こんにちは。名古屋大学自動車部です。
突然ですが、車を快適で安全に走らせるためには何が必要でしょうか?
・パワーのあるエンジンでしょうか?
・しっかりした足回りでしょうか?
・それとも良質なタイヤでしょうか?
もちろんどれも重要です。
しかし、最も重要なのはきちんと整備された道路なのではないでしょうか。未舗装路やデコボコ道では、ハンドルを切った方向に曲がってくれなかったり、ハンドルがとられてあらぬ方向に車が進んでしまったりしてしまいます。
これは車の運転を娯楽として捉えた場合でも望ましくないことですよね。
(未舗装路やデコボコ道を走る方が楽しい!という人もいますが…)
整備された日本の高規格道路
しかしそんな道路について詳しく知っているという人は、あまりいないのではないか?
そもそも、自分が普段通勤通学に使用している道がどんな道なのかも、ちゃんと分かっていないという人も結構いるのではないでしょうか?
というわけで、今回は道路の種類について「道路法」という法律に基づきながら見てゆきます。
普段、車を走らせている中で道路の違いを意識するのは、高速道路に乗るときくらいでしょう。しかし、実際は道路にも色々な種類があります。
まず、道路には公共の道路である「公道」と、個人ないしは法人が所有する「私道」があります。車庫から公道までの間の道や、工場内の道は「民地内通路」となり私道にあたります。私たち自動車部員がモータースポーツを行うサーキットなどもこのタイプの私道といえるでしょう。
また「箱根ターンパイク」のような営利目的で建設された私道もあります。私たちが利用するのは基本的に公道になります。その公道について定めている法律として「道路法」というものがあります。
この道路法は道路という分野について一般的な事項を定めている法律です。我が国のほとんどの道路はこの「道路法」に基づいて整備され、維持されています。
道路法第3条では道路は以下の4種類に分類されています。括弧書きされた数字は、平成27年4月1日現在の実延長距離です。
1.高速自動車国道(8,652.2 km)
2.一般国道(55,645.4 km)
3.都道府県道(129,446.0 km)
4.市町村道(1,026,979.9 km)
計:1,220,723.5 km
ちなみに、地球の直径が12,742 kmですので、地球約95周分の道路が日本にはあることになります。決して大きくはないこの国にこれだけ道路があるというのは驚くべきことです。では、ひとつずつ見ていきましょう。
「高速自動車国道」は「自動車の高速交通の用に供する道路で、全国的な自動車交通網の枢要部分を構成し、かつ、政治・経済・文化上特に重要な地域を連絡するものその他国の利害に特に重大な関係を有する」と定義されます。(高速自動車国道法第4条)
国を人間の体に例えた場合に「大動脈」となるのがこの高速自動車国道といえるでしょう。
道路の構造などについては法律・政令によって明確に定められているため、
以下のような要件を満たす道路となっています。
・国道である
・走行車両はインターチェンジから出入りする
・自動車専用の道路である。
(※ 125cc以下の原動機付き自転車・50cc以下の普通自動車・軽車両・歩行者などは通行できない)
・往復交通は中央分離帯で分離されている
・立体交差である
・サービスエリア、パーキングエリアを備えている
また、道路交通法により定められる法定最高速度が他の道路より高く設定されています。更に法定最低速度も設定されています。
・法定最高速度
80km/h(大型貨物自動車・中型貨物自動車・大型特殊自動車・牽引自動車・三輪自動車)
100km/h(三輪と牽引を除く、大型乗用自動車・中型乗用自動車・中型貨物自動車・大型特殊自動車・普通自動車・大型自動二輪車・普通自動二輪車および緊急自動車)
※ただし2018年2月現在、一部区間で試験的に110km/hとなっている
・法定最低速度
全車種で50km/h
※ただし本線車道のみ、加速車線、減速車線、登坂車線などでは適用されない
中日本高速道路会社(NEXCO中日本)のロゴマーク
このように、高速で走行しやすいように整備・利用がされています。国道なので、基本的には国土交通大臣が管理する道ですが、道路整備特別措置法に基づき以前は「日本道路公団」、2005年以降は「東日本高速道路会社」「中日本高速道路会社」「西日本高速道路会社」が管理することとなっています。
いわゆるNEXCOですね。また、2003年以降は国と地方自治体がお金を出し合って建設し、維持管理はNEXCOではなく、国が行うやり方でも高速自動車国道を整備できるようになりました。
これを「新直轄方式」といいます。この方式で整備した場合は、無料で通行することができます。
高速自動車国道の例としては、東京から愛知までを結ぶ「東名高速道路」や、東名高速道路と接続し、愛知から兵庫までを結ぶ「名神高速道路」、愛知から富山までを南北に結ぶ「東海北陸自動車道」などがあります。
「新直轄方式」で整備された高速自動車国道としては、新潟から秋田までを結ぶ「日本海東北自動車道」の本荘IC(秋田県)から岩城IC(秋田県)間などがあります。
◎高速道路=高速自動車国道ではない?
