タイトルを見て、「テンゴ」の意味が分からない方もいますよね。
まずは、その説明から始めます。
「テンゴ」とは、排気量が約1500ccのエンジン、またはそのエンジンを搭載している車の総称です。
1500ccはリットルに変換すると1.5Lですが、「いってんご」の一部である「てんご」がその名前の由来です。
そしてまた難しい言葉が出てきました。
「排気量」という言葉です。
車のことをある程度知っている方なら、幾度となく耳にする言葉ですが、いざ説明しろと言われると、難しいのではないでしょうか?
私もうまく伝えられる気がしませんので、引用させていただきつつ、説明します。
“「排気量」とは、内燃機関の燃焼行程に関わる容積の大きさを示す数値で、エンジンの性能指標のひとつである。単位は「cm³」であるが、慣習的に「L」を用いたり、日本国外では「立方インチ」を使用するケースもある。
排気量とはいうが、実際の排気の体積量ではなく行程容積とシリンダー(気筒)数との積であり、表現としては一般的ではないが「総気筒容量」のことである。燃焼室の容量は加味しない。ちなみに実際の排気の体積量は、当然のことながら行程容積とシリンダー数との積を上回る。”
以上Wikipedia「排気量」より加筆引用です。
簡単にまとめると、エンジン内部にある爆発室(ガソリンに点火して爆発させるところ)の体積が「排気量」とされている、ということです。
爆発室の体積は、エンジンのパワーなどのスペックにあたるものの、大半を決めていると言っても、過言ではありません。
爆発室が大きければ大きいほど、力強い爆発が起きる、つまりは力強いエンジンになるからです。
では、なぜ大きい排気量をもつエンジンではなく、1500ccという比較的小さなエンジンに、注目するのでしょうか?
私がホンダのFITという、1500ccエンジンの車に乗っている、ということがその理由の一つですが、世界的に1500ccの車が増えている、ということに気づいた事が、大きな理由です。
ひと昔前までは、2000ccを超えるような車が、世界的には多くありました。
しかし、二酸化炭素をはじめとする、温室効果ガスの排出量を少なくする動きが広まっていき、世界の自動車メーカーは、比較的その排出量が少ないとされる、排気量の小さな車をより多く、開発するようになりました。
そこで今回は、小排気量の車、特に私の車と同じ排気量である1500ccの車について、書いていきます。
1.ではテンゴについて、簡単な説明をしてきました。
この章では、実際に日本や世界で、1500ccの車がどの程度広まりつつあるのか、見ていきます。
まずは日本のテンゴです。
トヨタ 新型ヤリス
トヨタ アクア
ホンダ フィット
ホンダ シビック
ホンダ CR-Z
マツダ 2(写真は先先代DEMIO)
日産 マーチ NISMO S
三菱 コルト RALLIART Version R
スバル インプレッサワゴン
以上が、代表的な国産の1500ccの車で、コンパクトカーがほとんどを占めています。
いわゆる「エコカー」と言われる車ばかりですが、日産 マーチ NISMO Sのような、スポーツ性能を売りにしている車もあります。
私の所有している、ホンダ フィット(グレード : RS)も、スポーツ性能を売りにしています。
とはいえ、国産車に関しては、NA(後ほど説明します)の車がほとんどです。
スポーツ性能に長けるには、一般的にターボ(こちらも後ほど説明します)を装着しているエンジンの方が、良いのです。
しかし、国産車は燃費を重視するので、装着していない車が多いのです。
次に輸入車のテンゴ代表例です。
BMW MINI
BMW 1シリーズ
メルセデスベンツ C200
ボルボ V40
以上が代表的な輸入されている1500ccの車で、国産車がほとんどコンパクトカーなのに対し、こちらはファミリーカーが多くなっています。
さらにいえば、スポーツ性能というよりは、快適性に重きをおいた車が、ほとんどになっています。
また、先ほどからNAやターボといった言葉を使っていますが、ここに挙げた輸入車は全て、ターボを搭載した車です。
しかしながら、先ほど言ったようなスポーツ性能というよりは、快適性を重視している輸入車は、なぜターボを搭載しているのか?
次の章で説明したいと思います。
2.で説明をしていなかったので、NAとターボについてお話しさせてもらいます。
まずターボとは「過給機」のうちの一つなのですが、過給機とは一体何でしょうか?
