自動車をその場で購入し、乗って帰れないのは何故?~公道で走るためのさまざまな手続き~
自動車を購入すると決めた瞬間「この車のオーナーだ!」と、気分が盛り上がる人も多いかと思います。しかし、実際に購入を決めて、契約をしてから手元に届くまでは時間がかかることも多く、イライラしてしまう人が多いのも事実です。これは何故なのでしょうか?
ここでは、自動車購入の契約から手元に届くまで、どのような手続きが必要なのかについて詳しく見ていくことにします。
中古車の展示場には、新旧様々な車両が売られる
最近はあまりみかけなくなりましたが、中古車店へ行くと「すぐに乗れます!」と書かれている中古車を見たことがありませんか?
通常、私たちがすぐに乗れるといえば、その場で契約をして、帰りには乗っていけるという認識になるのではないでしょうか。しかし、実際にはそのようにならないことも多いです。これには、現在の自動車登録にかかる問題、そして道路交通法の責任に関わる内容が絡んできます。
アニメでは、高級車のお店にお金持ちが突然来店、大金を見せびらかして自動車を買って乗って帰るというシーンを見たことがあるかもしれません。しかし、これは法規上不可能な話です。また、中古車店で「すぐに乗れます!」と書かれているものに関しては、それなりの条件がそろっていることが前提で叶えられる場合がありますが、現実的ではありません。
まずは、購入の際にどのような登録、手続きが必要なのかを詳しく見ていくことにしましょう。
自動車の登録というと車検を思い浮かべますが、これは、自分の住所を管轄する運輸支局・検査登録事務所による申請が必要になります。書類に不備がなければ、その日のうちに申請が完了しますが、そのためにはさまざまなものを用意しなければなりません。以下に必要な書類を挙げてみます。
△普通車
(1)ナンバーのない車両の場合(新規登録)
・申請書(OCRシート 現地で100円前後にて販売されています。)
・手数料納付書(手数料は印紙を現地で購入します)
・完成検査終了証(新車を登録する場合に必要です。発行日から9ヶ月以内)
・登録識別情報等通知書、または一時抹消登録証明書(中古車を新規登録する場合に必要です)
・自動車通関証明書(輸入車を新規登録する際に必要です)
・自動車損害賠償責任保険証明書(自賠責保険)
・自動車検査票(持ち込みによる検査を受ける場合に必要です。)
・譲渡証明書(所有者が変わる場合にのみ必要な書類です。旧所有者、新所有者がそれぞれ記入を行い、旧所有者は実印の押印が必要になります)
・自動車重量税納付書(重量税印紙の添付が必要です)
この他、所有者、使用者に関する印鑑証明および印鑑(実印)、代理の方が申請を行う場合は委任状、自動車保管場所証明書(証明が必要な場合)が必要になります。さらに、使用者と所有者が異なる場合には、使用者の住民票など、住所を証明できる書類を用意しなければなりません。
(2)自動車の譲渡、譲受を行う場合(ナンバーあり、移転登録など)
(1)にかかる書類と大きく変わる部分は、完成検査終了証、自動車損害賠償責任保険証明書が不要になる他、自動車検査票の代わりに自動車検査証(車検証)が必要です。その他、旧所有者の印鑑証明が必要になるほか、新所有者と使用者が違う場合、両方の住所の証明書類(住民票など)を用意しなければなりません。
また、平成20年11月以降から、車検証は通称「Aタイプ車検証」と「Bタイプ車検証」に分かれています。どちらの車検証になるかによって、用意する書類が多少異なってきますので注意が必要です。
・Aタイプ車検証の場合
所有者と使用者の欄があり、所有者に関する記載があるタイプの車検証のことを言います。通常の車検証はこちらであることが多いですが、この場合は、所有者の書類をまとめ、申請しなければなりません。
・Bタイプ車検証の場合
使用者欄のみがあり、備考欄に所有者の情報の記載があるタイプの車検証のことを言います。具体的にはリース会社などが所有者になっている場合などが挙げられますが、この場合はリース会社の書類の準備が必要です。
所有者には登録識別情報が通知されていて、この登録識別情報の提供が必要となります。もし、その電子的な提供がない場合は、登録識別情報の記入をしなければなりません。
なお、Bタイプ車検証の識別のポイントは、車検証の枠外左上にある5桁の番号です。Bタイプ車検証に該当する場合、番号の右側に「B」の表記があります。
OCRシートの一例。その他に委任状等も必要になる
△軽自動車の場合
(1)ナンバーのない車両の場合(新規登録)
軽自動車の場合、軽自動車検査協会にてほぼ同様の書類を用意し、車両の登録が必須となります。ただし、普通車の場合と違い、いくつか必要な書類が違います。具体的なものは以下の通りです。
・中古車の新規登録に必要な書類が増えます。具体的には以下の通りです。
保安基準適合証
点検整備記録簿
自動車検査証返納証明書
・代理者が登録する際に必要な委任状や車両登録の際、自動車保管場所証明書が不要です。自動車保管場所証明書については、あくまで「新規登録」に必要ないだけで、取得しなくて良いとは限りません。
(2)自動車の譲渡、譲受を行う場合(ナンバーあり、移転登録など)
こちらに関しては、普通車の場合とほぼ同様の書類が必要になります。基本的に、住所証明が必要なのは「新使用者」となり、それ以外の方の住所証明書類は不要です。
ここまで見ただけでも、かなりの書類を用意しなければなりませんね。状況によってはこれ以外に書類が必要になることもあり、その場で全て事を済ませるのは不可能だということが分かります。
なお、これらの書類に関しては、印鑑証明や住民票など、事前に用意できるものもありますが、OCR用紙などはお店にない限り、現地での記入が必要です。「そこまでできれば当日持ち帰りくらいなら…」と思うかもしれませんが、これには一つ大きな壁があります。それは、自動車保管場所証明書です!
