黒くて丸いタイヤの不思議
皆様、こんにちは。ついに名大自動車部の投稿も3本目を迎えました。
これからも読んでいて興味を持っていただけるような面白い記事を書けるように部員一同頑張っていきます。
黒くて丸いタイヤーの秘密とは…!?
さて、突然ですが皆さんタイヤ好きですか?
僕はタイヤが大好きです。僕は、タイヤは車において一番重要な部品であると思います。
考えてみてください。タイヤが無い車は宙に浮きます。
いや、浮けないので正確にはブレーキローターから着地するのですが(大惨事)、いざ車が浮くと大変です。
岐阜大さんの「定常円旋回 ~なぜ車は曲がるのか~」https://www.hai-sya.com/column/steady_circular_turning_univ005.html にあるようにコーナリングフォースの発生源はタイヤの進行方向との捩れで発生するタイヤの変形による反力なのですから車は曲がりません。
もしかすると、タイヤの変形による走行抵抗は発生しないので燃費はよくなるかもしれないですけど、ハンドルを切っても曲がらないのでそれは自動車と呼びません。
タイヤが路面と接地している面積は、ハガキ一枚分とかこぶしほど(ミシュランWebサイト談)とか言いますけど、1トン以上ある車両が一輪あたりこんな小さな面積で接しています。
いまいち実感が湧かないという方は、今パソコンの前でこぶしと足の裏を合わせてみてください。
大体足裏の面積はこぶし2個よりも少し大きい程度でしょうか?
例えば60kgの体重であれば、その重さをこぶし2個分程度で支えているのですから、それと比較すると1トン以上ある重さをこぶし4つほどの面積で支えているタイヤがいかに大きな荷重を支えているかが分かるかと思います。
さて、皆さんは、タイヤは何を基準に買われていますか?
自動車部員のようなスポーツ走行中心のユーザーであればグリップ性能中心でしょうが、他の一般ユーザーの皆さんはどうでしょうか?
もちろん価格は重要な性能ではありますが、タイヤの性能はそれだけではありません。
街中を走っている車のタイヤを見てみると、走り方や車種などに対してピッタリと合ったタイヤを履いている人は少ない気がします。
実際、車にあまり詳しくない人がタイヤを買おうと思っても多種多様な銘柄がある中からベストなタイヤを選択することは難しいのではないでしょうか?
そこで、今回はタイヤの性能を各種性能試験のデータを基に見分ける方法についてお伝えしたいと思います。
まずは、今付いているタイヤの情報を知るためにタイヤの側面(サイドウォール)を見てみましょう。タイヤの銘柄やサイズ、製造年などが書かれていることは既にご存知かもしれません。(図1)
(図1)セリアル記号はタイヤの製造年週を
あらわす。このタイヤの場合16年06週に
製造されたこと表している。
(図2)一般的にタイヤのカタログにはメーカー内での
対磨耗性能やウエット性能 などの比較がされている
しかし、それ以外にもサイドウォールには重要な情報が書かれています。また、タイヤのカタログを見てみるといろいろな指標が書いてあります。(図2)
【JATMAラベリング】
2010年1月以降に国内で販売される夏タイヤのほとんどには日本自動車タイヤ協会(JATMA)の定めたラベルが表示されています。
このラベルには転がり抵抗とウエットグリップ性能の等級が書かれています。
転がり抵抗は、”AAA” ”AA” ”A” ”B” ”C” の5等級で、
ウエットグリップは、”a” ”b” ”c” ”d” の4等級で評価されています。
例えば、転がり抵抗”A”のタイヤより”AA”のタイヤのほうが転がり抵抗が少ないため省燃費性能が高く、ウエットグリップが”c”のタイヤより”a”のタイヤのほうが濡れた路面でも安心であるということが分かります。
転がり抵抗性能が”A”以上かつウエットグリップが”d”以上のものは”低燃費タイヤ”に該当します。
最近CMなどでもよく宣伝されているので、ご存知の方も多いかもしれません。
なお、現在国内で販売されているタイヤにおいてラベルの表示がされていないタイヤがありますが、これらはどちらかの性能がラベリングの基準となる性能よりも下回っています。
いわゆるエコタイヤの中でも、転がり抵抗とウエットグリップの両立は難しいのか、転がり抵抗”AAA”とウエットグリップ”a”を両立したタイヤは各タイヤメーカーのエコタイヤブランドのフラッグシップモデルとして位置づけられています。
また、スポーツタイヤにおいてもラベルが表示されているモデルも存在しています。
モータースポーツにおいてもJATMAラベリングが一定の基準を満たしているタイヤしか使用できないカテゴリも存在しています。
JATMAラベリングは各タイヤメーカーのウェブサイトやカタログ、タイヤ自体に貼られているラベルなどで確認することが出来ます。
また、販売店においても紹介されていることが多いかと思います。
国内向けに販売されて いるタイヤを比較購入する際にはもっとも一般的な指標であると言えます。
【UTQGについて】
タイヤによってはサイドウォールに“TREADWEAR 220 TRACTION AA TEMPERATURE A”などと書かれているものがあります。これらの表記はUTQG(Uniform Tire Quality Grade)と呼ばれ、アメリカ国内で表示が義務付けられているタイヤの耐磨耗性能、ウエットブレーキング性能、耐熱性能の3つに関する指標です。
一般的にこのように表記されている。なお画像タイヤは国内専用サイズのため数値の記載は無かった。
TREADWEARは耐磨耗性能を現していて、TREADWEAR 100の基準タイヤに対してどの程度の距離を走ることが出来るかということを表しています。
例えば、TREADWEAR 400のタイヤはTREADWEAR 200のタイヤと比較して単純に二倍の距離を走れると言えます。
