名機「EJ20」その種類と、エンジンの降ろし方
皆さん、こんにちは北海道大学自動車部です!
今回は、車好きな人なら誰でも知っているであろうインプレッサに搭載されているエンジン、「EJ20」について述べます。
何を隠そう私もインプレッサGC8に乗っていますが、2016年の夏に開催された七大戦(旧七帝大の部活で開催される大会)にダート競技でエントリーした後、残念ながらエンジンがメタルブローしてしまいました(泣)。
そこでここではEJ20の種類とその違い、EJ20の降ろし方(GC8)について解説します。
まだまだGC8に乗っている人は沢山いると思いますので、参考になればと思います!
スバルのロゴ「六連星」
BG系レガシィのツインターボ仕様
では、まずEJ20の種類についてです。
EJ20と言えばスバルの代名詞と言っても過言ではないくらい有名で、「レガシィ」「インプレッサ」「フォレスター」「エクシーガ」「WRX-STI」などに搭載されています。
基本設計を20年近く採用し続けていて、これは自動車業界では極めて稀なことです。
しかし、よくEJ20は弱い、すぐブローすると言われていますね(特にGC8)。
私も経験したばかりですが(笑)。
ところが、インプレッサ第2世代目のGDB型になってからは強度が大幅にアップしたと言われます。
一体どのような改良が行われてきたのかこれから見ていきましょう。
NA、ターボ両方存在しますが、ターボのみ紹介します。
アルミニウム合金製水冷水平対向4気筒4ストローク
排気量:1994cc
内径×行程:92.0mm×75.0mm
バルブ配置:DOHC
この仕様はGC8に搭載されたエンジンです。
先に標準のWRXに搭載されたものからです。
STI-Verとの差別化とコストダウンのため鋳造ピストンを採用。
タービンやインタークーラーも少し形状異なります。
【アプライドA、B】
(240PS/6000rpm、31.0kg-m/3500rpm)
最初期のGC8に搭載。
バルブ駆動はダイレクトプッシュ式を採用し、点火系はダイレクトイグニッション。
【アプライドC】
(260PS/6500rpm、31.5kg-m/5000rpm)
馬力が向上。
トルク特性は高回転型。
【アプライドD、E】
(280PS/6500rpm、33.5kg-m/4000rpm)
馬力が280PSにアップ。
【アプライドF、G】
(280PS/6500rpm、36.0kg-m/4000rpm)
トルクが向上。
次にSTI-Verです。STIによる手組、鍛造ピストンを採用しています。
【アプライドB】
(250PS/6500rpm、31.5kg-m/3500rpm)
エンジン型式はEJ20G。Ver1。
シリンダーブロックはクローズドデッキを採用。
【アプライドC】
(270PS/6500rpm、32.5kg-m/4000rpm)
Ver2。過給圧を600mmHgから700mmHgに変更し出力を向上。
【アプライドD、E】
(280PS/6500rpm、35.0kg-m/4000rpm)
エンジン型式がEJ20K(MASTER-4シリーズ)に変更。
量産性を考慮しシリンダーブロックをオープンデッキに変更。
点火方式は2コイル同時点火になりタービンがボールベアリングになり過給圧が800mmHgにアップ。
【アプライドF、G】
(280PS/6500rpm、35.0kg-m/4000rpm)
型式がEJ207(PHASE-Ⅱシリーズ)に変更され、吸気系が大幅に改良。
以上がGC8に搭載されているエンジンです。
“鋳造ピストン”“鍛造ピストン”とありましたが、これはピストンの製造の仕方の違いで、鋳造(ちゅうぞう)は型に溶かした金属を入れて冷やして作りますが、鍛造(たんぞう)は型に押し当てて作るため、鍛造の方が強度は高くなります。