読者の皆さんの中には「じゃあ、普段私たちが高速道路と呼んでいる道は、この高速自動車国道のことなんだね!」と考えてしまいがちです。
この解釈は間違ってはいませんが、正確ではありません。実は道路法の中には「高速道路」という道を定義する内容は存在しないのです。では、高速道路とはいったい何なのでしょうか?
「高速道路」という言葉の定義を説明している公的な文書はいくつかあります。
1つは「高速道路株式会社法」です。
これは日本道路公団などの道路関係4公団が民営化されてできた6つの株式会社(先述した東日本高速道路会社など)の事業範囲などを定めた法律です。
この法の2条2項には以下のように書かれています。
この法律において「高速道路」とは、次に掲げる道路をいう。
1. 高速自動車国道法(昭和三十二年法律第七十九号)第四条第一項に規定する高速自動車国道
2. 道路法第四十八条の四に規定する自動車専用道路(同法第四十八条の二第二項の規定により道路の部分に指定を受けたものにあっては、当該指定を受けた道路の部分以外の道路の部分のうち国土交通省令で定めるものを含む。)並びにこれと同等の規格及び機能を有する道路(一般国道、都道府県道又は同法第七条第三項に規定する指定市の市道であるものに限る。以下「自動車専用道路等」と総称する。)
法律なのでややこしい書き方がされています。
しかし、よく読んでみると「高速道路は、高速自動車国道と自動車専用道路等のことである」という内容になっています。自動車専用道路は、自動車しか通行できない道路という文字通りの解釈で問題ないです。
次に、「道路交通法108条の28に基づく国家公安委員会の告示である交通の方法に関する教則」です。これは道路を通行する者が適正な交通の方法を容易に理解することができるように、国家公安委員会から出された告示です。皆さんが自動車学校で受ける学科教習の教本は、この教則を元に作られています。これの第7章「高速道路での走行」という章は以下のような文言で始まります。
高速道路とは、高速自動車国道と自動車専用道路をいいます。
こちらについてはだいぶ分かりやすい定義づけがなされています。この2つの法令から、いわゆる高速道路という言葉は、
【高速道路=高速自動車国道+自動車専用道路】
このように理解すれば、おおむね誤りはないでしょう。
高速自動車国道ではない自動車専用道路には様々な種類がありますが、例を挙げると、
・しまなみ海道などの本州四国連絡道路(一般国道扱いになる)
・首都高速道路、阪神高速道路、名古屋高速道路などの都市高速道路(都道府県道または市町村道扱いになる)があります。
「一般国道」は「高速自動車国道と併せて全国的な幹線道路網を構成し、かつ、次の各号のいずれかに該当する道路で、政令で路線指定されたもの」(道路法第5条)と定義されます。
ここで「次の各号」という言葉がありますが、その各号は以下のような内容です。
1.国土を縦断し、横断し、または循環して、都道府県庁所在地(北海道の支庁所在地を
含む。)その他政治上、経済上または文化上特に重要な都市(以下「重要都市」という。)を連絡する道路
2.重要都市または人口10万以上の市と高速自動車国道または1号に規定する国道とを連絡する道路
3. 2以上の市を連絡して高速自動車国道または第1号に規定する国道に達する道路
4.港湾法第2条第2項に規定する国際戦略港湾もしくは国際拠点港湾もしくは同法附則第2項に規定する港湾、重要な飛行場または国際観光上重要な地と高速自動車国道または第1号に規定する国道とを連絡する道路
5.国土の総合的な開発または利用上特別の建設または整備を必要とする都市と高速自動車国道または第1号に規定する国道とを連絡する道路
これら各号はその道の役割によって、
・「高速自動車国道と同様の働きをする道」(第1号)
・「複数の都市や重要な港、空港を、高速自動車国道や第1号の国道につなぐ道」(第2,3,4,5号)と分類が可能です。
実際、1952年に現・道路法ができた当初は第1号に該当する国道を「一級国道」、第2,3,4,5号に該当する国道を「二級国道」と呼んで区別していました。