これについても説明がとても難しいので、引用させていただきつつ説明します。
“過給機は内燃機関が吸い込む空気の圧力、すなわち密度を高くすることで酸素を多く取り込み、より高い燃焼エネルギーを得るための補助装置である。”
以上Wikipedia「過給機」より加筆引用です。
簡単にすると、エンジンが取り込む空気の圧力を、何らかの方法で高めることで、その空気の密度が高まり、酸素を取り込む量が増え、より燃えやすくなるということです。
また、過給機には先ほどから出てきている「ターボ」と「スーパーチャージャー」の大きく分けて、2種類があります。
その違いは、過給の方法にあります。
何度もすみませんが、引用しつつ説明させていただきます。
“ターボチャージャーは主に、排気ガスの流れを受けて回転するタービンと、タービンの回転力を伝達するシャフト、伝達されたタービンの回転力で空気を取り込んで圧縮するコンプレッサー、そして、タービンとコンプレッサーの周辺の流れを制御するハウジングで構成される。
通常は廃棄される排気ガスの運動エネルギーを回収して駆動されるため効率が高い。”
以上Wikipedia「ターボチャージャー」より加筆引用です。
簡単にまとめると、エンジンで燃焼を終えた空気、すなわち排気ガスの圧力を、回転力に変えることで利用して過給する、という装置です。
“スーパーチャージャーは、エンジンの出力軸(クランクシャフト)から、ベルトなどを介して取り出した動力や電動モーターによって圧縮機(コンプレッサー)を駆動し、空気を圧縮してエンジンに供給する補機である。”
以上Wikipedia「スーパーチャージャー」より加筆引用です。
簡単にまとめると、エンジンからタイヤへと、動力を伝える軸の回転を利用し、過給するという機械です。
またNAという言葉をですが、NAとは「Natural Aspiration」の略で、和訳すると「自然吸気」という言葉になります。
つまり、過給機を装着していないエンジン、と言う事です。
2つの種類の過給機の違いを簡単にまとめます。
・ターボ
エンジンそのものではなく、排気ガスの力を利用して過給する。
・スーパーチャージャー
エンジンそのものの力を利用して過給する。
話が大きく逸れましたが、ターボは排気ガスの力を利用するため、エンジンの回転数を上げれば上げるほど、過給の力が強くなるため、小さな排気量のエンジンでも「息切れ」のような症状が起きにくいです。
よって、1500ccエンジンには、スーパーチャージャーではなく、ターボが装着されることが多いのです。
それどころか、私が調べた範囲内では、1500ccに限らず、現在市販されている国産の普通車の中で、スーパーチャージャーを装着している車種は、日産 ノートとマツダ 3のみです。
世界に視野を広げて見てみると、アメリカ合衆国ではまだ多くの車種が、スーパーチャージャーを装着していますが、他の国々では、ほとんど装着されなくなっています。
ここまで過給機に視点を変えて、話を進めてきましたが、本題に戻りたいと思います。
それは、1500ccのNAとターボの違いです。
国産車にはNA、輸入車にはターボが多いと先述しましたが、1500ccのNAとターボの違いに、その理由があります。
国産車のNAに関しては、1500ccに限らず、1000cc〜1500ccのエンジンが、2010年頃から主流になっています。
日本は、国土が狭いことから、直線道路は少なく、高速での高出力よりは、街中などでの低速の加速力が、重視される傾向にあります。
ターボを搭載して過給すると、その加速力が小さくなってしまうのです。
つまり、過給機をつけない方が、ニーズに合っているため、NAがほとんどです。
対して輸入車のターボは、先ほど記載した車種のほとんどは、もともと1500ccよりも大きな排気量のエンジンを搭載していました。
しかしながら、2000年代後半になって、世界的に「ダウンサイジング」という手法が、主流になるようになりました。
それは、排気量を小さくして(すなわちエンジンの「サイズ」を「ダウン」させて)、ターボで過給することにより、出力はほぼ変わらないまま、燃費、特に巡航している時の燃費を良くする、という手法です。
そもそもは、出力を上げるためだけに使われていたターボですが、この10数年は、燃費向上のために使われることが、ほとんどです。
まとめると、日本と海外では、車に対して求めるものが少し異なっていることが、NAとターボの違いを生んでいる、といえます。
ここまで「テンゴ」、すなわち1500ccのエンジンと、そのエンジンを積んだ車についてお話ししてきました。
日本と海外の違い、NAとターボの違いについて、特に細かくお話ししてきました。
そして、実は今ここ日本でも、先ほど説明した「ダウンサイジング」の時代が来ています。
トヨタが新型ヤリスを発表しましたが、ヤリスはまさに、ダウンサイジングを活用した車です。
それ以前からホンダが、1500ccターボエンジンを搭載した車種を販売していますが、「世界のトヨタ」が、その開発を本格的に始めたとあれば、日本の各自動車メーカーが、後に続くことは必至です。
私が所有しているホンダ フィットが、1500ccエンジンを搭載していることから興味を持って、この文章を書き始めましたが、1500ccエンジンに関する様々な予備知識について調べる中で、その多様性や、将来性について知ることができました。
世界が、地球温暖化という大きな壁に立ち向かう中で生まれた「ダウンサイジング」の手法は、これから成熟していく事でしょう。
エコだけでなく、運転の楽しさをも両立させた車が、これからも開発・販売されることを期待しつつ、このコラムを終わります。
執筆:広島大学体育会自動車部 松井 詠朗
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