エンジンの構造やシステム、用語の理解を深める1〜エンジンの話(6)
エンジンの構造…あまり詳しく知らない方も多いのではないでしょうか。当たり前のように運転席のエンジンキーを回せば自然とエンジンがかかり、街乗りであれば何の問題もなく走る現代の自動車…。そもそも、エンジンはどのような構造になっていて、それぞれがどんな役割を果たしているのでしょうか。
また、ガソリンを使って動力を作るのは知っていても、その原理についてまでは知らない方も多いかと思います。ここでは、エンジンの構造について知るとともに、ストロークや気筒数など、よく聞く言葉だけど、いまいち違いが分からない言葉についてもチェックしていきましょう。
キャブレター式にはインジェクターは無い
内燃機関エンジンの基本は、空気と燃料を混合させたものに火花を飛ばして爆発させることで得られるエネルギーを動力に変換する…
簡単に言うとそんな流れですが、ここでは、細かいパーツごとの名称と役割を見ていきます。
(1)バルブ
バルブには、呼気バルブと排気バルブがあります。簡単に説明すると、呼気バルブはきれいな空気をエンジン内に取り込むためのものです。ガソリンを注入、スパークさせるための第一段階として作動するバルブになります。
また、排気バルブはスパークを終え、ガスへと変わった、いわゆる排気ガスを排出する際に開くバルブです。ここから汚れた空気を吐き出し、次のきれいな空気を取り込む準備をします。どちらも必要のない時はぴったりと閉じていて、空気の漏れがないよう作動するのが特徴です。
バルブが正しく作動しなければ、正常なスパークが行われなくなり、最悪の場合エンジンストップ(エンスト)の原因になることがあります。
(2)インジェクター
インジェクターとは、ガソリンを排出するためのパーツです。呼気バルブからきれいな空気を取り入れ、スパークの準備が整ったエンジン内(シリンダー)へガソリンを適量排出します。このパーツに異常があると、いざという時にパワーが出なくなり、出力不足の原因となることが多いです。
(3)点火プラグ
スパークプラグと呼ばれることもあります。その名の通り、ガソリンと空気の混じった混合気に着火させるためのパーツです。エンジンのエネルギーを作り出すのに欠かせないパーツですが、常にガソリンの燃焼にさらされているため、定期的な交換が必要となります。交換を怠ると、スパークするための火花が正常に放たれなくなる可能性がありますので注意が必要です。
24バルブのエンジン
(4)シリンダー
私たちのよく言う、エンジン内部に当たる部分です。空気とガソリンの混合気はここに閉じ込められ、後述のピストンによって圧縮されます。ピストンがシリンダー(部屋)をセパレートしていると考えると分かりやすいでしょう。
(5)ピストン
シリンダー内の容積を変えるパーツです。シリンダー内には、常に空気やガスがあるため、それを円滑に出し入れするための役割を果たしています。
バルブが開いているときにシリンダーを狭めれば、そこからガスは自然と排出されるよう動作します。また、きれいな空気を沢山受け入れるときにはピストンは下がり、シリンダー内の容積を広くとるよう、常に上下に動いているのです。
(6)コンロッド(コネクティングロッド)
コンロッドはピストンと後述のクランクシャフトをつないでいるパーツです。ピストンの動力は後述のクランクシャフトに伝えられるため、コンロッドに異常があると、正常な動作をしないばかりか、エンジンとしての役割を果たさない可能性も。
ただのコネクトするためのパーツではあるのですが、エンジンのメインの動作を支えるとても重要なパーツです。
(7)クランクシャフト
エンジンのストロークを支える大変重要なパーツです。ピストンの往復運動で動くコンロッドの動きによって回転し、これによって前述のバルブを制御するカムシャフトのタイミングを計っています。
現在では当然のようにエンジンキーを回せば、ピストンやクランクシャフトも動作するようになっていますね。しかし、ガソリン車が出たころは、このクランクシャフトを手動で回していました。しかも、クランクシャフトを回すという作業はとても大変で、逆回りをしてしまったり、力のない人が回したりするのはコツがいる作業だったようです。
(8)カムシャフト
(1)のバルブを開いたり閉じたりするためのパーツです。一般的に用いられている4ストロークエンジンでは、クランクシャフトが2回転する間に、カムシャフトは1回転します。つまり、クランクシャフトの半分の速さで稼働し、バルブの開閉を調整しているのです。このタイミングがずれてしまうと、正常な呼気、排気ができず、エンジンに異常をきたすことがあります。現在、このタイミングは(9)タイミングベルトで確実に制御される車両がほとんどです。
(9)タイミングベルト
クランクシャフトとカムシャフトの動作の「タイミング」を制御するためのパーツです。クランクシャフトが2回転するにつき、カムシャフトがきっちりと1回転できるように調整することで、スムーズで動きの良いエンジンを作り出します。
その他、エンジンの潤滑油であるオイルポンプ、エンジンを冷却させるためのウォーターポンプを動かすためのパーツとしても用いられています。
普段は見えるところには配置されていないことが多く、カバー等で覆われているエンジンが多いです。万が一、タイミングベルトが切れてしまうとエンジンの制御ができず、最終的にはエンジン故障につながります。