余談ですが、GC8後期型のEJ207はエアフロセンサーが弱いとの評判です。
本当にすぐ壊れます(泣)。
私は既に2個壊しました(笑)。
ダート競技するならレゾネータチャンバーは外しちゃダメです!砂吸っちゃうんで(笑)。
センサーがホットフィルム式に変更になった為に耐久性が落ちたようです。
GDB以降はDENSOのセンサーを採用していて、エアフロトラブルはほとんどなくなったそうですね~。
これはGD系インプに搭載されたエンジンです。
【WRX(GDA)仕様】
(250PS/6000rpm、34.0kg-m/3600rpm)
フォレスターなどにも搭載されているエンジン。
タービンの改良で主に燃費や低速トルクを重視。
電装品のメーカーを変更し信頼性がアップ。
【STI(GDB)仕様】
(280PS/6400rpm、43.0kg-m/4400rpm)
吸気側AVCS、ツインスクロールターボ(アプライドC以降)を採用。
インタークーラーの改良で大幅にトルクアップ。
高強度の鋳造ピストンに変更。
【STI Spec.C仕様】
(280PS/6400rpm、43.0kg-m/4400rpm)
競技グレード。
専用ボールベアリングタービン、空冷オイルクーラー搭載。
GC8との違いとしては、まずシリンダーブロックがセミクローズドデッキになったことです。
GC8で採用されていたオープンデッキに補強を加えたものがセミクローズドデッキです。
強度的にはクローズドデッキの方が優れていますが、冷却面とコスト面、軽量化の面を考慮するとクローズドデッキは厳しいのでセミクローズドデッキに落ち着いたのでしょう。
因みにGDBのシリンダーブロックなら、大容量インジェクターに交換して燃調合わせをすればブースト1.7kg/cm2くらいはかけられます。
ここでも余談ですが、スバルがWRC(World Rally Championship)に出ていた1994年-1997年頃は、強度を優先してGC8の初期型に搭載されていたようなクローズドデッキをずっと採用していました。
製造技術の向上により、コストと強度の両立が可能となったため、ピストンも高強度の鋳造ピストンに変更されました。
タービンもツインスクロール化し、Spec.Cでは軸受も専用ボールベアリングになっています。
ツインスクロールの利点としては、低回転と高回転での高い過給圧を実現でき、ターボラグを小さくできることが挙げられます。
ボールベアリングの利点は耐久性とレスポンスの向上です。
また、GDBから採用されているAVCSについても解説します。
AVCSとは連続可変バルブタイミング機構であり、バルブタイミングを回転に応じて変化させるので、常に最適なバルブタイミングでエンジンを回転させることができます。
これによりフラットな出力が得られます。
更に、これは多くのファンが悲しんだ変更点があります。
それは、いわゆる涙目のGDBから等長エキマニを採用しインプの代名詞だったボクサーサウンドが聞けなくなってしまいました。
(エキマニ:エキゾーストマニホールドの略)
私は等長エキマニの音の方がレーシーで好みですが(笑)。
不等長エキマニでは排気干渉が発生するため、独特なドコドコといったマフラー音がするのですが、同時にこの排気干渉のために低速トルクが稼げないのがインプの欠点でした。
まあ逆に、高回転では排気干渉が良い働きをしてパワーの伸びがよくなるのです。
水平対向というレイアウトから、エキマニの取り回しが難しく、等長エキマニの採用を見送っていたスバルでしたが、オイルパンの形状を改良することにより等長エキマニを実現させました。
「GD系インプに乗りたいけどボクサーサウンドが良い!」
って人!安心してください!
GDAは全て不等長エキマニです!
