タイ王国:バンコク訪問記(その1)
今回の海外訪問レポートは、タイ王国です。既に筆者は、廃車ドットコムの公式Facebookにも複数投稿したり、本サイトのコラムにも複数のバンコク訪問記を掲載させて頂いたりしております。
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前回のタイ王国訪問記(番外編:その1)
タイ王国訪問記(番外編:その2)
が、しかし今回の訪問は筆者の部下3名を同行させての先方お取引先様への表敬訪問及び市場研修が目的です。したがいタイの自動車中古パーツ販売に関して基本的な部分を見聞きする目的での渡航になりましたので、筆者が1人で商談目的の渡航する場合や、お取引先様同行の視察渡航とは少し目的が違いました。
セントレア中部国際空港からタイ航空にて移動
日本からは6時間以上のフライトタイム
今回のタイ・バンコク訪問は筆者を含んで4名、筆者・工場長・輸出担当者・輸出書類担当者です。工場長は今回が初めての海外渡航ですし、輸出担当者は、以前コラムにアップしたマレーシア訪問記が最初の渡航だったので今回のバンコク訪問が2度目の海外渡航です。また書類担当の女性事務員もバンコクは初めてだったので、筆者も新鮮な気持ちを共有しながらセントレア中部国際空港(NGO)からのフライトです。departure time(出発時刻)が定刻とおり11:00で、スワンナプーム国際空港 (BKK)へのarrival time(到着時刻)が現地時刻の15:40、日本から見た時差がマイナス2時間なので日本時間の17:40ですので6時間40分のフライトです。
余談ですが、BKKからNGOの帰国便は偏西風に影響でフライト時間は5時間25分程度になります。またNGOとかBKKとは空港コードといって世界中の空港に対して国際航空運送協会(IATA)が定めた3レターコードと言うものです。セントレア中部国際空港がNGO、タイのスワンナプーム国際空港ならBKK。日本の成田国際空港ならNRT、羽田ならHND、関西国際空港ならKIX、福岡ならFUK、新千歳空港ならCTS、MRJの試験飛行をした県営名古屋空港ならNKMです。民間に開放されていない岐阜県各務原市にある航空自衛隊の岐阜基地が使用する岐阜飛行場ならQGUと言った具合です。
つまり航空カウンターへのチェックインをする為に早朝に岐阜を出て、セントレアを午前中に出て、夕方にバンコク入りしたという感じです。飛行機から降りて入国審査に向かう途中で旧知のタイ人のお迎えにビックリしながら無事に入国審査を済ませて、あまりにも早く入国審査を通り過ぎたので、逆に荷物を受け取るターンテーブルで結構待ちながらも無事にスーツケースを受取りました。ずっと飛行機の座席に座っていただけですが結構な疲労感があります。
出国ゲートを出ましたら、タイのお取引先様社長以下、数人の幹部社員たちとその家族たち皆さんが、ワイ(合掌)しながらのお出迎えしてくれました。お取引先様はスワンナプーム国際空港から直線距離で2~3km、道のりで15kmくらいのbang Na(バンナー)地区の、Bang Na – Chon Buri Expressway(バンナー、チョンブリ間高速道路)の沿線、Mueang Chiang Kong通りと、Chiang Bang Na1通りからNa7通りまでに位置したバンナーチェンコン市場の一画に2店舗のお店を持っています。
赤い矢印先がバンナー市場。青い矢印先がパトゥムワン市場。緑色の丸がドンムアン(旧バンコク国際空港)空港
タイ国内には、日本から輸入した中古部品を取り扱う会社が集まるチェンコン市場が複数あり、最大と言われるのがバンナー市場です。ちなみにチェンコンとは中古を意味する言葉で、その由来は中華系タイ人が多く経営していたことから中国語のような発音がそのままタイ語で自動車中古部品を意味する言葉になったとか、その昔に中、古部品商を始めた店の近所にあった祠の名前とか諸説あるようです。そのチェンコンを扱う市場はバンナー市場の他には、スワンナプーム空港(新バンコク国際空港)が2006年に開港するまでバンコクの国際空港であったドンムアン空港(旧バンコク国際空港)の近く点在する中古部品市場や、バンコク郊外南東のチョンブリ、バンコク郊外北のアユタヤにも中古部品市場があります。
