あなたの愛車は大丈夫? ホイールアライメントってなに?
みなさん、こんにちは。名古屋大学自動車部です。
今回のテーマは「ホイールアライメント」です。
以前の車の足回りに関するコラムでもホイールアライメントは触れました。
今回は、これに焦点を当てより詳しくご紹介したいと思います。
ちなみに、みなさんはホイールアライメントという言葉はご存知ですか。
ホイールと名の付くところからなんとなくタイヤと関わる部分のお話だとお考えになると思います。
実はその通りで、アライメントは英語でのalignment(意味:一列にすること、一直線)という単語が語源であるように、車のタイヤの整列具合のことを言います。
アライメント調整というと、4輪のホイールの車体に対して装着されている角度を調整することを言います。
ホイールアライメントは大丈夫?
ここでみなさんは、アライメント調整は自分の車にも必要なのかと思われるでしょう。
ホイールなんて車体に対してまっすぐについているものじゃないの?
と、お考えの方もいらっしゃるかもしれません。
実はホイールの位置は、段差などの衝撃や足回りの経年劣化などにより、少しずつ変化していきます。
他にも、足回り部品を変更し、車高が変化した車、あるいは縁石等にホイールを当ててしまった車などは、大抵の場合アライメントがずれています。
取り付けの精度により、新車においても多少のズレが見られる場合もあります。
ではアライメントがずれていると、どのような症状が現れるのでしょうか?
代表的な症状としましては、
・タイヤの片減り
・ハンドルがとられやすい
・車が左右どちらかに流れてしまう
・ハンドルのセンターがずれている
などの症状があらわれます。
普段走っていて、なんとなく自分の思い通りに走らないなと違和感があった際は、アライメントがずれているかもしれません。
違和感がなかった方でも、自分の車のタイヤが片減りしていないかを確認してみましょう。
アライメントがずれた車に乗っていると、タイヤの寿命を早めてしまったり、ひどい場合はその車に慣れてしまい変な運転のくせがついてしまったりすることもあります。
そうなる前にアライメント調整を行うことをお勧めします。
片減りしたタイヤ
ここではホイールアライメントの要素、つまり車体に対してホイールの取り付け角度にどのようなものがあるのかをご紹介します。
(a)トー角
トー角は車体を上から見た場合の、左右輪の広がり具合のことを言います。
・進行方向に対して真っ直ぐな状態を“トーゼロ”
“トーゼロ”な状態
・進行方向に対して内側に狭まっている状態を“トーイン”
“トーイン”な状態
・進行方向に対して外側に広がっている状態を“トーアウト”
“トーアウト”な状態
と、言います。
主にmm(ミリメートル)で表します。
通常の車では0mm(トーゼロ)から1~2mmのトーインになっています。
図-1:トー角
フロントのトー角は主にハンドリング特性に関わっています。
フロントをトーイン状態にすると、ハンドリングの初期応答が少しダルになる一方、直進安定性が向上します。
逆にトーアウト状態にすると、ハンドリングの初期応答は良くなりますが、直進安定性は損なわれます。
リヤのトー角も基本的にはフロントと同じ性質です。
主に安定性に関わり、こちらもトーインだと安定方向に、トーアウトだと安定性が失われます。
(良い言い方をすれば回頭性(ハンドリングの初期応答)が上がるとも言えますが…)
あまりリヤのトーをトーアウトにすることはありません。
