こんにちは、静岡大学自動車部です。 今回は、車のボディータイプについてのお話をしていきます。
自動車を登録する“自動車検査証”には、車体の形状という欄があります。 乗車定員10人以下の乗用車には、主に3つの形状が記載されています。
・箱型
・幌型
・ステーションワゴン
幌型の代表車:ロードスター
カムはたまご型をした部品で、とがっていない部分はベース円といわれていて真円になっています。 尖っている部分をカム山と呼びます。
これは、道路運送車両法施行規則にて形状区分が決められています。 ステーションワゴンと記載された横の数字([003])は、車体の形状コードです。
乗用自動車の場合は、
001:箱型
002:幌型
003:ステーションワゴン
004:オートバイ
005:側車付オートバイ
006:三輪箱型
007:三輪幌型
と、決められています。
その他、乗合自動車・貨物自動車・大型特殊自動車・特殊用途自動車など用途と車体の形状により多くのコードに振分けされています。
例えば、救急車なら[520]、霊きゅう車なら[621]と言った具合です。 興味のある方は、こちらから検索してみて下さい。 (自動車登録関係コード検索システム)
車体の形状:ステーションワゴン[003]と記載されている
車体の形状の決め方は、客室・荷室の容積割合と用途に絡んで決められています。
しかし一方で… ステーションワゴンなら、あんな格好だとわかっても、箱型って何?と、なりますよね。 一般的には、ボディータイプで表されて、「セダン」「ステーションワゴン」「ワンボックス」「SUV」などと、呼び名は様々です。
その中でも、今回は「クーペ」と「ハッチバック」に注目しました。
理由は端的で、学生で車を持っている人の中には、このタイプの車を持っている人が多いからです。 もう1つの理由として、この2種類のボディータイプは、クーペタイプなのにハッチバックタイプの車の特徴であるハッチドアを採用している車も多くみられ、明確な境があいまいだからです。
そこで今回は「ハッチバックタイプ」と「クーペタイプ」の境を明確にするとともに、ボディータイプの分類方法を説明します。
ここで、本コラム中に出てくる用語についていくつか先に説明をしていきます。
「2ボックスタイプ」
車がエンジンルーム、キャビンとトランクルームの2つに分かれている形状の車。
典型的にはミニバンなどです。
「3ボックスタイプ」
車がエンジンルーム、キャビン、トランクルームの3つに分かれている車。
典型的にはセダンなどです。
「○ドア車」
キャビン(客室)からつながるドアの枚数で、セダンのトランクルームなど、キャビンからつながっていない空間のドアは含みません。
今回のコラムへの調査として、我らが静岡大学自動車部の部員に、自分の乗っている車のボディータイプを答えてもらいました。
Q : 所有している車を以下の3つから答えてください。 また、3を選んだ方はボディータイプをお答えください。(例:セダン など)
1:ハッチバック
2:クーペ
3:その他
A : 答え
1:ハッチバックを選んだ人の車種 EK9、180SX、DC2、DC5、セリカ、デミオ
2:クーペを選んだ人の車種 RX-8(4ドアクーペ)
3:のその他を選んだ人の車種 インプレッサ(セダン)、ロードスター(オープン)
この結果からは1のハッチバックを選んだ人が多いです。 中でも“180SX”や“インテグラ”は、「ハッチバッククーペ」に分類されているとのことでした。 「ハッチバッククーぺ」・・・ うーん、、、なんだかあいまいな立ち位置の分類ですね。
ハッチバック車のEK9(シビック)
ハッチバッククーペの180SX
また、“RX-8”にみられるような「4ドアクーペ」というボディータイプも気になります。
クーペタイプのRX-8
では、これらの車やボディータイプについて調査を行っていきましょう!
まずは、そもそもハッチバックやクーペとはどのような車なのでしょうか? その定義についてみてみましょう
ハッチバックタイプの車といわれると、“ヴィッツ”や“フィット”、“スイフト”などの形を思い浮かべる方がほとんどでしょう。 では、ハッチバックとはどのような車なのでしょうか?
