こんにちは、名古屋大学自動車部です。
車に興味がない方でも一度は『F1』という言葉を耳にしたことがあると思います。
バブル時代には、セナ、プロのライバル対決や、ホンダが参戦していたこともあって、日本でも注目度の高かったF1も、今の日本で見ている人は、激減してしまいました。
しかし、現在でもF1は、自動車技術の最高峰の場であり、激しい争いが繰り広げられています。
F1の人気が、下火である今だからこそ、このレースに焦点をあてて少しでも興味をもってくれる人が増えると幸いです。
F1というのは,”Formula One”の略称です。
フォーミュラカーの頂点という意味で、フォーミュラカーは、タイヤとドライバーが剥き出しのレーシングカーの一種です。
毎年、ヨーロッパを中心として世界中で開催されます。(2019年は全21戦)
毎戦、およそ300キロの距離を、サーキットを周回して速さを競います。
金曜日には、練習走行をして車のセッティングを煮詰め、土曜に予選、日曜に決勝を行います。
1950年から始まり、今年の2019年の大会で70回目の大会となり、全10チーム、20台が参戦します。
マクラーレンMP4-31
土曜日に行われる予選では、タイムアタック合戦が行われます!
そうは言っても、一人ずつ走るのではありません。
Q1と言われる最初のセッションで、20台が同時に走り、上位15名が次のQ2へ進み、16位~20位が決定します。
それから、Q2でさらに11位~15位が決定し、残った上位10名によりQ3が行われ全員のポジションが決まります。
この振るい落としの方式は「ノックアウト方式」と言われます。
複数台が、同時に走るので、いかに他の車に邪魔されないきれいなラップ、「クリアラップ」を取れるかがカギとなります!
1000分の1秒を争うF1の世界では、他の車が前にいたために数㎝ずれただけでも、ラップタイムに大きく影響します。
それだけ繊細で、シビアな世界だと実感させられるのがF1の予選です。
日曜に行われる決勝は、各コース305kmを超える周回数を走ります。
例えば、日本でのF1の舞台、鈴鹿サーキットは一周が約5.8kmなので、53周すると307.4kmで305kmを超えます。
なので、決勝の周回数は53周となります!
スタートは、スタンディングスタートつまりよーいドン!
でスタートします。
赤信号、レッドシグナルが順に点滅していき、全部のライトが消えて、ブラックアウトでスタートします。
毎回、スタートのタイミングは違います。
2019年シーズンのレギュレーションではレース中のタイヤはソフト、ミディアム、ハードの3種類のコンパウンドが用意されます。
ソフトは、一番グリップが高く寿命は短く、ハードはその逆です。
Q3に進んだ上位10名は、Q2の際に使用したタイヤをスタート時に履く決まりになっています。
タイヤの選択は、レースを大きく左右するものなので注目してみてください。
ポイント獲得圏内は、10位までで、以下のようになっております。
また、今年からレース中で最も早いラップを走った者に、ファステストラップポイント(入賞圏内にいることが条件)1点が与えられます。
2019年のF1ポイントシステム
最初に述べたように、F1は自動車技術の最高峰です。
そのF1マシンは、いったいどのようなマシンなのか、紹介したいと思います。
F1といえば、甲高いエンジンサウンドで知っている方も多いと思います。
実は、それは一昔前のF1です。
2013年までは、甲高い音のなるNAエンジンが搭載されていましたが、2014年からは大きくレギュレーションが変更されました。
NAエンジンから、ターボに変わり、環境に配慮するために、ハイブリッドになりました。
ブレーキングで発生する運動エネルギーを、電気エネルギーに変える部分と、エンジンからの排気による熱エネルギーを、電気エネルギーに変える二つの部分があります。
そして、エンジンの排気量はなんとたったの1600cc!
トヨタのプリウスみたいな感じなのに(ちなみにプリウスは1800ccのハイブリッドです)馬力は1000馬力とも言われています。
この技術は、市販車に転用することができます。
決して、エンジンの出力を高めるばかりではなく、回生効率を極限まで高めるためにもなります。
今のF1のエンジンは、エコの波がきた現代に合わせ、市販車にその技術を存分に生かすためにこのような形になりました。
2019年シーズンは、ドイツのメルセデスベンツ、イタリアのフェラーリ、フランスのルノー、そして日本のホンダの4社が各チームにエンジン及び、ハイブリッドシステムを供給しています。
HONDARa618H
F1マシンの車体は、カーボンファイバーで出来ています。
そのためとても軽量で頑丈です。
また、F1マシンは車体を下に押し付ける力、ダウンフォースを利用してコーナリングスピードを高めているので、数多くの空力パーツが付いています。
そのダウンフォースは、マンホールが外れ吹き飛ぶほど。
空力パーツの開発スピードはとても早く、毎戦のようにアップデートされます。
空力パーツが多く付いている レッドブルホンダ RB15
F1のタイヤは、フロントタイヤが約300mm、リアタイヤが400mmとかなり幅広です。
13インチホイールと相まって、とても肉厚なタイヤとなっています。
以前は、縦溝が入った、グルーブドタイヤと言われるものが、使用されていた時期もありましたが、現在はスリックタイヤ(溝の無いツルツルなタイヤ)が使用されています。
また、現在は昔のように複数のタイヤメーカーが、供給しているのでは無くイタリアのピレリというメーカーからのみ供給されています。
2019年では、5種類のタイヤから毎戦3種類が指定され、柔らかいタイヤからソフト、ミディアム、ハードと呼ばれます。
その3種類を判別するために、ソフトは赤色、ミディアムは黄色、ハードは白色のラインが入れられています。
テレビで見ていてもすぐにわかります。
各ドライバーが、履いているタイヤに注目してみると、レースがより一層面白くなりますよ!