つまりフロント・リヤともに、トーイン状態だと車の安定性が増します。
だからこそ、通常の車は“トーゼロ”から“トーイン”になっているのです。
しかし、トー角がついている状態というのは、車が直進する方向に対し常にタイヤが角度をつけている状態ですので、抵抗は増えてしまうために、過度に角度をつけてしまうと、
・タイヤの片減り(トーインだとタイヤの外側が減りやすい、トーアウトはその逆)
・燃費の低下
の原因となりますので、適度な角度設定が必要です。
また、左右に角度差があると、タイヤの進もうとする方向の角度差を相殺できないため、ハンドルをまっすぐにしている状態にも拘わらず車が左右に流れてしまう症状が出ます。
(b)キャスター角
キャスター角は、車輪を真横から見た際のサスペンションの傾きの角度のことです。
直進安定性に作用し、ハンドルを切った際にハンドルが直進状態に戻ろうとする力にも作用します。
図-2:キャスター角
キャスター角が大きいと直進性が増す一方で、曲がりにくくなり、最小回転半径が大きくなる傾向になります。
小さい場合はその逆の効果があります。
もし左右に角度差があると、角度の小さい方の車輪がつんのめる形となり、車が流されたり、ブレーキング時にハンドルがとられやすくなったりします。
そのような症状が出た場合は、キャスター角のズレを疑ってみましょう。
(c)キャンバー角
キャンバー角は車を正面から見たときのタイヤの傾きの角度のことです。
直進性やハンドリングに作用するのはもちろん、コーナリング中のタイヤの接地性にも影響します。
図-3:キャンバー角
車を正面から見て、下開きになっている状態、いわゆるハの字になっている状態を“ネガティブキャンバー”、その逆を“ポジティブキャンバー”と言います。
車はコーナリング時、車体外側に荷重がかかり、傾こうとします。
その際にネガティブキャンバーであると、アウト側のタイヤが踏ん張る形となり接地面積を大きくすることができます。
もちろんその代わりに、直進状態ではタイヤの内側しか地面に接しないので、タイヤの内側が片減りしやすくなります。
できるかぎりコーナリングスピードを上げたいレーシングカーでは、コーナリング中のタイヤ接地面積を大きくすることを優先し、ネガティブキャンバーに設定されています。
逆にポジティブキャンバーに関しては、コーナリング中もアウト側のタイヤが踏ん張らず、直進状態の接地面積も減少するため、メリットはあまりないと言えます。
(d)キングピン角
キングピン角は、タイヤを正面から見たときのホイール取り付け軸の傾きの角度のことです。
キャンバー角と似ているように感じられますが、キャンバー角は地面に対してのホイールの角度を意味し、キングピン角はタイヤのセンターを通る垂直線とキングピン軸との角度を意味します。
基本的に部品を交換するなどしない限り調整することができない部分のため、あまり詳しくは説明しませんが、キックバックの強さや、ハンドルをきったときの元に戻ろうとする力の強さに影響します。
図-4:キングピン角
以上のように、ホイールの取り付け角度には様々な種類があります。
実際には、これらの角度による影響は複合的に作用しており、例えば「タイヤの内側が片減りしている」という症状があったとしても、その原因はネガティブキャンバーである、あるいはトーアウトであるとは単純には判断できません。
両方に異常がある場合も十分あり得ます。
では、どのようにアライメントを測定、調整するのでしょうか?
