こんにちは、北大自動車部です。
2018年1月19~21日に開催された“札幌モーターショー”に遊びに行ってきました。
そこで今回のコラムでは、モーターショーへ行った体験を通して、
・モーターショーってどういうところ?
・モーターショーの楽しみ方!
・モーターショーで、考えたこと
を書いてゆきます。
華やかなコンセプトカー!(2015福岡)
そもそも、今回モーターショーを訪れることになったきっかけは、北海道新聞のガクナビという学生向け広告の懸賞に応募したところ、2人分の入場券を手に入れてしまったことでした。
強運なのか応募者が少なかったのか気になりますが、タダでモーターショーに行けるのはすごいお得でした。
札幌モーターショーの入場券
私のモーターショー体験は2回目です。
初めてのモーターショーは2012年の福岡モーターショーでした。そこでは、最近かなりの数を目にするスポーツカー、「トヨタ・86」や、世界で初めて量産販売が始まった「日産・リーフ」、最近日本で1番売れている車の「ホンダ・N-BOX」が最新の車として大注目されていました。
さらに今では、各メーカーが出している衝突回避予防安全のパイオニアともいえる「スバルのアイサイト」の体験ができたりと今では当たり前となりつつある車や、技術が最新のものとして紹介されていました。
このようにモーターショーでは、新型車の展示はもちろん、まだ発売されていない車、そのメーカーを代表する高級車やスポーツカーなどのフラッグシップ車や、これから5年後や10年後に世の中に出てくるかもしれない車や技術の展示がされています。
普段は1世代か2世代、またはそれ以上に古い車を整備しつつ乗っている私たちからすると、未来にタイムスリップしたかのように感じてしまうような別世界が広がっています。そのような馴染みのないハイテク機器の集まりも、車好きの一員としてはもちろん気になるところです。10年後に新車として買う可能性だってゼロとは言い切れないですから。
今回の札幌モーターショーは例年通り、札幌ドームで開催されました。私たちが参加した日曜日は、9時から17時まで開催されていました。
モーターショーでは国内外の自動車メーカーは当然ですが、同じモーターでもモーターサイクルつまりバイクメーカー、そのモーターを修理、点検する各機関、そのモーターを構成する部品メーカーのブースも存在します。
これらのブースを学祭のように練り歩くだけではなく、建物の外では新型車の試乗会が行われていたり、今回の札幌モーターショーでは「さっぽろスイーツカフェ」というイベントも行われていたりしました。
モーターショー限定スイーツもありました。これは札幌モーターショーが、産学連携で実行委員会を形成しているからです。さっぽろスイーツカフェは札幌商工会議所が運営し、札幌市内の洋菓子店からの特設ブースとなっています。
余談ですが、
東京モーターショー:日本自動車工業会
名古屋モーターショー:地元の新聞社/ラジオ局/テレビ局などのマスメディア
仙台モーターショー:地域の自動車販売協会連合会とマスメディアなど
大阪モーターショー:地域の自動車販売協会連合会とマスメディアなど
福岡モーターショー:産学連携の実行委員会
が、主催者となっています。
大勢の人がモーターショーに来場する
私たちは、普段なら絶対にできない新型車の試乗を目標に、開場30分前から並びました。
手荷物検査で飲み物を取り上げられるというアクシデントもありましたが、迷うこともなくドームに到着しました。
福岡モーターショーの試乗受付は入場とは別の外の列だったので、今回も福岡モーターショーと同じタイプだと思い込んで看板を探しながら進みましたが、気づくと入場の列に並んでしまっていました。
見落としたと思って係の人に聞いてみたところ、受付は場内でするのでこの列に並んでいれば大丈夫とのことで、地方によってちょっと違うようです。そして待ちに待った入場、もらった地図で受付を探しながら流れに身を任せて入場し、受付にたどり着きました。
が、思ったより長い列…すでに1回折り返して1/4ほど戻ってきていました….。
この時間に来る人はやっぱり試乗目当てなのかと、悲しいような嬉しいような気持ちでとりあえず並びました。
ここでまた、福岡モーターショーの記憶がちらりと顔を見せます。福岡モーターショーでは、車種ごとに列を作っていたような…。
結論から言えば、今回は車種に関係なく試乗したい人で列を作り“早い者勝ち”で予約を入れていくというタイプでした。列の途中には受付状況のボードが設置されており列が進むごとに、当然ですが枠が埋まっていきます。
ここで大問題が発生です。
第1希望の“シビック・ハッチバック”の枠が1番早いペースで消えていきます!