タイヤの磨耗やグリップ性能は複雑な要素が影響するため、必ずしもタイヤの実際の性能とは一致しないという見解もありますが、タイヤの耐磨耗性能についてある程度判断することが出来ると思われます。
例えば、某国内タイヤメーカーのスポーツタイヤがモデルチェンジ時に”ライフ向上”と謳っていましたが、実際にTREADWEARの値も上昇していました。
また、あるメーカーのスポーツタイヤではストリート用とモータースポーツ用の二種類を用意しているのですが、モータースポーツ用のほうが値は低くなっています。
TRACTIONはアスファルトおよびコンクリート路面におけるウエット時のブレーキング性能(減速度)を格付けしている指標です。
“AA” “A” “B” “C” の4等級があり、“AA” のタイヤは非常に高い減速度でブレーキングできるタイヤであることが分かります。
なお、この指標はあくまでもウエット時のブレーキングに関する指標であり、耐アクアプレーニング性能や加速性能、コーナリング性能とは関係がありません。
TEMPERATUREはタイヤの耐熱性能を“A” “B” “C” の三段階で表しています。
この耐熱性能と言うのは、高速走行時に発生する熱がタイヤを破損させないかという性能を表しています。
“A”のタイヤは、115mph(185km/h)で30分間走行するテストに合格しているタイヤです。
クロカン用などの特殊なタイヤ以外ほとんどのタイヤは“A”の等級であり、まず“C”に分類されるタイヤは存在しないように思います。
また“B”のタイヤであっても100mphのテストには合格しており、日本国内で使用するには十分な性能を有していると考えられます。
【EUのタイヤラベル】
EUで販売されるタイヤに2012年から義務付けられたタイヤラベリングがあります。
サイドウォールには表記されていませんが、海外製タイヤではタイヤに貼ってあるラベルに書いてあったり、国内製タイヤであってもサイズや銘柄によってはEU向けのサイトには記載されていたりします。
EUタイヤラベルには転がり抵抗とウエットグリップ、走行時に発生する騒音の3つの項目があります。
転がり抵抗は“A”から“G”までの7段階の評価がされています。
“A”のタイヤは“G”のタイヤよりも燃料消費量を7.5%削減できるとされています。
ウエットグリップに関する試験方法は、JATMAラベリングと同じであるのですが、レイティングが異なっています。
対応は下の表-1のようになっています。
表-1 ウエットグリップ相対表
また、EUタイヤラベリングにおいて特徴的なのは走行時にタイヤから発生する騒音に関する指標がある点です。
騒音はデシベルで表記されています。
例えば、静粛性が気になる場合にはより外部に対する騒音が少ないタイヤを選べば車内も静かであるといったことが考えられます。
あくまでも、EU市場向けの指標であるので各タイヤメーカーのEU向けWebサイト等で確認する必要があり大変ではありますが、この騒音に関する指標は価値のある指標ではないでしょうか。
丸印と四角印の”E4”マークがある。
【“E4”の印】
タイヤのサイドウォールを見てみると丸の中や四角に“E3”や“E4”などと書いてあるかもしれません。
Eの刻印は、その製品がEUの指令に従っていることを表しています。
そして後ろの数字は国番号を表しています。
これらのEの刻印の入ったタイヤはETRTO規格タイヤと呼ばれています。
通常のETRTO規格(STD規格)では若干JATMA規格と空気圧が違う程度ですが、タイヤに“EXTRA LOAD”や“REINFORCED”の文字が書かれていると話が変わってきます。
この場合にはエクストラロード(XL)規格のタイヤですので通常よりも空気圧を高く設定する必要があります。
タイヤをインチアップした際などにXL規格のタイヤに付け替える場合が多いかと思いますが、その場合には注意が必要です。
また、四角のeマークに加えて数字の後ろに“-S”のマークの付いたタイヤは2003年以降のEUでの騒音基準を満たしていることを表しています。
e4に続く(-4)オレンジの下線部分
S2WR2とは、タイヤ単体騒音規制国際基準を
満たしている
“S2WR2”の刻印のあるタイヤは新しい騒音の国際基準(R117-02)を満たしているタイヤです。
現在、日本でもこの騒音基準を導入されようとしています。
新型車には2018年から適用されるものですが、既存の車両に対しての適用は未定となっています。
しかしながら、既に一部メーカーからは新基準対応を謳った商品も発売されており、今後国内向けに生産されるタイヤにおいても新基準対応を謳った新商品が発売されていくことでしょう。
【まとめ】
今回の記事では一般乗用車向け夏タイヤを中心にまとめましたが、冬タイヤの場合には各社Webサイト上に試験結果を詳細に載せている場合が多いです。
例えば制動距離の試験は比較しやすいかと思います。
ただし、同じメーカーでも試験条件がまちまちな場合があるので、”○×社のタイヤよりも×△社のタイヤのほうが短い距離で停止できるから良いタイヤだ”とは必ずしもいえないので注意が必要です。
過酷な条件下でも性能確保が要求されるタイヤー
タイヤー側面の記号には意味がある
最近は、ネットショッピングでタイヤを購入する方も増えていますので、なかなか購入前サイドウォールを見るのは難しいかもしれないですが、統一された条件下で計測された試験データですので購入前に比較してみるということは、タイヤの性能を語る上で重要なことなのではないかと思います。
ただし、タイヤの性能は複雑な要素が絡み合っている部分がありますので、これらの指標だけでタイヤを決めるのでなく、実際に使用している人の意見を聞いてみたり、調べてみたりするといったことが必要です。
(執筆:名古屋大学体育会自動車部)
パーツやメタル資源として再利用し国内外に販売!
車解体の資格を持つ廃車.comの工場と直取引だから高く買取れる。
すでに払った31,600円の自動車税も返ってくる。
(4月に廃車/1,600cc普通自動車)