以下で、自動車保管場所証明書について詳しく見ていくことにしましょう。
自動車保管場所証明書とは、その使用する自動車の車庫を証明するもので、通称「車庫証明」と呼ばれています。この証明書に関しては、登録の名義変更後15日以内に変更を行わなければならないとされていますが、新規登録および譲渡、売買の場合は事前に用意しなければなりません。
ただし、軽自動車の譲渡や売買における登録の場合は前述の(2)の場合、その場での用意はいらないほか、軽自動車の場合は地域によって車庫証明が不要な場合もあります。
なお、自動車保管場所証明書の取得は、住所を管轄する警察署での申請が必要になり、申請後から土・日を除く4〜5日前後の日数を経て、発行されることになっています。また、申請の際には「型式」や「車体番号」が必要になるため、その車両の情報がなければ申請ができません。
つまり、車庫証明が必要になる手続きの場合は事前に取得することができない上、その場で購入を決めてすぐに申請を出しても、その日のうちには証明が取れないのです。では、書類が必要で、それらの書類を記載するには、どのような情報が必要なのかを確認していきましょう。
・自動車保管場所証明申請書
メインとなる申請書類です。メーカー名、自動車の型式、車体番号のほか、自動車の大きさなどが必要となります。また、自分の住所および駐車場の住所などの記載をしなければなりませんので、細かな情報を収集しておかなければなりません。
・保管場所標章交付申請書
自動車保管場所証明申請書と内容はほぼ同じで、複写式になっているような場合、一度で記載できる場合もあるようです。
・保管場所の所在図・配置図
保管場所…つまり、駐車場として申請する場所の地図を描く書類です。周辺道路の情報を記載する所在図のほか、駐車場の詳細を記載する配置図を記入します。駐車場としてしっかりと使えるかどうかを確認する必要があるため、駐車場のサイズ、自宅からの距離などを記入しなければなりません。
・保管場所使用権原疎明書面(自認書)または保管場所使用承諾証明書など
自動車保管場所として、その場所を使用する権利があることを証明する書類です。自認書は警察署で入手できる書類に含まれています。
また、保管場所使用承諾証明書は、賃貸などでその場所を借りているような場合に必要です。具体的には「賃貸借の契約書の写し」のほか、使用料金の証明書や公的法人が発行する確認証明書などが該当します。
また、保管場所として指定できる場所には制限があります。具体的には
(1)自動車の使用の本拠の位置(現在住んでいる住所)から、保管場所(駐車場として申請する場所)が「直線距離で」2キロメートル以内にあること。
(2)保管場所は、道路から支障なく出入りができ(広さがあるかどうか)、自動車の全体を収容できること。(車体の一部がはみ出す場合は登録ができません)
(3)自動車の保有者(所有者、あるいは使用者)が、その場所を自動車の保管場所として使用する権利(自宅の敷地あるいは賃貸などで借りている場所)を持っていること。
これを守らなかったり、虚偽の申告をしたりすると、「車庫飛ばし」と呼ばれる犯罪行為に当たる場合がありますのでくれぐれも注意してください!
なお、これらは罰金刑となるため、起訴されてしまった場合、前科者となってしまいます。虚偽の保管場所申請を行った場合、20万円以下の罰金、道路を保管場所として利用した場合は3カ月以下の懲役、または20万円以下の罰金、合わせて違反点数3点が科されます。
自動車保管場所証明申請書は4枚1セットです
自動車に貼られる“保管場所標章”
これだけの申請が必要になるのに、その場で乗って帰ることができる自動車とはどのようなものなのでしょうか?
前述の手続きの流れから考えると、、
・お店ですでに車両の登録、車庫証明の手続きが完了していて、譲渡という扱いが可能なもの
・登録されている地域の管轄が変わらない(管轄が変わると、ナンバープレートの付け替えが必要になるため)
・印鑑や印鑑証明、住民票などの書類がそろっている
ということになりそうですが、現実はまず不可能だと思っておきましょう。
たとえば、平日の午前中にお店へ行き、購入の手続きを行います。そのまま乗って帰ることはできそうですが、その後は車庫証明を取得する必要があるほか、もちろん、保管場所も必要です。名義変更などにかかる手続きはお店がやってくれたとしても、後日、書類は取りに行かなければならないでしょう。
また、お店がこのような形式を取らなくなってしまったのには、駐車違反などの交通違反、万が一の事故や保険の問題もあります。駐車違反を放置し、違反金を支払わないでいると、所有者に放置違反金の通知が届くようになりました。万が一、保険の切り替え前に事故を起こしてしまった場合も大変ですね。
これらのトラブルを防ぐためにも、お店側は手続きが完了しないうちに販売をしなくなったともいわれています。あとは信頼の問題となってきそうですが、ほとんどの場合はその場で乗って帰ることはできないと考えておきましょう。
中古車オークション会場。中には悪い人も居る!?
自動車を公道で運転するためには、さまざまな手続きが必要です。これらの手続きを怠れば後で面倒になるのは自分ですし、場合によっては前科がつくこともあります。どうしてもすぐに必要だという場合もあるのですが、そういう場合はレンタカーを手配するなど、さまざまな対処方法を考えるようにしましょう。
また、くれぐれも犯罪に巻き込まれないよう、時間はかかったとしても、手続きはしっかりと行ってくれるちゃんとしたお店を選んで品物を買うことも大切です。
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