自動車用バッテリーは、電気を貯めておくことができる装置です。
このバッテリーはエンジン始動の際には「セルモーター」に電気を供給します。
そのほかにも自動車には、ランプ類、カーナビ、エアコンなどの電子機器にも電気を供給しています。
このバッテリーに電気を供給するのが「オルタネーター」という発電機です。
この装置がなければ、自動車のバッテリーは100km~200km走ると貯めておいた電気が底をつき、点火プラグにスパークを飛ばせなくなるので、エンジンが動き続ける事が出来ずに、それ以上走ることができなくなってしまいます。
バッテリーには、様々なサイズがある
蓄電池には、ニッケル水素(Ni-MH)電池やリチウムイオン電池、また鉛蓄電池などがあります。
今回は自動車のバッテリーとして多く使用されている「鉛蓄電池を用いたバッテリー」について取り上げることにします。
主な部品としては、
・二酸化鉛(PbO2)の陽極板
・海綿状鉛(Pb)の陰極板
そしてこれら上記の電極板は、
・電解液の希硫酸(H2S04+H2O)
に満たされています。
これらが化学反応を起こすことで電力を生み出しています。
陽極板と陰極板の1つの対が1つの部屋に入っています。
この部屋を「セル」といいます。
鉛バッテリーは1セル当たり役2Vの電圧を発生します。
全体的に装置が大きいと、化学反応が長く行えるので、バッテリーの寿命は長い傾向にあります。
バッテリーが例えばライトに接続され電気が流れると、陽極板の二酸化鉛(PbO2)、陰極板の海綿状鉛(Pb)は希硫酸に反応して硫酸鉛に変化します。
電解液である硫酸は、化学反応後は水となります。
硫酸と水は密度が異なるので電解液の比重を検査することで、バッテリーの代替の寿命を知ることができます。
オルタネーターのよって充電を行うと硫酸鉛に変化していた陽極板、陰極板はそれぞれ二酸化鉛、海綿状鉛に戻ります。
また水も硫酸に戻り放電する前の状態に戻ります。
充電が十分に進み完全に充電されると、電解液中の水は電気分解され酸素と水素になり放出されます。
これが「液減り」の原因です。
バッテリー液が少ない状態で外部電源を使って充電した際に、硫化水素が発生する場合があるので注意。
放電と充電の化学反応の化学式は
PbO2(二酸化鉛)+2H2SO4(硫酸)+Pb(鉛) = 2PbSO4(硫酸鉛)+2H2O(水)
となります。
このようにバッテリーというのは、 “電気エネルギー”を“化学エネルギー”に、“変換し蓄えておく装置”なのです。
自動車用の鉛バッテリーは基本的に6つのセルが直列に接続されていて、12Vの電圧を発生します。
鉛バッテリー以外の種類のバッテリーも12Vに設定されていますが、それは鉛バッテリーの放電電圧に合わせているためです。
バッテリーは6つのセルに分かれている
バッテリーにはいろんな種類があり、国産車、外車といった違いや車自体の大きさによっても選ぶバッテリーが変わってきます。
さまざまなバッテリーの分類は国産車では「JIS(日本工業標準調査会)規格」によってきめられていています。たとえば「40B19L」という形式です。
(アイドリングストップの車のバッテリーは異なる表記をします。)
バッテリーの上部に、規格数値が記載してある
例の40B19Lという型式の40という数字は性能ランクを表します。
電気容量と始動性能の総合ランクを表しています。
この数値が大きいほど、より良いバッテリーであると言えます。
ちなみに容量の表示は△△Ahと表記されています。
50Ahと記されていたら10A(アンペア)の電流を5h(時間)流すことができるということです。
(10A×5h=50Ah)
4 0 B 1 9 L
・40 ⇒ 性能ランク
・B ⇒ 短側面のサイズ
・19 ⇒ 長側面の長さ
・L ⇒ プラス端子の向き
例の40B19Lという型式のBというアルファベットは短側面のサイズを表しています。
幅と箱の高さをアルファベットで表記しています。
JIS規格の幅×高さの区分記号
例の40B19Lという型式の19という数字は長側面(横幅)の長さを表しています。
単位はcmです。
44B19Rなので、長側面は19cm
例の40B19Lという型式のLはプラス端子の位置を表しています。
バッテリーのプラス端子の側短側面から見た状態で、バッテリーのプラス端子が左にあると“L”右にあると“R”と表記されます。
ちなみにマイナス端子は、プラス端子に比べて小さくなっています。
記号がない場合がありますがそれは、マイナス端子とプラス端子が縦に並んでいることを示しています。
プラス端子が短側面の左で“L”
プラス端子が短側面の右で“R”
“L”端子拡大図
“R”端子拡大図
最近のバッテリーの型式には、最後にMFという文字がついていることが多いです。
(40B19L-MF)これはメンテナンスフリーということを表していています。
メンテナンスフリーのバッテリーは、バッテリー液を足す必要がなく自然放電が減少しています。
日本車のバッテリー選びは上記の型式を参考に行います。
基本的にはもともと取り付けられていたバッテリー型式と同じものを選択します。
ただしサイズが同じであれば性能ランクができるだけ大きいものを選んだほうがいいことがあります。
性能ランクがより高いものに交換すると、エンジンの始動性能が向上したり、ヘッドライトがより鮮明になったり、オーディオ機器の音質が向上します。
液減りがあることからわかるようにバッテリーには寿命があり、基本的には2~3年と言われています。
