マレーシア訪問記(その2)
さて、マレーシア訪問記その2でございます。
日本の廃車から発生した中古パーツ流通の研修のためにクアラルンプールに社員2人を連れてきました筆者ですが、当の本人も初めての訪問なのです。そこで現地に詳しい同業者の自動車リサイクル業の方々とグループにての訪問となりました。マレーシアにおける、自動車中古部品市場は元々シンガポールの華人達が日本から輸入していた経路と経緯に近いものがあるようで、国土の狭くて規制がかかり始めたシンガポールから、マレーシアに移動して来たのが経緯のようです。現在の国際市場ではベスト3に入ると思われる程の自動車中古部品の巨大マーケットです。廃車から発生する、自動車中古部品の仕入れ先は、日本のみならずオアセアニア等の国々にも進出しているようです。
まずはKL市内の、Kepong Area と言う地域にある市場を見学に行きました。市内道中で走っている車を見ると日本メーカーの、トヨタ・日産、ホンダ、マツダ、スズキの他に韓国メーカーや欧州メーカーも走っていますが、圧倒的に多いのは、プロトン(Proton)と、プロドゥア(Perodua)と言うメーカーです。実際にプロドゥアの、プロドゥア・マイヴィ (Perodua Myvi)は、近年で一番売れている車種との事でした。
マイヴィ (Perodua Myvi)
街を行く、マイヴィ
マイヴィ (左側の車両)
鋭い閲覧ユーザーは、上記の画像を見てお気づきだと思いますが… プロドゥア・マイヴィ (Perodua Myvi)とは、日本でのダイハツ・ブーン、トヨタ・パッソと、ほぼ同じ車なのです。
プロドゥア (Perodua)と言う、マレーシアの自動車メーカーは、1993年にマレーシア2番目の国産車メーカーとしてマレーシア国内の出資者及び、ダイハツ工業・ダイハツマレーシア・三井物産も出資して設立されたのですが、2001年には車台製造とエンジン製造を統括する、㈱プロドゥア・オート・コーポレーションが設立されて事実上製造メーカーはダイハツの子会社となっているのです。ブーンをベースとしたマイヴィの他にも、ミラをベースとした、ビバや、ダイハツ・ブーンルミナス/トヨタ・パッソセッテをベースにした、アルザ 等を販売しています。
プロドゥア・ビバ (Perodua Viva)
排気量は、660cc・850cc・1000cc
つまり、ダイハツ社の姉妹車兄弟車と言う事になります。
では、マレーシア1番目の国産車メーカーと言うと、プロトン(Proton)です。プロトン社は国民自動車会社として国策で設立された自動車メーカーで、1983年に設立され設立当時は日本の三菱自動車工業からの技術資本を受け入れていたので、良く見るとミラージュやランサーと言った三菱の車の姉妹車兄弟車と言った感じです。1990年代後半からは自主開発車両が増えたので、三菱の面影は消えて行くことになったそうです。
プロトン・ワジャ (Proton Waja)
プロトン・ウィラ (Proton Wira)
日本での、ミラージュ/ランサー
もちろん、日本メーカーの車も走っていますが、日本国内では見かけない顔をした車台が多いようです。
トヨタ自動車の世界戦略の一環で、北米と日本での販売が無い車種で、東南アジアや中国、アフリカ、中近東地域で製造や販売される、海外専用モデルだからです。その骨格やエンジンミッション等は日本でも走っている同じプラットフォームをしている事も多いです。その代表がVIOS(ヴィオス)で、プラットフォームは、ヴィッツを利用しています。またトヨタIMVプロジェクトとは、Innovative International Multi-purpose Vehicle(イノベーティブ・インターナショナル・マルチパーパス・ビークル)多目的革新車輌とでも訳すのでしょうか、日本以外の、タイや、インドネシア、南アフリカ等を中心に生産され、アジアを中心として欧州、アフリカ、中近東、中南米、オセアニアにまで輸出されています。Hilux Vigo(ハイラックス・ヴィーゴ)は、北米と日本では販売されていない事から、日本国内では見かけない顔となっているのも納得して頂けると思います。
筆者の好みだと、Hilux Vigoは欲しいと思うのですが…
TOYOTAのIMVシリーズ(Hilux)
トヨタ・ヴィオス(Vios)
ちなみに、タクシー等の営業車ナンバーは、白地に黒い文字で英数字が記載され、一般車は黒字に白い文字で英数字が書かれており、乗用車の車検制度が無いのですが日本での自動車税に相当する“道路税(Road Tax)”と自動車保険への加入が義務つけられています。トラック等の貨物車には車検制度があるとの事です。道路税は、自動車の排気量によって金額が相違しており、排気量が多いエンジンの大きいものほど、その道路税金額は高く設定されています。
