こんにちは、静岡大学自動車部です。
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さて、今回はエアロパーツについてお話します。
しかし一言でエアロパーツと言っても様々な用途で開発や使用され、さらに形状や付ける部位も多種多様なものがあります。
そこで、エアロパーツとは何のことなのかを説明していきましょう。
大きなリアウイング装着のシビックType-R
[目次]
◇エアロパーツってなに?
・レース用エアロパーツとは?
・ドレスアップ用エアロパーツとは?
◇エアロパーツを、なぜつける?
・THEスポーツカー、迫力のリアウイング!!
・カナードでフロントをしっかり接地
◇まとめ
まずエアロパーツとは、「Aero Parts」と英語でも書くように空気力学的に考案された自動車部品を指します。
大きく分けると、レーシングカーに使用されるパーツと一般車のドレスアップ用に使用されるパーツがあります。
主に走行中に生じる空気抵抗の減少や、運転を快適にしていくことが目的で装着されます。
またパーツによっては、最初から付いているものの形状を変えたものや新しく装着するパーツがあります。
例としては車のバンパーの形状を変えた「フロントスポイラー」や、ドアミラーの形状を変えた「エアロミラー」、後付けパーツとして「GTウイング」や「カナード」など様々な種類のエアロパーツがあります。
また空気抵抗だけではなくエンジンやブレーキの冷却目的や車体の汚れを防止する機能もあり、自分の使用用途に合わせて着脱できるところはエアロパーツの良さでもあります。
エアロパーツ装着前のNA系ロードスター
エアロパーツ装着後のNA系ロードスター
・レース用エアロパーツとは?
TVなどでレーシングカーを見たことがある人も少なくないと思いますが、公道を走っている乗用車とは外見から違います。
パっと見目につくのは、派手にステッカーでデザインされ大きくワイド化されたボディ、後ろに突き出した巨大GTウイングですよね。
ものすごいスピードでコースを駆け抜けるスポーツカーは、観客を魅了し続けてきました。
各車両もエンジンや足回り、エアロパーツに至るまで研究に研究を重ねて作り上げられています。
特にエアロパーツはスポーツ走行になくてはならないキーパーツであり、どんな曲線も走行中の空気の流れなどが計算し尽くされているためレーシングカーに特化したパーツであるといえます。
・ドレスアップ用エアロパーツとは?
エアロパーツには上記でお話ししたレース用に開発されたものの他に、乗用車のドレスアップ用に開発されたエアロパーツがあります。
機能面に特化したというよりは見た目重視に作製されたものが多いようです。
ディーラーでも純正オプションとしてエアロパーツがあるように、愛車を自分好みに開発しお気に入りの一台にしたいという需要があるようですね。
私も自分の車はかっこよくしたいと思い、後付けのパーツを使用しております。
簡単なもので形状の加工が必要ないポン付け対応のものから、本格的なパーツを自作する方も少なくありません。
また中古車の検索のキーワードにフルエアロ装着などの項目があることもあります。
フルエアロとはフロントスポイラー、サイドスカート、リアスポイラーの三点を指し、フルエアロ装着車は純正とはガラッと印象が変わります。
ドレスアップ用のエアロパーツの多くは、レース用のように空気抵抗など物理的な要素から設計するというよりは見た目重視で設計されていて、走行においての機能面ではそれほど大きく変わるものは少ないといいます。
しかし中には実際のレースから情報や結果をフィードバックしてエアロパーツを製作しているメーカーも少なくありません。
そういったドレスアップ用のパーツには目を引くようなデザインのものも多いがしっかり走行時にかかる外力等の計算がされていないものをむやみに使用すると、燃費が下がったり思わぬ事故につながる可能性があるため注意が必要なのも特徴の一つです。
まずはレース用に開発されるエアロパーツについて見ていきましょう。
レーシングカーは、サーキットのコースを300km/h近いスピードで疾走しています。
高速で走る自動車には空気抵抗や車を持ち上げようとする揚力、さらにカーブするときには通常よりも多くの横方向の慣性力(横G)などの自然の力が様々な方向からかかり、自動車の進行を妨害してきます。
ここで各チームはどのように自分たちのレーシングカーを速く走らせようかと考えますが、ネックになるのが車体を地面に押さえつける力(ダウンフォース)を如何にかけるかということです。
車はタイヤを回して進んでいるためタイヤと地面の摩擦力が大きければ大きいほど速度は上がります。
ここで高校物理で学習した摩擦力の公式を思い出してみましょう。
摩擦力 f (動摩擦力 f' )= 摩擦係数 μ(動摩擦係数 μ' ) × 垂直抗力 N
摩擦係数はタイヤによって決まっており、モータースポーツにおいて国際レースなどの大きい大会では規定により使用できるタイヤの種類は決まっています。
よって各チームが研究開発に力を入れていくのが垂直抗力の強さになります。
さらに垂直抗力とは、物体に働く重力に等しいと高校生の時習いましたね。
そこから垂直抗力を大きくするには車重を重くするか上から押さえつける力を増やすことになります。
しかしレースやジムカーナにおいて車重の重さは速さに直結する要因であり、各メーカーも車両の軽量化に力を入れていることから、ダウンフォースのために車重を簡単に増やすことは望ましくはありません。
そこで車体を上から押さえつける力が必要になってくるわけです。
また各参加レースによっても車体へ考慮する内容も変わってくるのです。
まずモータースポーツの最高峰、F1世界選手権に参戦するフォーミュラカーは、車輪とドライバーがむき出しになっていて車高はものすごく低いレーシングカーです。
モータースポーツにおいて一番速い速度でレースが展開するF1ですが、走行する車両の車重は600kgほどで時速300kmを越える速度で爆走しています。