しかし使用状況や使用環境によって大きく変化します。
たまにしか運転しない車や、消費電力の大きな電装部品などを搭載している車は、定期的なバッテリーの点検が必要です。
アクセルを戻すとライトが暗くなったり、パワーウィンドウの開閉が鈍くなったりするとバッテリーの寿命が近いというサインのひとつです。
バッテリーの寿命、という概念とは異なる「バッテリー上がり」という症状があります。
これは電気の使用量がバッテリーの容量を超え、それ以上放電することができないという症状です。
長期間運転しなかった結果、自然放電させすぎたり、エンジンが停止した状態で長時間ライトを点灯させ続けたりしたときに多くみられます。
外出先などでライトの消し忘れやオーディオのつけっぱなしなどでバッテリーが上がっても、他の車から電気を分けてもらいバッテリーを充電することでエンジンをかけることができます。
このことを「ジャンピングスタート」といいます。
ジャンピングスタートを行うためには、「ブースターケーブル」と呼ばれる2本(赤が+、黒が-)のケーブルを必要とします。
緊急時に備え、社内に常備しておくと良いでしょう。
ほかの車から電力を分けてもらう際は、同じ電圧のバッテリーから分けてもらいましょう。
乗用車は12Vなので12Vのバッテリーを搭載した車から分けてもらう必要があります。
トラックなどは24Vバッテリーなので注意が必要です。
ブースターケーブル。クリップで端子をつかむ
ジャンピングスタートにはきちんとした順序があります。
この順序を間違えると電装品が故障したり、感電したりする恐れがあるので正しい順序で行うようにしましょう。
ブースターケーブルを使用する前にバッテリー上がりの車、救護車を近くに停めボンネットを開けましょう。
その後バッテリーの位置を確認します。
バッテリー上がりの車のエンジンが停止し救護車のエンジンは回した状態でブースターケーブルの接続を行います。
バッテリー同士の接続順序は以下の通りです。
(1)赤いケーブルをバッテリー上がりの車のプラス端子を接続。
(2)(1)のケーブルを救護車のプラス端子に接続。
(3)黒いケーブルを救護車のマイナス端子に接続。
(4)(3)のケーブルをバッテリー上がりの車のボディーアースに接続。
接続の(4)の際に火花が飛ぶことがあるので注意しましょう。
接続が終わったら、救護車のアクセルを少し踏んで数分間、回転を高く保ちます。
その後バッテリー上がりの車のエンジンをかけます。バッテリー上がりの車のエンジンが始動したら、ケーブルを取り外します。
ケーブルの取り外し順序は(4)→(3)→(2)→(1)というように接続と逆の順序で行います。
その後しばらくは走行することができますが、エンジンを停止させるとまたバッテリーが上がったりする場合はバッテリーの寿命が考えられます。
またオルタネーターが不調の場合も充電することができないので、すぐにバッテリーが上がったり走行中に停止したりすることがあります。
上記のバッテリー上がりを防ぐためには、日ごろからバッテリーを点検しておく必要があります。
ではどのように点検すればいいのでしょうか。
「バッテリーの点検項目」
・バッテリー液が規定量入っているか。
・もし液が減っているようであれば、各セルの穴から補充用の蒸留水を上限と下限の中間まで入れる。
水道水は不純物が入っているので使用しない。
・バッテリー液の比重が1.26から1.28の間にあるか。
バッテリー上部のキャップを外し、比重計を使って測定します。
・電圧計を用いて電圧を測定するのが望ましい。
バッテリー液の比重が異常であったり、エンジン停止時のバッテリー電圧が10V以下であったりする場合には、充電または新品への交換が必要です。
ちなみに、バッテリーの定格電圧は12Vですが、実際に計測すると13.8Vあります。
これは、オルタネーターから充電する際には、12Vから14V程度まであるからです。
バッテリーを長持ちさせるためには定期的に点検し、またバッテリー上がりの原因となるライトのつけっぱなしや長期間走らないことなどを極力避けることが重要です。
まとめると
(1)上記のバッテリー点検を一か月に一回は行う。
(2)定期的にディーラー、ガソリンスタンドなどで詳しい点検を行う。
(3)長期間走らない場合は、エンジンを定期的に始動させる。2か月以上車に乗らないとわかっている場合には自然放電を避けるためにマイナス端子を外しておくこともできます。(ただし、マイナス端子を外すと時計、オーディオがリセットされます。)
(4)エンジンが停止している状態で、ライト、エアコン、オーディオなどの電力を多く必要とする電装品を使用しない。
(5)
エンジンを始動するときは大量の電力を必要とするので、極力エアコンやオーディオは切っておく。
(6)消費電力の多い電装品を後付けした場合は、バッテリー容量を大きくする。
などがあげられます。
今回はバッテリーの役割、仕組み、そして緊急時の対応、そしてバッテリーの延命法をご紹介させていただきました。
皆様のカーライフに少しでも役に立てばと思います。
バッテリーは消耗品です。
しかし車の乗り方、利用の仕方を考え直せば寿命を延ばすことができます。
バッテリーの寿命を延ばすことができればお財布にも優しいですし、なにより地球にも優しいのです。
バッテリーのことを頭の隅で考えながら運転できればいいですね。
(執筆:名古屋大学体育会自動車部)