道路税は郵便局等で支払えるのですが、ナンバーの交付制度は無く、街角でナンバー屋さん!?なるお店があるので、そこで登録された英数字の番号を伝えて制作してもらうとの事です。必要な登録番号が一致して文字の大きさの規定を満たしていればナンバープレートの形状は自由なので、上記のトヨタ・VIOSの様に、トランクリアガーニュシユ部分いっぱいにナンバーを作成すればカッコイイ感じでもOKなのです。
そんなマレーシアの中古車市場は、日本のようにフロントガラスにプライスボードが掲げて無いので、アテンド頂いた現地スタッフさんに確認したところ、“自動車は財産”との感覚が強い風土なので、中古車価格は高額で日本市場の2~3倍の金額で推移しているとの事。TPP(環太平洋戦略的経済連携協定:Trans-Pacific Partnership)が締結されていない現在(2014年8月)ではマレーシアにおける自動車輸入税が必要で、かつ販売時には日本の消費税にあたる販売税が必要で、輸入車には排気量区分等により65~200%もの納税が必要とされます。さらに新車も中古車をマレーシアに輸入するには、輸入許可証(AP)が必要です。一部の長期査証を取得した場合の自家用車輸入における税金免除の恩恵を除けば、マレーシアの“ブミプトラ政策(bumiputera)”の一環である、自動車産業振興政策の“国家自動車政策(National Automotive Policy:NAP)”に、マレーシアでの自動車製造メーカーである国民車、プロトン社とプロドア社は販売税が低額に設定されていることから、保護されていると言って良いでしょう。今後はASEAN加盟国からの圧力や、AFTA(ASEAN自由貿易地域:ASEAN Free Trade Area)の締結で、東南アジアでの地域経済協力が活発になれば、自国メーカー保護政策も続けられないでしょうね… との回答でした。
KL市内、街角の自動車整備工場
ドアが無い!!
クアラルンプール市内及び郊外の街を走っていると割と新しい年式の、乗用車やトラック貨物が走行している一方で、エンジン等はオリジナルから載替え済と思われるようなトラックや、アジアらしい?運転席も助手席もドアが無い、準オープン仕様のトラックが走ってますし、1980年代に製造されたと思われる世代の乗用車も多数走行しています。
車検制度等の法的な要因もあるのでしょうが、車を大事にする気持ちが大きいのではないでしょうか。しかし、ある一定の工業生産力や経済力に到達すると急激な進歩をみせるのが、モータリゼーションであり、今後のASEAN地域の発展と共に走行している車輌も変化してゆくのでしょう。
そんな進展の中で、整備を進めなくてはならないのが、交通機関や道路整備だと考えるのは、筆者が東南アジアに訪問した国々で毎回感じる事なのですが・・・
どこに行っても、“すんげぇ… 渋滞”です。
KL市内や近郊も、他の東南アジアの国々同様に、凄まじい渋滞に巻き込まれる事で有名で、すぐソコにある目的地まで数時間を要する事もあり、研修日程に余裕を持たせてなければ大変な事態になると思います。
これから向かう進路方向… 渋滞!
またまた、渋滞…
タンクローリーも新旧のスカニアが走ってます
1980年代前半に製造されたプロトン
特に、朝夕の通勤時にはKL市内を中心に渋滞が激しいようです。LRT Rapid KLと呼ばれる高架鉄道やモノレールがKL市内には整備されていますが、市内に隈なく整備されている訳ではないので、どうしてもバスやタクシーに自家用車での移動が欠かせません。さらに交通マナーが悪いのか、交通事故も多発していました。数日の滞在で何件もの事故を目撃しましたし、故障して道路の真ん中で立ち往生している車も多数目撃しました。しかし国民性なのか、そんなリタイヤして止まってしまった車で渋滞してもクラクションを鳴らさないので、静かな渋滞です。中国だと渋滞の中だとクラクションの音でうるさくて仕方が無いですけれどね。
何故か、自動車専用道路を歩く人
レッカー作業された故障車
そんな渋滞を横目に通り抜けながら、ケポン地区(Kepong Area)での見学研修がスタート致しました。
次回は、いよいよ日本から輸出されて、マレーシアに輸入された、廃車から発生した自動車中古部品の行方を確認する件に関して報告致します。
パーツやメタル資源として再利用し国内外に販売!
車解体の資格を持つ廃車.comの工場と直取引だから高く買取れる。
すでに払った31,600円の自動車税も返ってくる。
(4月に廃車/1,600cc普通自動車)