発生する速度に比べて車重が軽すぎるため、どうしてもダウンフォースが必要不可欠となります。
フォーミュラカーの特徴としては、車体全体が1から開発されて細部に至るまで空力、車重に配慮した設計になっているということです。
私たちの知っている乗用車とは、見た目がかけ離れすぎているということが第一の印象だと思います。
さらに高速域でのカーブに入ると、自分の車重の5倍を超えるほどの遠心力が車体にかかるためダウンフォースを利用しなければ曲がれないほどなのです。
よく言われるのはフォーミュラカーの強大なダウンフォースがあれば、トンネルの中で天井に張り付いての走行もできてしまうということです。
このように高速で走るフォーミュラカーにはダウンフォースはなくてはならない存在となっています。
エアロパーツを装着するGTカー
次にSUPER GTに参戦するGTカーについて見ていきましょう。
GTカーは市販化されている各ワークスチームがレーシングカーに仕上げているものが多く「市販車の改造車」とも呼ばれています。
SUPER GTにおけるルールの特徴として、車重やホイールベースなどの車体に関する内容や、エンジンやトランスミッションといった動力系の車両性能に大きく関わる性能は各クラスで共通化されており、車両本体としての性能にあまり差が出ないように設定されています。
しかしこのような規定がある中でエアロパーツにおいては決まりが少なく車両設計にとても自由度があるパーツとなっています。
だからこそ各チームはエアロパーツの設計に力を注ぎ、ダウンフォースを利用したコーナリングの速度や車両の最高速の向上を目指しています。
GTカーにおいてもエアロパーツの存在がレースの勝敗に大きく影響していると言えます。
ダウンフォースを利用したコーナリング
しかし、エアロパーツは走行性能を向上させるだけではありません。
やはり私たちが公道で車を乗る上で、レーシングカーのようなエアロパーツは実用的ではありません。
そこで世の中には、市販車を自分好みにカスタマイズするためのエアロパーツも発売されています。
中でも多いのがフルエアロキットです。
お値段は車種によってそれぞれですが安いものでもフルエアロ単体だけで8~10万円程度、そこに塗装代や取り付け工賃がプラスされて実際にはなかなかな額になります。
一思いに手が出せるような価格ではありませんが、そこを変えると見た目もガラッと変わるため、車好きにとってはあこがれのパーツでもあります。
またフルエアロ以外にも小柄なパーツもたくさんあります。
その中でも今回は二つのエアロパーツを紹介します。
・THEスポーツカー、迫力のリアウイング!!
まず紹介するのが、マイカーの印象をスポーティーに変身させる「リアウイング」です。
ウイングといえばGTカーなどのスポーツカーにもド派手な翼が生えていましたね。
車体後方に装着するリアウイング、リアスポイラーと何が違うのかと感じる方もいると思いますが、リアスポイラーは基本的には車体を流れてきた風を車体に沿って流すために取り付けているため車体とスポイラーの間に空間がありません。
比べてリアウイングは車体に翼を支えるウイングステーが付くことによって車体とウイングの間に空間を作り、その空間に風を通すことによって走行安定性を高めています。
私たち大学生もリアウイングが大好きなので、翼を授かった車を街でも時々見かけます。
ウイング自体も車体によって種類も様々でクーペ車やオープンカーには二本のステーで翼を固定するGTウイングや3D形状のウイングが、ハッチバックやラリーカーでもよく見られるのがルーフに沿って突き出したウイングなどがあります。
パーツの多くも純正と交換するものや、少しの穴開けで取り付け可能なものが多くエアロパーツとしてもお手軽なのではないでしょうか。
リアウイングを装着したインテグラtypeR
GTウイング装着したロードスター
・カナードでフロントをしっかり接地!
ここからは紹介したいパーツとしてもう一つ、「カナード」というエアロパーツについて紹介します。
まずカナードとは何なのか。
カナードとは先尾翼の意味で、戦闘機などの先端に付いている小さな翼を指し、飛行する際に揚力の一部を担ったり、主翼への負担を抑えたりと様々な利点があります。
そんなカナードを自動車に応用したらどうでしょう。
こちらがフロントバンパーに装着したときのカナードの外見です。
自作カナードを装着するMR-S
いかにもカナードが空気抵抗を受け、先ほどから何度も出てきたダウンフォースがバンバン効きそうな形状をしています。
しかしカナードのダウンフォースの生まれる仕組みは想像できるものとは少し違います。
まず自動車の走行時、前方から来た空気がカナードに衝突します。
このとき、カナード自体が車体のフロント部を地面に押し付ける力はごくわずかなのです。
その力よりも大きな力をカナードは作り出します。
空気がカナードに衝突した後カナードに沿って空気は車体の側面に移動します。
このときカナードから滑り出した空気は渦を巻きながら側面を進行していきます。
そうすることでタイヤハウス内にたまった空気を引きずり出してくれます。
タイヤハウス内にたまった空気はそこから車体の下に移動し、車体を持ち上げようとする力に変わるため、タイヤハウス内の空気を外に出すことによってタイヤを地面に接地させるダウンフォースとなるのです。
この原理はSUPER GTなどのレースカーにも多く取り入れられているため効果が大きいことが分かります。また走行時の抵抗になりにくいということもありストリート仕様のお車にも是非装着したい一品ですね。
カナードを装着したGTカー
矢印部分が、カナード
今までエアロパーツは、単なるドレスアップパーツであると思っていましたが空力や抵抗など緻密に計算されたパーツはスポーツ走行には欠かせない力になっていることが分かりました。
車いじりの1項目に追加してみてはいかがですか?
(パーツひとつで燃費が下がることもあります。そこは自己責任でお願いしますね。)
(執筆:静岡大学自動車部)