かなり肉厚なタイヤ トロロッソSTR13
ここで、注目すべき2つのポイントについて取り上げます。
F1のピットストップ時間は、年々短くなってきている状況です。
2010年からレース中の再給油が禁止されたこともあり、近年ではピットストップは2秒台が当たり前となっています。
F1では、ピットクルーの人数制限はないため、今では1つのタイヤにタイヤを外す人、ホイールナットを緩める人、新しいタイヤを付ける人と3人が配置されており、タイヤ関係だけで12人はいます。
さらに、ジャッキアップする人や、ウィングの微調整をする人なども合わせると、20人ほどにもなります。
この20人が、一斉に滑らかに動く姿は正に芸術です。
2018年時点でのピットストップ最速タイムは、2016年のヨーロッパGPでウィリアムズが記録した1.92秒です!(2019年第11戦ドイツグランプリにてレッドブルホンダが1.88秒のタイムで更新しました。)
次に、最近の注目ドライバーを紹介したいと思います。(この記事は2019年10月時点に書いています。)
昨年度チャンピオンの五冠王、絶対王者。
ここ数年無類の強さを誇っている選手です。
2007年に、ルーキーイヤーながらチャンピオンを終盤まで争い、翌年にはマクラーレンでチャンピオンを獲得し、当時の史上最年少チャンピオン獲得記録を更新した。
2013年に、メルセデスに移籍し、その後のハイブリッド時代のメルセデス黄金期を引っ張り、14,15,17,18年と王座を獲得した。
ミスがほとんど無い走りをする。
2010,11,12,13年と、ドライバーズタイトルをレッドブルで獲得しました。
現在の最年少チャンピオン。
2008年の雨の、モンツァでは非力なトロロッソのマシンで衝撃的な初優勝。
現在は名門フェラーリに移籍し、5度目のタイトルを狙っている。
レッドブルホンダの絶対的エース。
なんと17歳の若さで2015年、トロロッソからF1デビュー。
2016年には、シーズン途中でレッドブルに移籍し、移籍後初戦のスペイングランプリでいきなりの初優勝。
18歳227日での優勝は、ベッテルの最年少優勝記録を大幅に更新した。
オーバーテイクが難しくなった現代のF1マシンでも、果敢に攻め、数々のオーバーテイクを披露する。
1,2コーナー席からの眺め
筆者は、10月13日に開催された2019年シーズン第17戦日本グランプリを実際に観戦しました。
この週末は、日本列島に甚大な被害をもたらした台風19号の影響により、土曜日すべての予定をキャンセル、日曜午前に予選、午後に決勝というスケジュールで行われました。
予選、決勝が同時に行われたのと、レッドブルホンダのフェルスタッペンの活躍によって例年に比べ来場者数は多く、日曜日の来場者数は2018年より約13000人程多い81000人を記録しました。
実際に、お客さんの年齢層を見ると、もちろん中年おじさん世代が多いのですが、想像以上に若い世代が多かったように感じます。
なぜ増えたかというと、23歳以下の人限定で一人1万円の格安チケットを発売したからです。
この取り組みは、2018年より行われていますが、今年はさらに1,2コーナー席にも広げたためより多く若者が来場しました。
F1関係者から今までも鈴鹿は、素晴らしいという声が多く上がっていました。
それには、鈴鹿というコースがとても面白いコースということもあるのですが、ファンが特に素晴らしいという意見が多かったのです。
実際に、その素晴らしさを肌で感じることが出来ました。
予選が始まり、それぞれのドライバーが出てくると必ず、全員に盛大な拍手が送られ、いい走りをしたドライバーにも歓声と拍手が湧き起ります。
圧倒的に、ホンダF1を応援している人が多い中、これほど温かさを感じると思っても見ませんでした。
今のF1マシンは、前述したようにとても強力なダウンフォースを生み出して走っています。
そのため、空力に頼る部分が多いイメージを持っていましたが、実際に見ると違いました。
私が観戦した1,2コーナー席からは、テクニカルなS字コーナーが見渡せますが、早いマシンは、共通してサスペンションの動きがよく、車体が安定していました。
やはり車の運動性能を大きく決めるのは、サスペンションが重要であり、このことは市販車にいえることだと確信しました。今では、昔ほど見る人が少なくなったF1。
ですが、現代のF1にもまだまだ多くの魅力が存在します。
昔は、見ていたが今のF1を見ていなかった人や、一度も見たことなかった人も今一度ぜひF1に注目して、実際に足を運んでみてください!
このコラムを読んだ人が、少しでも興味を持っていただけたなら幸いです。
筆者:名古屋大学自動車部
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