私たちが普段当たり前のように利用しているもの、それは道です。
道自体の歴史はとても古いものなのですが、今回は車が主に使用している道、道路またその持続性についての話をします。
それに関してまず、道路の簡単な成り立ちについて説明します。
道路は、上から「表層」「基層」「路盤」「路床」「路体」の各層に分かれており、表層、基層はコンクリート混合物によってできています。
まず、車を普通に運転していれば車のタイヤを通して、道路にある多少の凹凸を感じ取ることができます。
例えば、以下の写真
道路の画像(その1)
道路の画像(その2)
この道路画像(その1)と(その2)は、同じ一本の道路上にある場所なのですが、ここを車で走ると確かな違いを感じ取ることができます。
その違いは(その1)の写真の道路が、数年前に再整備されたことによるものです。
一般的な街乗りの場合、道路から感じる揺れというものは少なければ少ないほど良いものです。
では同じ一本の道路上にあるこの二つの場所、なぜ再整備されるされないで違いが出るのか。
私は道路というものを、ただそこにあるだけの地面だと思っていましたがそれはちがいました。
道路も車と同じように、何もしないで使い続けると壊れてしまうのです。
道路にも、メンテナンスが必要となってきます。
道路には、メンテナンスをしないと様々な障害が生まれてしまいます。
そのいくつかを、ここで挙げます。
まず一つ目は「わだち掘れ」と呼ばれるものです。
これは夏の暑い時期にアスファルトが柔らかくなったところを、重い車両が通ることによってできる道路の痛みです。
その結果、道路のタイヤが通る場所が窪んでしまうというものです。
また、これをメンテナンスするために「パッチング」と呼ばれる窪みを埋めることがあります。
しかし、どうしても元からあった道路との差が生まれてしまい、車が揺れる原因となります。
メンテナンス方法としてもう一つ、応急処置的なものとして、「切削工法」と呼ばれるものが行われる場合もあります。
これは、道路の凹凸を機械により削り取り、路面を平たんにするものです。
しかしこれを既に老朽化している道路に行うと、浸水による剥離を促してしまう場合があります。
パッチング跡の残る道路
二つ目は、道路の痛みで最も目につく「ひび割れ」です。
これは単純に車がその道路を多く通り過ぎたせいでアスファルトが疲労を起こし、ひび割れてしまうことや、季節による温度差、融解期の路床、路盤の支持力の低下によるもの等様々な要因によって起きるものです。
このような痛みに対して行われるメンテナンスは「シール材注入工法」というものが主に行われます。
これはひび割れたアスファルトにシール材と呼ばれるものを注入し、道路のひび割れを抑え込むというものです。
また、「バーステッチ工法」と呼ばれるひび割れを鉄筋などで連結し、ひび割れをなくす工法で、これは破れた紙を再びホッチキスで繋ぎ直すようなことを想像するとわかりやすいかもしれません。
また、ひび割れの原因には他に地盤の沈下があります。
この場合、シール材注入工法等を用いても根本的な解決にはなりません。
そういった沈下に対しては「アンダーシーリング工法」と呼ばれるものを行います。
これは、コンクリートと路盤の間にできた空洞をアスファルトやコンクリート材を用いて充填し、沈下を生じた場所を押し上げて平常の位置に戻す工法のことです。
ひび割れた道路
最後に紹介するのは「ポットホール」と呼ばれる、道路にある窪みのような穴です。
ある程度、人気のないような場所に行けば見かけることが多いです。
このような窪みが生まれる原因は、先に述べた「ひび割れ」を放置した結果によるものです。
まず、ひび割れが進行していき、雨水等がそのひびのなかに入っていきます。
その後、ポンピング現象と呼ばれる路床の部分が繰り返しタイヤからの圧力を受けることによって、路床部分の土が泥土化し、路盤に食い込み、さらにひび割れ部分から路盤の粒と共に吹き出してくる現象が起きます。
そうすると、道路の内部に空洞が生まれます。
さらにそこにタイヤからの圧力が加わり続けるとヒビが拡大していき、ついには空洞があった場所が崩れ、穴、窪みとなります。
ポットホール(道路の穴)
こういったポットホールは、実は早急に対処すべき道路上のトラブルなのです。
小さいものであっても、大きな交通事故の原因となる恐れがあります。
また、このポットホールの対処の仕方としては、「わだち掘れ」の時にも挙げた通りのパッチングが有用となります。
ポットホールの修繕跡
以上のように、道路の表面だけでも様々な問題点を老朽化と共に抱えていくようになります。
これまで挙げた道路の劣化、痛み等全てに対応できるメンテナンスとして、「オーバーレイ工法」と呼ばれるものがあります。
これはすでにある道路の上に、新たにアスファルトを敷くことにより、ひび割れ等の問題をまとめて解決することができる工法です。
このように道路は永続的なものでなく、必ず何かしらの問題が発生する可能性を秘めています。
そしてその問題は、我々ドライバーにも関わってきます。
道路が万全の状態でないが故に、事故等が起きることもあるからです。
自分の走っている道路の状況を見極め、あらかじめ余裕のある運転をすることも大切です。
次に、首都高速道路についての話をします。
首都高は東京都内、いや日本で最も有名な道路と言っても過言ではないでしょう。
多くの車好きが日々この道路を走り、またこの道路を題材としたとある漫画作品を読みこの道路や車に魅せられた人も少なくないでしょう。
しかし、この道路は有名であるが故に、多くのドライバーが無茶な走りで事故を起こすことも少なくありません。