受付け状況ボード
受付列に並び、見える受付状況が書き込まれていくボードでは、試乗したいシビックは残り4枠。こんな時できるのはお祈りくらいです。北大の合格発表の時に勝るとも劣らない熱心さでお祈りしました。
そんな願いが通じて!! 残り3枠で予約することに成功しました!読んで頂く皆さん、開場30分前でギリギリでしたので試乗希望の方は参考にしてください。
シビック試乗の予約が無事に完了したので、予約時間までゆっくり各ブースを見て回ります。
最初に入ったのは、車両トラブルの時や競技のライセンスでお世話になっているJAFのブースです。ここではVRを使った、“後部座席のシートベルト着用啓発運動”を行っていました。まさかこんなところで、人生初VRを体験するとはと思いながらゴーグルをつけ、ピントの調整を済ませると映像がスタートしました。
運転席後部に座っていた人形が、事故衝突の勢いで運転席に激突しその反動で3列目シートまで跳ね返っているという驚きの映像でした。さらに驚きだったのはシートベルトをしていない人はもちろん、前に座っている運転手もけがをする可能性があるということでした。
最近、「後部座席もシートベルト」と言われ始めましたが、なぜ今までしなくてよかったのかと疑問に思うくらい衝撃的な映像が流れていました。これを読んでいる皆さんも「後部座席もシートベルト」を、自分だけでなく周りにも言ってあげましょう。
フェラーリ!!(2015福岡)
高級車が多い輸入車エリア(2015福岡)
輸入車エリアでは、各メーカーがメーカーのイメージ通りのブースを展開しており、普段は触ることもできない車たちを隅々まで見ることができました。
中でもフォルクスワーゲンの親しみやすさと、フェラーリの品の高さは特に印象的でした。ポルシェは、ポルシェカップのGT3カーやWECで活躍したルマンカーを展示しており、下回りや車内までのぞき込んでテレビやパソコンでしか見ることのできないレーシングカーをじっくり観察しました。
途中、旭川工業高校のレストアや昨年ジムカーナでお世話になったダンロップのブースを回りながら、最後に国産車エリアです。お馴染みの国内自動車メーカーはテレビや町中でよく見る車が置かれているだけではディーラーと代り映えしないので、輸入車エリアよりもコンセプトカーの台数が多く、未来の日本を走るかもしれない車がたくさん置かれています。
今回、特に見たかった車は、「マツダ・ロードスター」「スズキ・スイフト」「ホンダ・シビック」の3台です。どの車も試乗することは出来ませんが、車内に乗ることはできます。どの車も、さすがは車好きに人気な車種ということもあり、10人前後待っている状況でした。
しかし車に沿って並ぶため、並んでいる間もあまり退屈することもなく待つことができ、見た目以上に短時間に感じます。
ロードスターはジムカーナのPNクラスで走っているロードスターと思っていたのですが、RFであったため外から眺めるまでにとどめ、スイフトとシビックに乗りました。スイフトは一昨年ぐらいまでPNクラスで活躍していた車で、今回新型が出たということで注目を浴びています。
シビックもFFでニュルブルクリンク最速を奪還したということで注目を浴びており、type Rということも手伝って大盛況でした。
シビックtype Rに乗り込むのを待ちながら車を観察する
さて、待望の試乗の時間となり、待合所へ向かいました。今回試乗するのは「ホンダ・シビック・ハッチバック」。
国内で、type Rを除いて唯一MTのあるモデルだったし、モーターショーだし、宣誓書にAT限定の方はなんたらという1文もあったし、もしかしたら…?と、淡い期待をしていましたが、残念ながらやはりATでした…。
しかし本物をみると、そんなことを忘れるぐらいかっこいい!
実家のフィットシャトルハイブリッドと比べて、重めのハンドルやペダル。やっぱり、コンパクトカーとは違う味付けなのか?重めといっても重いまではいかず、しっかりしているといった程度です。ハンドルを切り始めてしまえばあまり気にもなりません。
サイドブレーキが電動なのは、ジムカーナーをするうえで悩みものですが、低回転のトルクはCR-Xよりも感じられ、重いはずの車体が全く重く感じません。CR-X に搭載されているB16Aは回してなんぼなので文句は言いませんけど、もうちょっとこんな低回転からのトルクが欲しいなとか思ってしまったり…。
最新ターボのおかげか直噴のおかげか分かりませんが、低回転のトルクにびっくりです。
試乗し終えた後、ボンネットを開ける許可もいただき、まったく汚れていないエンジンルームを拝みます。
同乗して頂いたホンダの方も、車好きのようで3人でシビックのエンジンで暖を取りながら(?)会話に花を咲かせました。
東京モーターショー2017出展のコンセプトカー
私たちが選んだモーターショーの楽しみ方は「車を運転することが好き」という方向けだと思います。
なぜなら、各ブースは当然ながら休日よりも平日の方がすいているからです。では、なぜ金曜日に試乗しないかというと、試乗は休日にしかしないからです。だから、「車を運転することが好き」という方は、休日の開場遅くとも30分前までには会場に到着しておくべきでしょう。
そして、乗りたい車(1人1台が限界か?!)の予約をした後、人ごみの中マイペースに各ブースを回ることになります。注意としては、絶対に予約した時間に遅れないことです。もし遅れて空きがなければ、早起きの苦労がすべて水の泡になってしまいます。
2つ目は、普通に試乗できると思わないことです。
モーターショーの試乗は札幌モーターショーの場合、敷地内の駐車場を少し走るくらいなのでスピードは出ても30km/h程度です。
福岡モーターショーの場合、会場が郊外だったので近くの倉庫街を1周出来ました。地方によってこれも異なるようなので、会場の立地やネットの口コミなどから探してみるのもいいでしょう。
一方で「車を見るのが好き」という方は、できれば平日に参加したいところです。休日しか来れない人は、試乗など人が集まりそうなイベントの裏で人が少ないところを狙いたいですね。
また、各地のモーターショーによって出展車には多少違いがあります。観たい車の下調べも、入念に行いましょう。当日パンフレットを各メーカーからもらいますが、その中には東京モーターショーに出展されたすべての車が載っています。
2017出展の車は世に出て来るのか!?