端的には、以下のような特徴がある車が「ハッチバックタイプ」に分類されています。
・車の後ろに室内へつながる扉がある
・専用のトランクルームを持たず、室内直結の荷物置き場がある
・跳ね上げ式のバックドアである
・車体の「構造」としてではなく「車種」として用いる場合、バンやステーションワゴンは含まない
このような特徴に当てはまる車が、「ハッチバックタイプ」に分類されます。
跳ね上げ式バックドアのセリカ
では、これらの車やボディータイプについて調査を行っていきましょう!
「ハッチバックタイプ」は、小さな車でも大きなラゲッジスペースを確保できるという利点があります。その利点から、コンパクトカーを中心として、多くの車にハッチバックが採用されています。
しかし、その大衆的なイメージから、高級感が薄れるというデメリットもあります。 では、クーペタイプの車の特徴にはどのようなものがあるのでしょうか?
主な特徴は、以下の通りです。
・セダンと同じ3ボックスだが、後部座席からトランクの形が流線形である
・1列の主座席があり、2列目は補助的な席である
・2ドアである *ただし、4ドアクーペを除く
さらにクーペは、大きく2つに分類することができます。 2ドアのセダンのように、キャビンとトランクルームの境が明確なタイプのクーペを、「ノッチバッククーペ」言います。 例えば“GT-R”、“86”、“BRZ”などです。
ノッチバッククーペの、日産:GT-R
逆に、キャビンとトランクルームの境が明確でなく、一直線で流線型のものを、「ファストバッククーペ」と言います。 例えば、“フェアレディーZ”、“スープラ”などです。
ファストバッククーペの、日産:フェアレディZ
つまり、「ノッチバッククーペ」には独立のトランクルームがあります。 「ファストバッククーペ」は、MRのポルシェなどは例外ですが、ハッチバックタイプでキャビンに通ずるトランクルームがあります。
独立したトランクルームのあるRX-8
「クーペ」は、その外観のデザイン性や運動性能からスポーツタイプの車に多く採用され、一部の層からは厚い支持を得ています。 しかし、快適性や利便性などは、「ハッチバック」や「セダン」と比べ劣るというデメリットもあります。
次に、実際の車種についてどのようなボディータイプに分類されているのかを見てみましょう。先に述べたように「ハッチバック」と「クーペ」は大きな違いがあり、車種として区別されています。
しかし、その2種類の中間「ハッチバッククーペ」という形状があります。
では、「ハッチバッククーペ」は、どちらに分類されるのでしょうか? 某中古車検索サイトの検索結果をもとに実際に車種ごとに分析を行いました。 分析方法として、まず車種を決定し、全国で販売されているその車種の合計を記録します。
その後、絞り込み検索欄からボディータイプの選択欄で「クーペ」、「ハッチバック」の両方で検索をし、そのヒット数を記録しました。 また、車種によってはモデルの絞り込みも行いました。 具体的にはプリウスについて、3ボックスタイプのモデルを検索結果から排除しました。
車種 | クーペ | ハッチバック | 計 |
---|---|---|---|
180SX | 131台 | 4台 | 136台 |
FD3S(RX-7) | 142台 | 0台 | 142台 |
インテR | 158台 | 0台 | 158台 |
アクセラスポーツ | 3台 | 1261台 | 1275台 |
アクセラ | 0台 | 1台 | 435台 |
CR-Z | 481台 | 1台 | 496台 |
プリウス(2代目以後) | 0台 | 7522台 | 7530台 |
自動車のプロである、中古車販売店の方が車種形状を選択して掲載されただけありまして、かなりハッキリとした結果になりました。 「ハッチバッククーペ」で、3ボックスの車(180SX、FD3S(RX-7)、インテグラType-R)は「クーペ」に分類されています。
つまり、「ハッチバッククーペ」は「クーペ」に分類されています。 ハッチバック式のトランクドアを設けた「クーペ」という認識なのです。 ハッチバック式のトランクドアとは、先で述べたように跳ね上げ式で室内貫通型のトランクルームに通ずるドアのことです。
また、CR-Zとプリウスについても注目してみます。 真横から見た形状がよく似ている2台ですが、ボディータイプに関しては大きな差が生まれました。
CR-Z(上)と、プリウス(下)
・・・この差は一体?