バンコク市内には、サムパッタウォン区というチャイナタウンの脇、チャオプラヤー川の畔に付近に位置する中古部品市場と、その東へ位置する国立チュラロンコン大学の西側に位置するパトゥムワン区にも中古部品市場があります。ただ、市内の中古部品市場は民家や商店と軒を連ねている場所に点在しており手狭です。しかも道路が狭いのですが、バンコク市内の自動車整備工場や鈑金工場に近い等の利点があります。
Chit Lom駅付近、エラワンの祠から見たBTS
バンコクの都市部は、朝から晩まで渋滞が激しい
しかしチュラロンコン大学の西側に位置するパトゥムワン中古部品市場の土地は国に所有権があり、政府の都市開発の意向で立ち退きに近い形で移転を迫られた経緯があり、その大半がバンナー中古部品市場に移転して来たとのこと。もっとも国立チュラロンコン大学周辺は、高架鉄道BTS(スカイトレイン)のRatchadamri(ラーチャダムリ)駅やSiam(サイアム)駅、National Stadium(サナームキラーヘンチャート)駅のSukhumvit(スクムヴィット)線とSilom(シーロム)線に加え、地下鉄MRT(メトロ)のSam Yan(サームヤーン)駅が数百メートルに点在している都心部なので、国の意向としては街並みを整備したいと言うことなのだ。筆者の取引先さまも、元々2000年頃まではパトゥムワン中古部品市場にお店を構えておりましたが、政府の意向に従うのと主要中古部品販売店がバンナー中古部品市場に移転してゆくタイミングで同じように移転をしました。またバンナー付近は1988年に開設した、バンコクの名門ゴルフコースとしても有名な Green Valley Country Club 等々のゴルフコースが多数ある郊外地域です。
平日の昼間でも混雑しているBTS
現金とプリペイドカードで乗車ができる
水が豊かなので、芝がとても綺麗
ゴルフのレギュラーティーまで、ワイ(合掌)している
空港から宿泊ホテルまでは車で15分くらいです。ホテルに荷物を置いてからお取引先様の社長と幹部とその家族たち全員で河畔にあるレストランにて晩御飯をご馳走になりました。筆者はレストランに向かう最中に、ワイ(合掌)の仕方をスタッフたちに教えていました。
タイ語の挨拶は「サワッディー・カップ(男性)」「サワッディー・カー(女性)」です。通常は挨拶をしながら、相手への敬意を示す意味の合掌をしながらお辞儀をします。その合掌を“ワイ”と言います。ワイは、目下の者が先に目上の者に対しておこない、目下の者からのワイに対して応答するように、目上の者から目下の者にワイをします。この場合の目上とか目下の関係は、年齢であったり社会的地位だったりしますし、同年齢や同僚同士でもワイをするので、日本でのお辞儀みたいに、社長や重役、祖父に祖母なら深々と礼をするし同僚なら軽く礼をする感覚を深めたものなのでしょう。しかし明確に違うのは、ワイの手を合わせる位置である。ワイには三段階あり、
・最上級:王様や僧侶及び、とても目上の人が対象で、ワイの位置が、鼻より上の額付近
・上 級:目上の人や、年上の人が対象で、ワイの位置が、アゴから鼻付近の顏のややした付近
・通 常:目下にあたる人や、店員さん等が対象で、ワイの位置が、胸の付近で顔にはかからない。
に加え、パチリと両手を貼りつけて合掌するよりも、蓮の華の如くに手のひらを膨らませるのが良く見かけるワイの方法です。このワイの法則を知ると、お取引先様達の皆さんは我々の訪問を歓迎してくれているのかが判ります。小学生の子供から幹部の奥様まで皆が顔の付近でワイをしてくれます。
友人のドナルドが“ワイ”の手本を教えてくれたよ!
