自動車のマフラーを替えた時
ご無沙汰しております。岐阜大学自動車部です。
先日、OGの方が「マフラーを柿本に変えたよ!」とお披露目にきてくださいました。
いい色、いい音は気持ちが高まります。
純正マフラーから社外マフラーに交換!
というわけで、今回はマフラーの話です。
純正マフラーから社外マフラーに変える人は私の周りにもたくさんいます。音量を求めて、見た目を求めて、パワーを求めて、理由は様々かと思います。マフラーを変えるとどんな変化があるのでしょうか?
◇ マフラーの意味
まず、マフラーと言われて何を思い浮かべますか?そうです冬に首に巻くやつです!…違います。
長い鉄パイプを思い浮かべた方、半分正解です。Wikipediaには「内燃機関(エンジン)において排気ガスが外部へ排出される際に発生する音(排気音)や吸気管に空気が吸い込まれる際に発生する音(吸気音)を低減すると共に、エンジン特性を調整する装置である」と書かれています。つまり、マフラーとは鉄パイプの先っちょに付いている消音装置(サイレンサー)のことなのです。俗に「直管」と言われるのは、この消音器を取り除くことで爆音を出しています。サーキットなどを走る競技車両のマフラーもタイムを縮める云々の前に音量を低減することが目的というわけです。(もちろんパフォーマンスにも影響します)
今回はマフラー(サイレンサー)題材にして、普段私達がマフラーと呼ぶ鉄パイプ(マフラー+エキゾーストパイプ)について理解を深めるきっかけになればと思います。
◇ 構造
マフラーは、見た目にも、性能にも変化を感じられる交換しがいのある部品です。ではなぜマフラーを変えると性能が変わるのでしょうか?性能の話をするにあたり、マフラーの構造について触れたいと思います。マフラーはサイレンサーだという事を前節で取り上げましたが、下から覗いても太めのパイプがくっついているようにしか見えません。その太めのパイプの中に音を消すための構造が詰まっています。その構造は大きく分けて二種類、多段膨張型とストレート型があります。
ストレート型
その名の通り、まっすぐな筒です。筒の側面には穴が開けられていて、筒を包み込むように消音材が巻いてあります。メリットとしては、簡素な構造なので重量が軽く、排気の抵抗も小さいこと。デメリットとしては、低い音を消しきれなかったり、中の消音材が劣化し、マフラーとしての機能を果たさなくなったりするなどが挙げられます。私の愛車も一昨年まで難なく通っていた車検がついに音量規制に引っかかり、マフラーを交換する時間も無く、泣く泣く外付けサイレンサーを取り付けました。
多段膨張型
もう一つが、純正マフラーに主に用いられている多段膨張型です。この構造は「筒がたくさん段になっていて、その中を排気が複雑に抜けて行くことで空気の膨張・干渉を繰り返して音量を下げる」構造です。こちらのメリットとしては、劣化しづらいので長く使うことができ、消音能力もストレート型以上ということで、デメリットは、排気がたくさんの筒を抜けていく、つまり排気効率が非常に悪いことです。空気の出が悪いということは、空気の入りも悪くなります。
◇ 性能
構造の話で大方性能の話も終わってしまったのですが、マフラー(サイレンサー)で音量を下げるとどうしても抵抗が生まれます。パワー至上主義であれば、抵抗のないマフラーが理想的です。そしてその理想は「直管」として音量規制に引っかかるというわけです。そこで、ふと疑問に思ったのは、もっとも抜けがいいはずの「排気漏れ」だとパワーが出るどころか発進でもたつき、加速もしない音だけうるさい車になってしまうことです。エンジン内で発生した排気がダイレクトに外気に放出され、排気効率としては申し分ないのになぜパワー(特に低回転時)がでないのか?まず、「パワー」と言っても様々です。抜けのいいマフラーに交換すると馬力が上がると聞きますが、この馬力が前述している抵抗をなくすことで得られるパワーのことです。馬力の対比で使われる「トルク」が抜けを良くすることで失うパワーです。馬力やトルクを詳しく書こうと思うととても長くなってしまうので今回は「抜け」が変わるとどう変化するかを簡単に図にしてみました。