因みにGC8を等長エキマニ化する有名な流用情報としてBG9レガシィの等長エキマニが利用できます。
私のGC8はそのBG9のエキマニに変えましたが、安く手に入る上に加工する事無くポン付けでき、更に軽量化にもなるので大変おすすめです。
低速トルクもなかなか稼げます。
これは現行のインプに搭載されているエンジンになります。
【STI(GRB、GVB)仕様】
(308PS/6400rpm、43.0kg-m/4400rpm)
最新型のインプから1つ前の型。(執筆時の2016年12月時)
競技グレード初の5ドアハッチバック。
280PS自主規制を突破。
インタークーラーの大型化、大径タービン、吸排気AVCS採用。
場面に応じてエンジンの出力特性を変化させるモード搭載。
【WRX-STI(VAB)仕様】
(308PS/6400rpm、43.0kg-m/4400rpm)
現行の最新型。(執筆時の2016年12月時)
車名はWRX-STI。
型式がG-からV-に変更になったことでレヴォーグ系列に変更。
GD系からの変更点は、排気系にもAVCSが採用されたことです。
GC系のインプはどうしても低速トルクがないドッカンターボと言われ続けて、GD系からは低速からのフラットなトルクを目指していたようで、GRB、GVBやVABになってからは低速トルクの不足は感じさせません。
私も1度知り合いの涙目GDBに乗せてもらいましたが低速モリモリでした。
ただやはり車体の重量が増加したのがとてもネックです。
GC8は1200kg台ですがGDBでは1400kgにもなります。
なので、GC8にGDBのエンジン載っけるのが最強になるのではと考えています(笑)。
話は少しそれますが、インプと言えばこれ!DCCDについてちょっとだけ述べます。
皆さんご存知のようにDCCD(ドライバーズ・コントロール・センターデフ)は車内のダイアルでセンターデフのロック率を変更できる機構のことです。
主に競技グレードに搭載され、フリーではFRのような挙動をし、ロックにすれば強力なトラクションを得ることが出来ます。
サイドブレーキが引かれた際には瞬間的にロックを解除する仕様になっているのでジムカーナなどのサイドターンでも小さく回ることができます。
その構造は、電子制御の電磁式LSDです。
GC8ではフリーでのトルク配分が「前:後=35:65」でしたが、丸目GDBでは「前:後=45.5:55.5」になり、差動制限力がアップしました。
涙目GDBでは「前:後=35:65」に戻され、ヨーセンサーやアクセル開度から最適なロック率に自動で変更するオートモードが追加されました。
更に鷹目GDBではフリーで「前:後=41:59」に変更されオートモードに蛇角センサーが追加されました。
加えて、デフを電磁式LSDと機械式LSDを合わせたものに変更したのでレスポンスが向上しました。
個人的な感想ですが、モータースポーツやるなら絶対DCCDがあった方が良いです(私のGC8には付いていませんが)。特にダートを走るならDCCD有り無しだと圧倒的にトラクションのかかり方が違います。
私の経験談です(笑)。
後付けも可能なのでやってみる価値あるかもですね~。
因みに、よくある悩みで
「DCCD付きのGC8買おうと思っているけど、たくさんグレードがありすぎてどれにDCCDが付いているか分からない、、、」
って人いますよね?
私もそうでした(笑)。
ですが実は外見で簡単に判断できるんです!
基本的にGC8でDCCDがついているのは、Type-RA-STI、Type-R-STIのグレードです。
これらのLimited車にも付いています。
Type-RA-STIはラリー車などについているルーフベンチレーターが付いていて、Type-R-STIはインプ唯一の2ドアクーペです。
ね?分かってしまえば簡単ですよね?(笑)
GDBでは、丸目は16インチの競技モデル、涙目はオプション、鷹目は標準でDCCD付きになります。
さて、長々話してきましたが続いてはお待ちかねGC8のエンジンの降ろし方を紹介します!
僕はF型のGC8に乗っていますが訳あって今回は前期型のGC8のエンジンの降ろし方について解説します!
以下の本を参考にして作業を進めました。
エンジン、ミッションの降ろし方はもちろん、ばらし方や組み方まで解説してあるのでインプ乗りの方は1冊持っておくと大変役に立ちます!
初めてミッション降ろした時に購入。1500円くらい?
後輩が部品取りとしてもらってきたGC8のEJ20Gを降ろします。
前期型はインタークーラーが斜めになっていて、エアクリボックスからのインテークの形状とタービンの入口の形状が中・後期型と異なるのでこの辺の流用はできません。
前期型Type-RA-STI。競技グレードなのでエアコンレス
まずはタワーバーを外してインタークーラーを取ります。
インプの作業はだいたいこれをしないと始まりませんね。
次はエンジンと、車体に繋がっているものをどんどん外していきましょう。
運転席側は、インテークやタービンの遮熱板、助手席側はエンジンハーネスや燃料のパイピングなどなど。