卓上には、ナムプラー(魚醤)等が置いてある
正しいワイの仕方を話しながら、筆者達を乗せたハイエースはバーンバコン川の畔にあるレストランに到着です。タイ料理は中華料理に近い感じですが、周辺地域のマレーシア、ラオス、ミャンマー、カンボジア等の東南アジア独特の感じですが、“辛い”“すっぱい”“甘い”“塩味”“うま味”の五種の味覚を多彩に扱った複雑な味覚がカオスな雰囲気の香辛料が強く味付けされているのに加え、香味野菜にハーブと言った“香り”を加えてあるのです。また街角のレストランの大半のテーブル卓上に、砂糖・酢・とうがらし・ナムプラー(魚醤)の4つが備えて置いてあります。それらを使って自分好みの味に仕立てるのが一般的なようです。
調理方法は、「パッ(炒める)」「トォーッ(揚げる)」「ヌン(蒸す)」「ヤーン(焼く)」「トム(煮る)」「ヤム(混ぜる)」で、材料名が「クン(海老)」「プー(蟹)」「プラー(魚)」「ガイ(鶏肉)」「ムー(豚肉)」「ヌア(牛肉)」「パック(野菜)」「クイティアオ(米麺)」「カーゥ(ご飯)」がタイ料理で良く使われます。この言葉に加え、「アローイ(美味しい)」「ペッ(辛い)」「ワーン(甘い)」「ケム(しょっぱい)」「プリィアオ(すっぱい)」が判ると、タイの人たちがどんな感じで注文しているのか、なんとなく何を言っているのか想像が出来てきてきます。家族でアレが美味しいとか、ソレが食べたいとか「イプンッ(日本人)」はあまり辛いのはダメだとかと言っているような気がします。ボクは辛いのが苦手なので「マイ ペッ ナカップ(辛くしないで)」とタイ語でお願いすると、タイの家族みんなが笑顔になります。
世界3大スープと、誰が言い始めたのか? 有名な「トム ヤム クン」は、上記の調理方法と材料を知ると、「トム(煮る)・ヤム(混ぜる)・クン(海老)」なので、“エビのごった煮”と言う訳になるのでしょうか、酸っぱくて辛いのにココナッツミルクのコクがカオスで、混沌した複雑な味が魅力なのでしょうね。タイ訪問が初めてのスタッフ達は積極果敢に、辛いのも酸っぱいのも挑戦していました。味が濃いのでビールが進みます。「カーゥ パッ プー(蟹炒飯)」も、お腹いっぱいに食べて満腹中枢がマヒするくらい大満足です。
トムヤムクン、調理済みだが卓上コンロで冷めない様に
シャム湾に沈む夕日を眺めての食事
筆者の感覚からすると、暑いタイならエアコンの効いた室内で食事がしたいと思う時もあるのですが、タイの人たちはオープンエアな場所での食事が好き。河畔のレストランは水上にまで席が伸ばしてあり、河川の上で夜の風を感じながらの食事です。たくさん呑み、たくさん食べて、たくさん会話して夜が更けてゆきます。筆者とスタッフ達は満腹なのと、軽い時差もあり眠くて仕方がありません。ホテルに帰還して就寝しました。
さて、2日目です。3日目の深夜00:05発のフライトで帰国予定なので、正味2日間の滞在です。その2日間で行ったことは、バンナー市場にあるお取引先様の訪問と、バンコク港の私設ターミナルでのデバンニング見学と市内観光です。
まず訪問最大の目的である、バンナー市場。その1で記載したとおりバンコクにおいて最大の自動車中古部品販売市場です。国営と県営の工業団地ではなく、とあるお金持ちの所有地で1200棟あまりの3階建てから4階建ての物件があり、それが30年リースされた後に徐々に売却されていっています。筆者の取引先さまは5年ほど前にリースを終えて土地と建物を購買しました。1200棟もの建物がありますが、長屋の如く何棟かがつながって建築されており、間口が1棟とした単位を「ルーム(間口)」と呼んでいます。小さなお店ですと1ルームですが、大体のお店が3ルームから4ルームの間口で繋がった状態でお店を開いているので、推定300軒弱程度の中古部品商が営業していると思われます。ここで、あえて“推定”と記載したのは、現地のタイ人に聞いても「何件のお店があるのかは知らない」と言うからです。まあタイだから仕方が無い。「マイ ペン ライ(問題無い)」と言うタイ語があり、訪タイした方ならお耳にした事があるかもしれません。「マイ」は(否定)「ペン ライ」は(問題で有り)という意味なので(問題無い)と訳せますが、使用場面ではニアンスが(大丈夫)(気にしない)(どういたしまして)とかに変化しますし、(大丈夫、がんばってやろう!)みたいな場面でも使われる言葉ですが、この場合は(何軒のお店があってもいいじゃない、みんな友達)みたいな感じで「マイ ペンライ カップ」と言われた気がします。
バンナー市場のチェンコン商店街
中古パーツを取扱う店が、複数の通りにある