この区別は1965年の改正によってなくなり、どちらも「一般国道」とまとめて呼んでいます。余談ですが、第4号の国道には「港国道」という通称があります。このタイプの国道は短いものが多く、日本で短い国道と呼ばれる国道174号線(兵庫県神戸市)も、神戸港と国道2号線を結ぶ港国道です。この国道の長さはわずか187.1mです。車で通るとほんの一瞬でしょう。
◎路線番号
一般国道には1~507までの路線番号がつけられています。ただ欠番となっているものもあるため、実際は459路線です。
この番号は、道路上に角の丸い三角形の看板に示されています。この看板は「おにぎり」と呼ばれることもあります。言われてみればおにぎりを逆さにした形に似ていますね。
この番号は1952年に道路法ができた当初は一級国道に1・2桁の路線番号、二級国道を3桁の路線番号をつけるとされていました。この方式で一級国道は57号まで、二級国道は271号まで番号がつきました。
国道1号線の「おにぎり」
1965年に道路法が改正され一級と二級の区別が無くなって以降は3桁の路線番号をつけるということになりました。
よってそれ以降は1973年に沖縄が本土に復帰した後に那覇~鹿児島間についた国道58号線を除き2桁の番号は付けられていません。
271号までなら、桁数によって一級と二級の区別がされていたので、自分が普段通っている国道がどのような役割なのか、地図を見ながら考えるのも面白いのではないかと思います。
◎直轄国道と補助国道
国道というと国が全て整備、維持をすると思うかもしれませんが、実際はそうとは限りません。国道の中にも「直轄国道」と「補助国道」という形で区別があります。「直轄国道」は管理者が国土交通大臣で、整備や維持に関する費用負担も国の比重が大きくなっています。
一方、「補助国道」の管理者は都府県や政令市であり、費用負担も国の比重は小さくなっています。なぜこのように区別されているのかと言うと、国が幹線道路を早く整備するため、重要な区間を指定し「直轄国道」としたからです。
都道府県道は「地方的な幹線道路網を構成し、かつ、次の各号のいずれかに該当する道路で、都道府県知事が当該都道府県の区域内に存する部分につき、その路線を認定したもの」と定義されます。(道路法第7条)
各号は、以下のような内容です。
1.市または人口5000以上の町(以下これらを「主要地」という。)とこれらと密接な関係にある主要地、港湾法第2条第2項に規定する国際戦略港湾、国際拠点港湾、重要港湾もしくは地方港湾、漁港漁場整備法第5条に規定する第二種漁港もしくは第三種漁港もしくは飛行場(以下これらを「主要港」という。)、鉄道もしくは軌道の主要な停車場もしくは停留場(以下これらを「主要停車場」という。)または主要な観光地とを連絡する道路
2.主要港とこれと密接な関係にある主要停車場または主要な観光地とを連絡する道路
3.主要停車場とこれと密接な関係にある主要な観光地とを連絡する道路
4.2以上の市町村を経由する幹線で、これらの市町村とその沿線地方に密接な関係がある主要地、主要港または主要停車場とを連絡する道路
5.主要地、主要港、主要停車場または主要な観光地とこれらと密接な関係にある高速自動車国道、国道または前各号のいずれかに該当する都道府県道とを連絡する道路
6.前各号に掲げるもののほか、地方開発のため特に必要な道路
基本的には条文通り、都道府県知事が該当する道を決められます。
ただし、政令指定都市を通過するもの、他都府県の区域に亘るものについては、それぞれに協議等の手続きを定めた規定があります。
都道府県道は、東京都では「都道」、北海道では「道道」、大阪府と京都府では「府道」、その他の県では「県道」と呼ばれています。
愛知県に住む私にとっては、北海道の「道道」という呼び方はなんだか違和感がありますが、そうとしか呼びようがないので仕方ありませんね。
管理者はその名の通り都道府県です。
ただし整備や維持の過程で国から費用面で補助を受けられる場合もあります。
◎整理番号・路線名・通称
都道府県道にも、一般国道同様に整理番号がついています。これは角の丸い六角形の看板に記されています。統一された規則があるわけではありませんが、一部の例外を除き、主要な道には1~100番を、それ以外には101番以降をつけるよう国から通達がでています。整理番号は3桁までがほとんどですが、北海道には4桁の整理番号がついた道道があります。