エンジンフィーリングが良いスポーツカー
エンジンがガソリンから動力を取り出すには、吸気、圧縮、燃焼、排気(排出)の4つの動作を行います。
(1)吸気
シリンダー内にきれいな空気を取り入れるための作業です。呼気バルブがカムシャフトによって開かれ、きれいな空気がシリンダー内に取り込まれます。また、この動作に合わせ、インジェクターからガソリンが射出され、空気と混じり、混合気となります。
(2)圧縮
(1)のままの混合気では、力強くスパークさせることができません。そこで、その混合気を圧縮し、高圧の火花で一気に爆発させるための準備が必要です。具体的な動作としては、ピストンを押し上げ、混合気を圧縮していきます。
(3)燃焼
ギリギリ一杯まで圧縮された混合気に、点火プラグから放電火花が放たれます。これによって混合器はスパーク(爆発、燃焼)して、ピストンを思い切り下に下げようとする力が発生します。
ピストンはコンロッドを通じてクランクシャフトにつながっており、このピストンの力がクランクシャフトに通じます。クランクシャフトが勢いよく回転することで、エンジンが動作することになるのです。この動作は、ピストンが最下限まで下がる間続きます。
(4)排気(排出)
燃焼を経て、シリンダー内はスパークによって汚れた空気でいっぱいになります。このままでは次の動作ができないため、汚れた空気を外へ吐き出す動作が必要です。このタイミングになったところで排気バルブが開き、ピストンの上昇に合わせて汚れた空気が排気ガスとして排出されます。
そして、そのまま休むことなく、(1)から動作を続けることで、エンジンは回転し続け、必要に応じてエネルギーを作り出しているのです。
現在、生産されている車の多くは、クランクシャフトは2回転、カムシャフトは1回転しているタイプが多いです。このように、4つの工程をクランクシャフト2回転で一連の動作を行うタイプのエンジンを4ストロークエンジン、あるいは4サイクルエンジンと呼ばれているのです。
よく間違いとして見受けられるのは、4気筒エンジンと4ストロークエンジンを同じものだと思っているパターンです。厳密には、4気筒エンジンの多くは4ストロークエンジンであることが多いようですが…。正しくは一連の動作の流れとタイミングに合わせて呼ばれているということを覚えておきましょう。
なお、このほか2サイクルエンジンと呼ばれるエンジンがあります。これは、4サイクルエンジンの半分、つまりピストンが1往復(クランクシャフトが1回転)するうちに1回一連の動作(呼気から排気まで)を行うタイプです。
爆発の回数が、単純計算で4ストロークエンジンの2倍スパークするため、高エネルギーが排出される可能性が高いです。ただし、燃費が悪く、エンジンに汚れが発生しやすいという弱点があります。また、ガソリンが燃焼しきらないうちに排出されることも多くなり、環境面でもよくありません。
バイクや一部の車両で使われていましたが、おそらく、今後は環境保護に配慮していくことを考えると、一部の条件を除き、消滅していくエンジンになると思われます。
4気筒式のエンジン
では、前述の4気筒エンジンとは、いったい何が「4」なのでしょうか。
簡単に答えから申し上げると、シリンダーが4つあるタイプのエンジンのことを指しています。つまり、ピストンも4つあり、それぞれがエンジンの動力を作るため、動作をしていることになるのです。バイクのエンジンも含めて考えると、単気筒、2気筒、4気筒、6気筒、8気筒などがあります。
この気筒数の違いは、エンジン性能にさまざまな違いをもたらしてくれることが分かっています。
たとえば、バイクに見られる単気筒のエンジンはシリンダーが一つだけになりますが、逆に言うと、このシリンダーが、エンジンの性能(馬力やスピードなど)を決定します。逆に、自動車に多い4気筒のエンジンは、シリンダーが4つあるため、既定の馬力を出すのに、それぞれのシリンダーが1/4ずつ担当していると考えると分かりやすいです。
これらはストローク数には関係なく、4ストロークエンジンでも、2ストロークエンジンでも気筒数はさまざまです。では、高級車に気筒数の多いエンジン(6、8、10気筒)が搭載されているのは何故でしょうか。
気筒数の多いエンジンは、それぞれが担当するトルクの割り当てが少なく、その分エネルギーが小さいので、静かな環境を作り出すことができます。初期加速を考えるのであれば、気筒数は少ない方が良いですが、スムーズにエンジンが加速、エネルギーを出すことで、高級車ならではの静かな環境の演出が可能になるのです。
ただし、この傾向は一般論であり、違う種類のエンジンを比較した場合、一概に当てはめることは難しいです。あくまで同じ排気量で同じエンジンで比較した場合と考えましょう。
現代のエンジンは構造やシステムについても複雑で、一概に比較をできるほど簡単なものではありません。しかし、エンジンの基本的な構造を理解し、言葉の意味を知ることで、値段や性能について何か見えてくることもあります。
別のコラムで、エンジンのタイプについてもご紹介していきますが、合わせて確認していくことで、愛車のエンジン性能についても深い理解を得ることができるでしょう。
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(4月に廃車/1,600cc普通自動車)