バンナー中古部品市場内のMueang Chiang Kong通りと、Chiang Bang Na2通りに1店舗ずつお店を構えているのですが、日本人スタッフ達は初めての訪問です。いくつもの通りに、いくつもの店舗があり、そして大量の自動車中古部品が山積みされているのです。建機や農機具を取り扱う店舗に加え、台湾製の非純正の外装部品を取り扱う店舗や、中国製の電装部品を取り扱う店舗もあるが、9割以上が日本からの中古部品をメイン商材にしている。お取引先さまの店舗では、日本からの中古部品とりわけエンジンとミッション。足回りのショックアブソバーやロアアームにラック&ピニオン等の機能部品と、エンジンマウント等のブッシュ類、パワーウィンドウ用レギュレターにモーター、ワイパーモーターに各種スイッチ類の電装部品とアイテム数は多岐にわたる。
しかし一方で、外装部品(ボディパーツ)は少な目である。それは日本ブランドの《海外専売車》戦略のためで現地生産をしたり、暑いタイでは不要な暖房などの不要な装備を無くした仕様にしたり、廉価版として装備を安価なものにしたりする、日本国内のモデルとは違う世界戦略車をタイでも販売しているからです。エンジンや足回りが同じでも、外装と内装は別モノという自動車がタイで走っているからです。
VIOS トヨタのヴィオス
Corolla ALTIS カローラアルタス、トヨタの海外専売車
店舗の軒先には山積みの中古エンジン
中古エンジンは小売りも業販もされる
1990年後半頃までは日本ブランドの自動車も海外専売車種が少なかったために外装部品も多く流通していました。今日では外装部品が少ないですが、ノーズカットと呼ばれる部品も多いです。しかし繋ぎ合わせてニコイチにするのではなく鈑金修理用の部品として販売されています。またエンジンスワップ(E/G Swap)と言われるエンジン載せ替えはバンナー内でも作業をしているのが見られます。燃費の悪い古いBMWにトヨタのクラウンのエンジンを載せ替えたり、ディーゼル車のハイエースにクラウンのガソリンエンジンを載せ替えつつ、更にガソリンエンジンを燃料の安価なLPG仕様に変更するなどの様々な工夫をしています。本稿を執筆している2016年現在は原油価格が30ドル/バレル台と安値で推移していますが、2011年頃には110ドル/バレルと燃料が高い時代に、その様なスワップが盛んになったのです。また走行距離が多い事と道路状況の悪さ、燃料のオクタン価の低さからの理由でエンジントラブルや足回りの劣化が激しいことも中古部品流通が盛んな理由です。
VIOS トヨタのヴィオス
ディーゼル車からエンジン載替え&LPG仕様改造中
日本から輸入された中古部品は、同じバンナー市場の店同士でも業販されています。部品を買いにくるお客さまは自分の懇意の店があるようで、親戚であるとか親戚の知合いであるとかの友達の輪的なつながりで毎回購入する店が決まっている事が多く、その店舗に必要商品が無いと店舗スタッフがバンナー中をバイクで走り回り、必要な部品を探してきます。そういった点でも、中古市場が集積したメリットは高いのでしょう。またバンナー地域以外の業販には宅配便のような仕組みがあるようで、チェンマイやチェンライといったタイの北部からの電話注文に対応した部品を、自社店舗で無い場合でもバンナー市場で探した上で販売されてゆきます。もちろん来店でのお客様への販売も実施していて、エンジンの販売時には店舗先で簡易燃料タンクをつなぎ、エンジンコンピューターからの電気配線の被覆をはいで直結してエンジンを始動させて、エンジンに異音が無いかをお客様の目の前でデモンストレーションして販売していました。
探した中古部品を乗せてお店に帰るバイク
チェンマイに送るために梱包された中古部品
宅配のために集荷された中古部品の積込み
エンジンを直結して始動テストする
簡易ガソリンタンクとポンプをつないで始動する
販売されたエンジンを積んでいるピックアップ車
初めて訪問したスタッフ達は、目の前でエンジンコンピューターの配線をつないでエンジンが始動するのにビックリしていました。また、エンジンの載せ替えを違う車種に実施する事にもカルチャーショックだったようで、見るものが全て新鮮な様子です。あれだけ筆者が廃車ドットコムの公式FBページに画像をUPして説明していても理解してもらったつもりでしたが、まさに「百聞以不如一見」“百聞は一見にしかず”ですね。高い航空券を社長に稟議した分くらいは感じてもらえたかな?
次は、「百見以不如一考」“百見は一考にしかず”そして「百考以不如一行」“百考は一行にしかず”さらに「百行不如一効」“百行は一果にしかず”と、どんどんこの視察訪問で力をつけて、成果を出して欲しいですね。
(その1)終わり。 (その2)へ続く…
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