また、路線名や通称もつけられます。これは一般国道とは異なる点といえるでしょう。
路線名の付け方も整理番号と同様、国から各都道府県に通達によって以下のように指示されています。
・起点とするもの:主要な観光地・主要停車場・主要地・主要港
・終点とするもの:国道・都道府県道・高速自動車国道(インターチェンジ等)
愛知県道57号線と愛知県道239号線の看板の写真を載せていますが、白い四角で囲われたところにある「瀬戸大府東海線」「岡崎豊明線」が路線名です。
通称は路線名と一致しない場合が多く、都市部以外にはつけられません。
愛知県道60号線の名古屋駅付近や栄(名古屋市内の繁華街の名称)辺りを通る区間には「広小路通」という通称がついています。
一方、県道239号線、57号線には通称がありません。ちなみに愛知県道60号線の路線名は「名古屋長久手線」です。通称とは一致していませんね。
愛知県道57号線
愛知県道239号線
市町村道は、「市町村の区域内に存する道路で、市町村長がその路線を認定したもの」(道路法第8条)とされています。都道府県道や一般国道などとは異なり、要件などはありません。
これまでの道の要件を満たさないような生活道路が市町村道にあたるといえるでしょう。路線数が極めて多いため、整理番号がつけられることはありません。
市町村道はその名の通り市町村が管理者です。しかしこちらも国から費用面で補助を受けられる場合があります。
◎幹線市町村道と一般市町村道
市町村道は先述したとおり地球約95周分ある日本の道路の8割を占めます。そのため、市町村道をその重要度で以下のように区別して、効率的に整備ができるようにしています。
1.幹線市町村道: 国道(高速自動車国道・一般国道)を補完し、都道府県道(主要都道府県道・一般都道府県道)とともにその地方の幹線道路網を構成する道路
2.一般市町村道: それ以外の市町村道。日常生活に必要となる生活道路
また、幹線市町村道も以下の条件で一級・二級に分けられます。
1.幹線一級市町村道:都市計画決定された街路・主要集落(戸数50戸以上)と、その集落と密接な関係にある他の主要集落とを連絡する道路など
2.幹線二級市町村道:集落(戸数30戸以上)同士を連絡する道路・集落と、その集落と密接な関係にある一般国道、都道府県道、幹線一級市町村道とを連絡する道路など
ここまで、私は「道路法」に基づいて道路の分類について説明してきました。しかし今の日本に存在する公道の中に、以上の分類のどれにも属さないものが存在します。
それは「車が走ることができる公道」という意味に限っても、「道路法」によって規定されない公道があるからなのです。土地改良法などで規定される「農道」や森林法などで規定される「林道」などがそれに該当します。「道路法」に基づいて規定される道路は、国土交通省の管轄ですが、「農道」や「林道」については、前者は「農林水産省」、後者は農林水産省の下部組織である「林野庁」の管轄になります。
私たちは普段その違いを意識することはないと思います。
それは私たちが普段道路の違いを意識していないということ以前に、私たちにとって最も身近な道路に関する法律である、道路交通法の規定が基本的にこれらの道にも適用されるからでしょう。
普段何気なく通行している道路にも、その役割に応じて様々な分類がなされていることが分かったと思います。この内容を頭に置いた上で、普段通勤、通学で通行している道を改めて見直してみてください。新しい発見があり、ただの通勤路、通学路だと思っていた道が違うように見えてくるのではないでしょうか。
今回扱った内容は、道路についての知識のほんの一部です。このコラムで少しでも道路について興味が湧いた人は、調べてみるといいでしょう。
また、日本にある地球約95周分の道路が整備、維持される過程で、様々な人の手が加わっています。道路整備、維持に関わっている方々のおかげで、私たちが快適に道路を通行することができているということを意識し、感謝しつつ道路を利用していきたいですね。
以上で、本コラムを終わらせていただきます。ありがとうございました。
(執筆:名古屋大学体育会自動車部)
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