次でご紹介しましょう。
ここではアライメントの測定、調整方法をご紹介します。
(a)プロに任せる方法
まずは一番簡単な方法、プロに任せる方法。
簡単かつ確実な方法ですね。
アライメントテスターを持っているショップやカー用品店に持ち込んでみましょう。
プロが私たちの希望を聞き、好みのセッティングに調整してくれます。
アライメントについてよくわからない方にもわかりやすく説明してくれます。
調整は1回1~3万円程度。
値段は少し高いですが、費用対効果はあると私は考えます。
図-5:ショップでの調整結果
筆者はアライメントテスター屋さんに持ち込んだ経験あります。
図-5は、筆者の車のアライメント測定、調整結果です。
ロアアーム交換をしたため、調整前の数値は変ですが気にしないでください(笑)
私はサーキットを走るため、キャンバーを少し大きめにつけるなど、細やかなセッティングが可能です。
ちなみに、車検場の近くなどには、サイドスリップ調整をしてくれる業者があります。
これはサイドスリップが車検の検査対象となっているからです。
しかしサイドスリップ調整というのはフロントのトー角のみの調整で、ハンドルがまっすぐな状態でまっすぐ走るかどうかという点でしか調整しません。
極端な例ですが、リヤタイヤが左側に流れるような状態だった場合、フロントタイヤでその流れを打ち消すようなトー調整をし、結果的にまっすぐ走るようになるといった調整しかできません。
2~5000円とアライメント測定と比べて格安ではありますが、別物であるとお考え下さい。
(b)自分でやる方法
ちょっと値段が高いな…とお考えのあなたには、こんな方法をご紹介。
DIYです。
キャンバー角、トー角は自分で測ることができます。
残念ながら本格的なテスターほどの精度は期待できませんが、ある程度の測定は可能です。
(トーはほとんどの車で調整可能ですが、キャンバーは車種によっては調整できない場合があります)
(この作業はあくまで自己責任でお願いします)
(その1)
作業で、準備するもの。
カッコ内は何を測るためかを示しています。
・タコ糸(キャンバー)
・50円玉(キャンバー)
・テープ(キャンバー)
・定規(キャンバー)
・黒色でないマーキング用のペン(トー)
・メジャー(トー)
・空き缶(トー)
・ジャッキ(調整用)
・ウマ(調整用)
・レンチ(調整用)(車種によりレンチのサイズは異なります)
これだけで簡易アライメントテスターが完成します。
(その2)
次に車を水平な場所に移動させます。
ハンドルが、きっちりまっすぐな状態になっているかを確認してください。
(その3)
先にキャンバーを調整します。
これは、普通の車は足回りの構造上、キャンバーを調整するとトー角も大きく変化してしまうためです。
(キャンバーを調整できない車の場合は手順7までスキップしてください)
まず50円玉をタコ糸にくくりつけ、測定したいホイールの真ん中に糸が垂れ下がるようにフェンダーにテープで貼り付けてください。
(その4)
ホイールの最上部と最下部に定規を当て、糸との距離をそれぞれ測り、上下の距離の差(Aとします)を求めます。
キャンバーの測定方法
タコ糸で上下の差異を測定
(その5)
ホイールのインチ数からホイールの直径(Bとします)を計算し、
からキャンバー角θを計算します。
(その6)
車をジャッキアップし、目的のキャンバー角になるまで調整ボルトを調整してください。
車種により調整方法が異なるため、具体的な調整方法は省略。
図-6:キャンバー調整ボルト
(トヨタ:アルテッツァ)
(その7)
最後にトーを調整します。
今回は測定精度の問題から正確なトー角を求めることが難しいため、可能な限りトーゼロに近づける方法をご紹介します。
トー調整によってキャンバーも多少変化はしますが、その影響はわずかですので無視してもかまいません。
無視しないとキリがないです。
タイヤの直前と直後に空き缶を置き、その空き缶の高さと同じ位置にペンで印をつけます。
反対側のタイヤにも同じことをします。
トーの測定方法
空き缶を利用して測定する
(その8)
任意で全てのタイヤ同じ縦溝1本を決め、左右間のタイヤの距離を、印をつけた高さにおけるその縦溝同士の距離を前後メジャーで測ることで求めます。
(その9)
タイヤの前後で距離の差がなくなるように調整ボルトで調整すると、トーゼロ状態となります。
トーの調整ボルト
以上が作業内容です。
やる気と根気さえあれば、どんな方でもアライメントの調整は可能です。
皆さんもやってみてはいかがでしょうか。
簡単にですが、アライメントについてご紹介いたしました。
キャンバー、トーなどの調整をうまく組み合わせることで、車を自分好みのハンドリング特性にすることが可能です。
また、タイヤの寿命も長くすることができるので、お財布事情にも効果を期待できます。
アライメント調整は車にとってのいわば骨盤矯正のようなもの。
愛車が気持ちよく走れるようにぜひ一度、アライメントの測定をしてみてはいかがでしょうか。
(執筆:名古屋大学自動車部)
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(4月に廃車/1,600cc普通自動車)