ここで注意ですが、燃料のパイピングを外す時は、給油口を開けて圧を抜くのを忘れないで下さい。
そうしないと燃料のパイピングを外した瞬間に、ハイオクガソリンをぶちまけることになりますので(笑)。
また、燃料のパイピングは3本あってそれぞれインマニに繋がっています。
どれがどこに繋がっているのか忘れないようにペンなどでマーカーして、適当なボルトなどをぶっ刺してメクラ処理しておきましょう。
手で触っているのとその下2つが燃料パイピング
また、エアコン付きの場合はエンジン前側の中央に付いているオルタネーター(以下:オルタ)の助手席側にエアコン用のコンプレッサーが付いているので、パイピングは外さずにエアコンコンプレッサーごとエンジンから分離しておきましょう。
エアコンのパイピング配管を外すと、エアコンの冷媒ガスが抜けてしまいますからね。
同様の理由でオイル漏れしないように、パワステポンプもオルタの運転席側に付いているので同様にエンジンから分離してよけておきます。
スロットルのとこに付いているアクセルワイヤーも分離できます。
次はラジエーターを外します。
ラジエーターの運転席側の下に付いているコックを回すとクーラントを抜くことが出来ます。
この時ラジエーターキャップを外しておかないとチョロチョロと少しずつしか出てきません。
あらかた出きったらホースを取ってラジエーターを取り除きます。
続いて車の下に潜っての作業になります。
タービン下側の遮熱板を取り、フロントパイプを外します。
続いてエンジンマウントとメンバーがナットでとまっているので外してしまいます。
これを忘れるとエンジンクレーンで吊り上げた時に車体ごと上がってしまいます(笑)。
また、フロントのドライブシャフト(以下:ドラシャ)を抜かないとエンジンとミッションの結合ボルトにアクセスで出来ないので抜きます。
ただ、ナックル側は抜かなくて良いので、あらかじめアクスルナットを緩めておく必要はありません。
先にドラシャとミッションが繋がっているところに抜け防止のピンが打ち込んであるのでポンチで取り外します。
ポンチでコンコン打っているとピンが勢いよく外れて飛んでいくので無くさないように注意しましょう。
それが出来たらアームとナックルを繋いでいるボールジョイントを外します。
ロアアームとボールジョイント部分
ボールジョイントをナックルの方のボルトで締め込んであます。
ボルトを緩めてバールなどを突っ込んで下にアームを引き抜くかたちで取ります。
が、大抵の場合ここが固着していて取れないことが多いので、どうしても取れない場合はサスとナックルを固定している2本のボルトを取ればドラシャがミッションから抜けます。
次はエンジン、ミッションの結合ボルトを取っていきます。
運転席側は手が入りにくいところが多いので大変です。
全部外れたら、ミッションに付いているピッチングストッパーを外します。
指差し部が既に外したピッチングストッパー
エンジンを持ち上げていく際にミッションも少し持ち上がるので必ず外しておきます。
あとはざっと見てエンジンと車体が繋がっていなければ、いよいよ持ち上げていきます。
とても不便なことにEJ20には持ち上げるためのフックが初めから付いていません。
(競技に使われるような車なんだから付けとけよ!って思いませんか?)
仕方が無いので、適当に見つけてきてつけましょう(笑)。
私は部にあった4G92(三菱)から借りて付けました。
エンジン前側のネジ山に1つ目のフック
ミッションとの結合部の上に2つ目のフック
エンジンクレーンで持ち上げていく
インマニが外れた状態になっていますが、エンジンを降ろすのにこの作業は必要ありません。
インテークマニホールドを外してあるのは、前述のとおりインテークの形状とタービンの入口の形状が中・後期型と前期と違うから使用しないためです。
バールなどを突っ込んでこじっていく
バールで、こじっていく時は、左右で少しずつこじっていくのがコツです。
エンジンクレーンで高さを変えながらこじって隙間を広げていきます。
このインプは割と曲者でなかなか隙間が広がらなかったので結合ボルトに潤滑油を吹きかけてこじりました。
EJ20が持ち上がった状態
各結合部のテンションを変えながら作業する事30分ほど格闘してようやく分離。
分離させたエンジンが取れたら使わなくなったタイヤなどに下ろしましょう。
こうすることでオイルパンも傷めなくて済むし引っ張って移動させることも出来ます。
(ちょー重いですが)
いかがだったでしょうか。私はEJ20を既に3基降ろしていますが、だいたいお昼頃に始めて夜の10時くらいには作業が終わりました。
慣れたらもっと速くできるでしょう。
大して作業スキルがない私でも出来たので、GC8がエンジンブローした際には参考にして下さいね(笑)。
それでは、どうもご精読ありがとうございました!
(執筆:北海道大学体育会自動車部)
パーツやメタル資源として再利用し国内外に販売!
車解体の資格を持つ廃車.comの工場と直取引だから高く買取れる。
すでに払った31,600円の自動車税も返ってくる。
(4月に廃車/1,600cc普通自動車)