あおり運転について
最近、あおり運転の罰則の強化また、それに伴う数々の検挙が話題になっています。
このコラムでは、そのあおり運転について語ります。
また、あおり運転にも様々な種類がありますが、それぞれについて論じていきます。
十分な車間距離
あおり運転は「車間距離不保持」という犯罪に該当します。これは文字通り、余裕がある車間距離を保持しない運転者を、取り締まる罰則です。これにより、結果追突事故が起こるのを防ぐねらいがあります。
そして、2018年1月16日付で警察庁は、全国の警察に対しあおり運転の積極的な摘発を実施しました。さらに車間距離不保持だけでなく、危険運転致死傷や暴行の容疑も、考える取り締まりを指示しました。これが、厳罰化と言われています。
厳罰化の背景には、あおり運転が原因による事故がニュースで大きく報道されるようになり、それに伴いあおり運転の厳罰化を求める声が、高まってきているからです。特に、厳罰化推進派の話には、2017年7月に東名高速道路で起きた、あおり運転による死亡事故が引き合いに出されることが多いです。
この事件では、男が家族連れの車を、高速専用自動車国道に強制的に停車させ、それが直接的な原因となり、家族がトラックに追突され亡くなりました。この事故において、事故と車間距離不保持とは直接の関係がありません。
しかし、この事件の容疑者が日常的にあおり運転を行っていたことから、メディアは「あおり運転」のワードを報道において多用し、その結果あおり運転に対する危機感が高まり、今回の厳罰化につながったとみられます。
「あおり運転」という名目の犯罪を、取り締まる法律はありません。なのでここでは、あおり運転を「ほかの車に対する威嚇行為」として話を進めます。
聞き取りの結果、一般的にあおり運転として認識されていたものには、以下のものが挙げられます。
・車間距離を異常に詰める
・クラクションを鳴らす
・後ろからのパッシング
・ブロッキング(先行車が故意に車線変更を繰り返し、追い越しを妨げる行為)
・急ブレーキ
・ハイビームを消さない
・無理な追い越し、無理な割り込み
などです。
「遅い速度で走行する」という意見もありましたが、高速道路を除いては犯罪にはなりえず、危険性やストレスも悪質なものでないと考え、除外しました。
さて、今まであおり運転の悪質性を説明しましたが、著者は、「あおり運転はどうしても必要な時は、安全なものに限り使ってよい」と考えています。例えば上記の例は、図のように分類しました。
あおり運転の分類
見てわかるとおり、安全でないものがほとんどです。そもそも、安全ならあおり運転などとは、呼ばれません。
あおり運転は、ほかの運転者、その同乗者に対して非常に強いストレスや、大きい迷惑を与えるものです。しかし、比較的安全なものについては、どうしてもというときに限り、意思表示の手段になりえます。
例えば、
・信号が青になっても先行車が発進しない。
・先行車が、法定速度よりはるかに遅く、追い越し車線を走行し、かつ自身が急いでいるので、走行車線へ退いてほしい時。
ですが、どのような理由があれ、あおり運転をしないに、越したことはありません。
法律で取り締まられるだけあって、あおり運転は非常に危険が伴います。上記の「危険である」煽り運転の危険性、その影響を例に挙げます。
これは想像に難くないと思います。まずは、先行車が何らかの理由で、急ブレーキを踏んだ時、対処しきれず追突する可能性があります。
なお、あおり運転の追突事故は、理由はどうあれ10:0で追突側の責任となります。
そして、渋滞の原因にもなります。先行者が減速した際、車間距離を十分に取っていれば、アクセルから足を離し、エンジンブレーキのみで対処できます。
しかし、距離を詰めすぎるとエンジンブレーキでは足りず、フットブレーキを使います。すると、ブレーキランプが点灯し、後続車も安全の為にフットブレーキを踏み減速、次の後続車も減速、次の後続車も減速、というように後続車に次々連鎖してゆき、それが渋滞の原因になります。
以上の要因が合わさり、車間距離を詰めてあおることは、あおり運転の中でも特に悪質なものであると結論付けます。
対向車線であれ、後続車であれ、暗所においてドライバーへの強い光の照射は、非常に危険です。ヒトの瞳孔は、暗い場所から明るい場所に合わせるよりも、明るい場所から暗い場所に合わせるほうが、時間がかかります。
詰まるところこれは、パッシングのような短い時間の光の照射でも、予想外に長くドライバーの視界を奪いかねないことを表しています。
視力の回復にかかる時間
これは滅多に見かけることはありませんが、説明します。まずプロのドライバーでも危険な行為を、一般人がして安全な道理はありません。また、円滑な交通の大きな妨げにもなります。これについては、暴行罪の適用も現実的です。絶対にやめましょう。
言わずもがなです。教科書通りの車間距離を維持している人は、けっして多くはありません。これは場合によっては、車間距離を詰めるよりも渋滞を引き起こしやすく、また事故の危険性も高くなります。急ブレーキは緊急の場合を除き、危険行為にしかなりえません。
これは、ハイビームからロービームへの切り替え忘れが、原因というのが多いと思います。ドライバーの視界を奪い続け、またそれだけでなく、歩行者の視界にも影響を与えかねないです。その点を考慮すると、故意でやることは、パッシングよりも悪質なものであると言えます。
追い越しや割り込みは、安全を確認してから行わなくてはなりません。中央線をまたいでの追い越し禁止区間での追い越し、対向車との距離が十分ではない追い越し、などは危険です。譲っていないのに、無理やりに割り込んでくるなども危険です。
ブレーキを踏まなくていい所で、踏むことの影響は前述のとおりですが、この場合相手に、ブレーキを踏む必要性を与え踏ませてしまっています。
以上で、あおり運転の論理的な危険性がわかっていただけたなら幸いです。頭に血が上ったときでも、冷静にわが身を振り返りましょう。
最後に道を譲ってもあおってくる、異常に威圧的な行動をとってくる、などの特に悪質なあおり運転に遭遇したときの対処法の例を挙げます。
あおり返すことは、目先の怒りにまかせてみずからも、危険行為をはたらくということです。裁判や和解等に持ち込む際に、あおり運転を仕返しした証拠が残っていると、後ろ暗い弁舌を強いられることになります。
ドライブレコーダーは、強力な証拠になるだけでなく、事故現場で口論になるのを抑止する使いかたもあります。これは対処法というより予防法ですが、有効なのでここに挙げます。
高速道路
このコラムは以上となります。
あおり運転は、他のドライバーに迷惑をかけ、また自身も危険にさらすことがわかっていただけたと思います。常に冷静を保ち、あおり運転は絶対にやめましょう。
【執筆:岐阜大学自動車部】