純正
純正マフラーは、消音能力はもちろんのこと、街乗りの発進の多い環境を想定して設計されています。発進に必要なのは低回転でのパワー(トルク)です。トルクはエンジン内部(燃焼室)の平均圧力が高いほど大きくなります。そのため、わざと抜けを悪くして背圧を上げ、エンジン内部の気圧を高く保つのです。抜けを悪くするために、多段膨張型のマフラーが用いられるだけではなく、エキゾーストパイプも曲がりくねった形をしている場合も多く見られます。
純正マフラーは、全体の性能をキープする
国産小型車の純正マフラー
スポーツ
逆に、モータースポーツでは発進よりも速さを持続させるパワー(馬力)が重要になってきます。馬力はトルクに回転数をかけたものです。ただ、純正マフラーのようにトルク重視にしてしまうとトルクは上がりますが、抵抗が大きく、回転数を上げようとしても排気が詰まってしまいきれいに吹け上がらないので馬力も下がってしまいます。そこで、抵抗を減らし、高回転までスムーズに回せるよう設計されたのが一般的なスポーツマフラーです。(稀にトルク重視のスポーツマフラーもありますが。)スポーツカー等に多く採用されているのは、先程構造の節で紹介したストレート型です。また、エキゾーストパイプもなるべく曲がりくねらないよう工夫がされています。たまに見かける砲台のように太いマフラーも、見た目だけではなく、排気口を広くして抜けを良くすることを目的としています。
スポーツマフラーは排気ガス抜けを重視して、パワーを得る
スポーツマフラー。純正よりも太い!
スポーツマフラー、少し音も大きい
排気漏れ
最後に排気漏れですが、純正とスポーツの違いがわかってしまえば納得が行くかと思います。排気がマフラーまで到達せずに漏れてしまうと抜けが良すぎて背圧が極端に小さくなってしまうので、エンジンから排気だけではなくせっかく吸い込んだ吸気まで出てこようとします。すると、エンジン内部の気圧が下がりトルクももちろん下がります。本来あるべき空気が足りないとエンジン内の燃焼も小さくなり本来の力を出すことができません。だから発進のときにもたついてしまうのです。
排気ガスが漏れると、本来の力が出ない
廃棄漏れの状態…
中古部品のマフラーの在庫
なお、上の図は全てバルブオーバーラップ時のものです。バルブオーバーラップというのは一言で言えば、吸排気の弁がどちらも開いている状態です。吸排気弁の詳細は岐阜大学自動車部投稿の4稿目のコラム「内燃機関の仕組み」を御覧ください。
◇ 1本?2本?3本?4本?
ここまでマフラーそのものの話をしてきましたが、実際に車から顔を覗かせるマフラーの本数は様々です。印象だけの話ですが、ポルシェ然り、ベンツ然り、お高い車になるほどマフラーの数も増えていくイメージです。でも、実は本数が多いからといって高価で高性能というわけではありません。例えば、大排気量の車だとそれだけ太い出口を用意する必要があります。しかし、最低地上高を満たすために細い出口しか取り付けることができないとき、本数を増やして排気口を確保します。ドレスアップとして、マフラー(サイレンサー)部分だけを増やしている場合もあるので、本数に関しては一括りにできません。良い音色を出すために長さや本数を設計するメーカーや、回転数によって1本出しか2本出しかを制御するメーカーなど、様々な思惑で設計されていることも多々あります。
片側2本、両側で4本出し!?マフラー
◇ 最後に
ただの鉄パイプ、されど鉄パイプ! (最近のマフラーは、ステンレス製ですが…)
意外と奥が深いマフラーについて、興味を持っていただけたなら幸いです。
純正が物足りなくなったら、自分好みの見た目や音を追求してみるのもいいと思います。わかりにくいところも多かったかと思いますが、ここまで読んでいただきありがとうございます。それではまた!
(執筆:岐阜大学自動車部)
パーツやメタル資源として再利用し国内外に販売!
車解体の資格を持つ廃車.comの工場と直取引だから高く買取れる。
すでに払った31,600円の自動車税も返ってくる。
(4月に廃車/1,600cc普通自動車)