この首都高速道路は、元々戦前からあった道路立体化構想が四輪自動車の急増、また1959年に決まった1964年の東京オリンピック開催を契機に促進され作られたものです。
最初に完成した路線は、1962年に開通した京橋-芝浦区間になります。
その後多くの路線が追加され、現在最も新しく追加された路線は2020年3月22日に開通した横浜港北JCT-横浜青葉JCTになります。
夜の首都高速道路
さてこの首都高速道路、この道路も老朽化とは無関係の道路ではありません。
この首都高を下から見ると必ず老朽化した場所、またはその修繕跡を見ることができます。
首都高速道路の主要かつ、最も重大な問題点は道路を支える橋の部分です。
柱や道路の底の部分の老朽化していることが、首都高速道路の抱える致命的な問題なのです。
首都高速道路で最も古い区間である、東品川桟橋の鉄筋コンクリート製の橋脚がボロボロになっているところは少し前にテレビでも大々的に報道されていました。
老朽化してきた首都高速道路
このような老朽化に対し、国や都は修繕ではなく新しく作り直すと言った手段を行なっている場合もあります。
これは修繕を繰り返し今ある道路を使い続けるよりも、新しく道路を作り直した方が結果的に安くなると判断されたからです。
古い道路はメンテナンス等で新しい道路よりも維持費がかかり、1キロあたり数百億円ものお金がかかる区間もあります。
修繕、作り直しを重ねてもまた別の区間が老朽化し、修繕、作り直しが必要になるといういたちごっこが発生し、無限にループが続いていくことも懸念されています。
こうして、完成後半世紀近く経った今、首都高速道路は大きな分岐点に差し掛かっていると言えるでしょう。
修繕跡が見える首都高速道路
次に首都高速道路に関する新たな議題として、日本橋の地下化というものがあります。
現在、日本橋と呼ばれる建造物の上には大きな首都高速道路が通っています。
この理由は昔の東京オリンピックを目前に控え急ピッチで道路を整備しなければいけなかった関係上、河川や道路の上といった公共空間に作った方が、時間もかからずまた土地の売買等も発生しないためだと言われています。
日本橋上にかかる首都高速道路
この首都高速道路が景観を大きく損ねていると昔から問題になっていましたが、最近になってこの問題が大きく動こうとしています。
それが日本橋付近の首都高速道路地下化になります。
日本橋付近の首都高速道路地下化は、地元民の昔からの願いでした。
この構想が実行された契機については日本橋周辺での再開発の流れが一要因と考えられます。
またこの日本橋周辺の首都高速道路も、修繕が重ねられているとはいえ老朽化していることも事実であり、作り直しの流れも相まって地下化することが決定されました。
この事業は竹橋JCTから江戸橋JCTまでの工事が予定されており、この区間には多くの在来線や新幹線が走っており、その基礎を一旦崩すのではお金がかかりすぎる関係上、既存の八重洲線を使う流れとなっています。
私は首都高速道路を走る楽しみの一つとして東京という都市の一段上を走っているような気持ちよさを感じていて、この日本橋も例外でなく気持ちの良い場所なのでしたが地下化されてしまうのは残念です。
しかし、現地に住んでいる地域の方々の意見や経済的影響等を考慮してこの地下化が決定しているので、今度は新しく地下化した区間を改めて走ることを楽しみにしています。
ちなみに、日本橋近辺の首都高速道路の地下化に伴い銀座を取り囲む東京高速道路の廃止論も上がってきています。
これは、日本橋地下化に伴う交通量低下を予想してのことで、2030年を目処に廃止する流れとなっています。
実は細々とではあるのですが首都高速道路の都心環状線を廃止するべきなのではないかという考え方が出てきています。
そもそも首都高速道路が生まれた背景には四輪自動車の増加、またそれに伴う東京都市内の渋滞を緩和するためというものがあります。
しかし現在では首都高速道路のみならず様々な道路、高速道路が整備され、首都高の都心環状線の必要性が低下してきています。
さらには先に述べたような首都高全体の老朽化、またそれに伴う維持費の増大化、くわえて車自体に乗る人口の低下も相まってそもそも渋滞の原因である車が少なくなってきているのも廃止論を後押ししています。
しかし、今あるものを急になくすことは新たな混乱を生むことになります。
国土交通省でも都心環状線の廃止後シミュレーションも進められており、この話はより現実味を帯び始めています。
私たちが走っている道路は、大小さまざまな問題を抱えていることが多々あります。
道路の走り心地は、そのままドライブの楽しさに繋がると考えています。
気持ちのいいドライブをするには、問題のない綺麗な道路を走るのが一番です。
その道路もメンテナンスをする人がいるからこそ、問題のない道路なのだということを時折思いまして見てください。
首都高速道路は。現在老朽化や維持費等のさまざまな問題を抱えた道路です。
車を単なる足と考えず、車で走ることを楽しみとしている人にとって、首都高速道路はまさに聖地と言っても過言ではないでしょう。
そんな首都高速道路の都心環状線が廃止されるかもしれないというのは、少し悲しい気がします。
あの道路は、なぜか車好きを魅了する何かを持っている気がします。
走った時の気持ちよさや、なんとも言えない爽快感は素晴らしいものです。
これから何年も時が経つと、そう言った感動を味わえない人が出てくるのかと思うと少し残念ですよね。
道路にも、愛を!
以上
執筆:広島大学自動車部
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