーも理解しておく必要があります。簡単に言うと、下り坂で自分の前を走るトラックなどが排気ブレーキを使用したときに追突しないためです。自分の運転しない車両でも、その特性を理解することは周囲の動きに配慮した運転につながります。

5.方向変換・縦列駐車

最近では“方向変換”と“縦列駐車”は第二段階教習で行われることもあります。私の場合は、第二段階教習で行いました。普通自動車と比べて車体の大きいイメージのある準中型車ですが、方向変換や縦列駐車の際の目印が普通自動車と変わるだけで、操作自体は普通自動車と何も変わりはありません。手順と目印を覚えれば充分です。

ただし、本当に落とし穴があるのは自動車学校を卒業した後です。実際の駐車場には、操作のための目印などほとんどありません。自分が後退しようとした先に、他の車両や歩行者がいる可能性もあります。そのため、特に後退の際はできるだけ車外から誘導する人をつけましょう。

まとめ. 準中型免許のメリットとデメリット

以上に述べた通り、準中型自動車の教習には車両の特性に合った運転をするための内容が盛り込まれています。しかし、この準中型免許という免許制度については現在でも賛否が分かれています。

メリットとしては、上記のような車両の特性を学ぶことができることの他、準中型免許で3t積載車(いわゆる積車)の多くが運転できることや、その免許が18歳から取得可能であることが挙げられています。一方、デメリットとしては、教習内容に対してその費用が割高であるように感じられることや、免許制度が変わる前までの免許証では普通自動車の免許で運転できた2t平積み車が改正後の免許証では普通免許で運転できなくなったことが挙げられます。

とはいえ、トラックを運転するようになると、今まで知らなかった新しい世界が開けるのも事実です。普通免許の方もこれから新しく免許を取得する方も、余裕がありましたら「準中型免許」を取得してみてはいかがでしょうか。

以上

執筆:静岡大学自動車部

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