今回は1つのサイトを参考に検索条件の絞り込みを行い、上のような結果が現れました。 先の項で注目していた2台、“CR-Z”は「クーペ」。 もう一方の“プリウス”は「ハッチバック」。
これら2台は、キャビンからトランクルームにかけては流線形で2ボックスとも3ボックスともいえない似たような形状をしています。
流行りでもある“カムテール”という、ファストバッククーペの後端を垂直に切った形の車は似ています。
しかし結果は、クーペとハッチバックに分かれました。 何が、違うのでしょうか? それは、ドアの枚数です。
CR-Zが3ドアなのに対して、プリウスは後部座席にもドアの存在する5ドアです。 先に述べたクーペの定義には、2ドアで1列の主座席があると述べました。 3ドアであるCR-Xはこの観点から運転席のある列を主座席と考えます。
さらに、搭乗者が乗り降りするドアは2ドアであるので、クーペに分類されます。 一方プリウスは、後部座席にもドアがついているため後部座席も立派なシートであります。
さらに、搭乗者が乗り降りするドアは4枚で、バックドアがあるので、ハッチバックに分類されます。
しかし、プリウスは4ドアクーペでは無いのか?という疑問もあります。 元来4ドアクーペとはセダンの派生であり、大儀としてはセダンに分類されています。 またメーカーの戦略によって、走りとデザインを重視した車であるためクーペと称されています。
クーペの定義である、「1列の主座席があり、2列目は補助的な席である」を考えれば、プリウスの形状は後部座席は補助的な席では無いので、プリウスは4ドアクーペではありません。
た、アクセラに関してはほとんどがセダンで登録されていましたが、4ドアで3ボックスタイプなので明確にセダンタイプの形状であり、セダンに分類されています。
では、ここで結論です! 一般的な、「クーペ」と「ハッチバック」の分類方法です。
まず、最も大切なのがその車が2ボックスであるか3ボックスであるかということです。
2ボックスタイプの車は「ハッチバックタイプ」に分類されます。 その中で全長によって「車種」としてのハッチバックと、ワゴンやバンに分類されます。 具体的には、比較的全長が短くトランクルームが十分といえないものがハッチバックに分類されます。
これには最近の流行である、軽トールワゴンと呼ばれる“ワゴンR”や“ムーブ”、“タント”などの車種を含みます。 このタイプの車は、リアのドアが垂直に近い形になっていることがほとんどです。
3ボックスタイプの車は、ドアの枚数に注目します。 2ドアもしくは3ドアの車はクーペに分類されます。 ハッチバッククーペは3ボックスであるとすると、3ドアなのでセダンではなくクーペに分類になります。 3ボックスタイプであり、4ドアの車はセダンに分類されます。 また、「2.5ボックス」などと“プリウス”や“CR-Z”は特殊です。 特殊ですが、ドアの枚数によって3ドアならクーペ、5ドアならハッチバックに分類できます。
この考え方は「ハッチバッククーペ」や「ノッチバッククーペ」にも同じことです。 「ハッチバッククーペ」って3ボックスなの? という疑問に対しても、3ドア以下であり、主座席が1列である車はクーペに分類されるますので、3ボックスタイプであると考えた時と同様にクーペに分類されます。
つまり、街中でよく見かけるプリウスって実は特殊なボディータイプだったんですね! ユーザーが使い勝手の良いデザインを求めた結果でしょう。
販売台数の多い、人気のプリウス
今回、ふとハッチバックとクーペの違いについて気になったため調査をしました。 それによって、明確な分類方法を知り、とても良い機会となりました。
また、普段何気なく使っている「ハッチバック」や「クーペ」についてしっかりとした知識を得られたことも大きな収穫であったと考えます。
このコラムが少しでも皆さんの参考にしていただけたら幸いです。
(執筆:静岡大学自動車部)