私は2012年のモーターショーに参加しましたが、この6年間の間にモーターショーから出てきた車や技術がいくつもあることは紹介しました。
しかし、モーターショー内で「THE コンセプトカー」に見える車たちは本当に世の中に出てきているのでしょうか?
福岡モーターショー2012に登場したコンセプトカー①
上のコンセプトカー①画像は、「SUBARU ADVANCED TOURER CONCEPT」と、銘打って福岡モーターショー2012に展示されていました。
当時、1.6L水平対向直噴ターボハイブリッド車として考えられたコンセプトカーです。この車の見た目最近の車に似たものがあるとお気づきでしょうか?そう、「LEVORG(レヴォーグ)」です。
スバル:レヴォーグ
ヘッドライトはもちろんバンパーの開口部まで、そっくりだとおもいませんか?そしてこの車の用途は、ロングツーリングを想定して作られていることはスバルのHPから明らかです。さらに驚きなのは、レヴォーグのエンジンは1.6L水平対向直噴ターボエンジンという設定もあるということ。
残念ながらハイブリッドまではないが、同じスバルにXVハイブリッドがあることを考えると、いつハイブリッドの設定が出てもおかしくないでしょう。
福岡モーターショー2012に登場したコンセプトカー②
上のコンセプトカー②画像は、「EV-STER」と、銘打って福岡モーターショー2012に展示されていましたEVです。
こちらの方がすぐわかるかもしれませんが、これは2015年から「S660」として販売されている車にそっくりです。見た目はボディだけでなくホイールまでもそっくりですが、中身は完全なガソリン車となっています。
当時からEVの航続距離の問題があり、航続距離がガソリン車並みとはゆかず「EV-STER」の外見だけが世の中に出てきたようです。
福岡モーターショー2015に展示されたS660
このように6年前と、今を見比べると確かにモーターショーに出た車が世の中に出てきていることが分かります。
一方で6年間の間に世の中に出てこれなかった技術やデザインというのは、まだ世の中に受け入れられる段階になっていないと考えたり、世の中がそれを必要としなくなってきたと考えたりすることができます。
受け入れられる段階ではないというのは技術的に未熟であるということもありますが、法律が整っていないという場合もあるようです。
このようにモーターショーには5年後、10年後の未来の車が何らかの形で出てきています。しかし、今回のモーターショーではコンセプトカーの台数が少なかったようです。原因の一つとして、札幌モーターショーの会場は札幌ドームだけなのに対し、2012年の福岡モーターショーはマリンメッセ福岡とその隣の福岡国際センター、福岡国際会議場まで使っていることを考えると福岡モーターショーの方がより多くの車を持ち込めたということがあるのでしょう。
しかし、モーターショーは未来の車がどのようなものかを披露する場としての意味合いもあるで、車両選択の際にはもう少し未来の車も持ち込んでもらいたいものです。
事実、今回もらったパンフレットにはいくつか人工知能を持つ車などが載っていました。
フロントガラスに画像投影が出来る車
子育て応援!?なコンセプトカー
上の写真のような「THE コンセプトカー」な車もいくつかのブースに展示されていました。しかし、タイヤがついた今までにない全く新しい乗り物というもの(セグウェイのようなもの)は少なく、10年先の世の中に出てくるような不思議な車は、あまり目につきませんでした。
EVやFCVの開発が難しいため、それ以外に人手を割けないという考え方もあります。近年の車離れの話があることを踏まえると、5~10年後あたりから自動車産業が衰退するのではないかという考え方もできます。
しかし、モーターショーは、
未来に、こんな車はどうですか?
という集まりです。
私が2012年の時に観た、“着せ替えのできる車”や“後ろのタイヤがハンドルになっている車”など、今までとは大きく異なる車もあってはいいのではないでしょうか!
皆さんもモーターショーに行くことがあれば、このコンセプトカーからどんな車が生まれてくるのかを考えながら各ブースを回ってみて下さい。
時が過ぎ、忘れたころにモーターショーで撮った写真を見てください。
きっと2度目の楽しみが、待っています。
今が、未来だと。
(執筆:北海道大学体育会自動車部 渡部峻佑)