海外で活躍する中古車たち(1)~海外への輸出事情について~
自動車に限らず、純日本製品は質が良く、日本人が思っている限界を超えてもなお外国では高額で取引されていたり、現役で走っていたりします。
海外の中古車関連第一弾は、海外に輸出できるようになるまでどのような書類や手続きが必要なのか、または海外ではどのような事情があるのか、いくつかの項目に分けてご説明していきます。
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日本国内で中古車を販売するためには、名義変更やメンテナンスなどの手続きが必要です。しかし、外国に車両を輸出する場合、日本での手続きと、輸出先で必要な手続きの二種類があります。これらをしっかりと手続したうえで輸出しないといけません。
そのためは、日本語だけでなく、英語などの外国語を理解する必要があり、一般の中古車販売店で手続きを取るのはなかなか難しいです。以下に日本側で用意をする書類についてご紹介していきます。
(1)インボイス
「INVOICE」 日本語では「送り状」と呼ばれるものです。送り状とはいっても、挨拶をするためのものではなく、どのような車両を輸出するのか「車種名や車体番号、ガソリン車かディーゼル車か」などの基本的な情報を記入します。
(2)パッキングリスト
「PACKING LIST」 日本語では「梱包明細書」と呼ばれます。日本でも中身の確認をするために明細や納品書があり、それによって品物のチェックをすることが可能です。これは、輸出の場合でも同様で、現地に着いた際、中古車の積み荷をスムーズに取引をするために必要なもので、梱包ごとの荷印や重量などの基本情報が記載されています。
現地であわてることのないよう、シッピングマーク(荷印)を記載しておくと、照合間違いなどを防ぐことができます。
INVOICEとBill of Lading
輸出予定届出書/Export Certificate
(3)B/L
Bill of Ladingの略で、「船荷証券」のことです。簡単に言うと、輸出をした人と船会社の契約書類のようなものです。荷積みを行った船会社が中古車を積んだ証であると同時に、輸出先では、引き換えの書類として利用されます。
(4)輸出抹消登録証明書 「Export Certificate」
中古車を輸出する前には、日本では使わないという抹消登録をする必要があります。手続きは管轄の陸運局で行い、書類を作成しなければなりません。なお、この証明書は原本が受け取り時に必要になる場合があるので、その場合は原本を輸入先へ送る必要があります。
この他、日本車であることの証明に原産地証明が必要になったり、バイヤーから求められる時には船積み前検査証明書などが必要になったりすることもあります。
これだけでも、中古車を1台出すだけでもかなりの手間がかかることが分かります。また、通関に詳しい業者を介して作業をお願いすることになるので、「輸出したい!」と思っても、それなりに時間がかかるのが現状です。
中古車を運搬するには、それなりに輸送費用が掛かるのは言うまでもありません。しかし、それ以外にも輸出不可能になってしまうパターンもあります。日本国内で販売するよりもその基準は厳しく、せっかく運び出しても販売不可能になってしまう場合もあるのです。
輸出できなくなってしまうかもしれない、いくつかの事例をご紹介していきます。
△自動車に検疫の問題が?
日本国内で作った車両を日本で販売する場合でも、なるべく中古車はきれいに清掃されて、きれいにしてから販売されます。これは、輸出の場合も同様で、日本国内で販売するよりもきれいに消毒などを行い、徹底した清潔さが大切です。
たとえば、輸送中にタイヤが汚れてしまったような場合、ついている泥、その他車内に残っている汚れなどが原因でバイオセキュリティ検疫に引っかかってしまう場合があります。検疫項目は、昆虫、植物関連物質(種子)、土壌、汚水、その他汚染物質等々に問題があると通関できなかったり、消毒費用などが余計にかかって面倒なことになってしまったりする場合があるのです。
△年式規制や修復履歴車規制!?
輸出する国によっては、新車製造年から何年か経過したものではないと輸入出来ない国もあります。ただ、その年式規制は数ヵ月から数年で制度自体が変わりますし、アジアの国の一部では袖の下のようなパーミット(関税の免税許可証)が発行される国もあり規制の変更が繰り返されます。また、安全基準や排気ガス基準のクリアーや、走行距離計の表示を不正に変更したものや、錆、摩耗があれば整備しないと輸入許可が下りない国もあります。
錆(サビ)や修復履歴の検査風景
検査が終了し、販売を待つ輸出中古車
△サービス品は厳禁!?
室内、トランクルームなどに標準で装備されているアイテム以外が一緒に入っていて輸出された場合、密輸を疑われてしまうことがあります。ちょっとしたサービスでカーステレオやそのほか品物を積んだ状態で輸出することは基本的にできません。
最悪の場合は輸出許可が下りないことも…。
万が一、余計なものを積んだ状態で輸出する場合は、インボイス(送り状)にその明細をきっちりと追記しておく必要があります。
この他、不正輸出を防止するための確認などが必要になることもあります。
TVで見ていると、先進国から発展途上国まで、さまざまな国で日本車が走っているイメージがあります。しかし、現状は違い、日本車の輸入を禁じている国もあるのです。
いくつかのパターンについてチェックしてみることにしましょう。
△輸入自体が認められていない
規制の種類はさまざまですが、商業目的の輸入が禁止になっていたり、中古車ビジネス目的は禁止だけれど個人での使用目的なら可能だったり、輸入自体が認められていない国や、数百パーセントの関税をかけてコスト等を考えると事実上不可能にしているケースもあります。アジア圏だと、中国やパキスタンへは商業目的は不可ですし、インドネシアへの輸入は一切認められていません。タイや、ベトナム、インド等々も高額な関税や規格基準の厳しい条件付けがなされています。中南米だと、アルゼンチン、ブラジル、メキシコ、コロンビア、エクアドル、ベネズエラ等々には中古車輸入は出来ません。ただ、チリには原則輸入は認められていませんが、例外としてイキケ(第1州)とプンタ・アレナス(第12州)のフリーゾーン(保税特区)には輸入可能です。しかしチリ国内の他の州に販売不可で、第三国への再輸出しか認められていません。アフリカだと、南アフリカ共和国が事実上輸入禁止になっています。しかし日本からの輸出抹消登録の台数を確認すると、南アフリカへの実績が多数存在するので、南アフリカを経由して近隣のアフリカ諸国には販売されているようです。
△右ハンドル車は禁止などの条件付き
日本車は、ほとんどが右ハンドルです。しかし、外国によっては、この右ハンドルが認められていないこともあります。たとえば、中国やベトナムでは、ビジネスとしての輸入が禁止されているほか、個人利用等でも左ハンドル車(右ハンドルからの改造も不可)であることが条件に課されているのです。アジア圏では、カンボジアでも右ハンドル車の輸入自体が禁止されています。 中南米では、ペルー、コスタリカ、パナマ、パラグアイ、ドミニカ共和国等々も右ハンドル車の輸入は不可であったり、走行そのものが許されていなかったりする国もあります。その他のエリアでは、エジプトやウズベキスタンも右ハンドル車の輸入を禁止しています。
禁止されている理由はさまざまですが、多くは自国の産業を守るという目的があります。日本車が輸入され、国民が日本車ばかりを乗るようになれば、国内生産の車両が売れなくなってしまうのです。
南の島、サモアに輸出された日本の中古車
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私たちが普段、外国へ自動車を輸出する機会というのはほとんどありません。しかし、輸出入のことを知ることで、自動車の世界の違った一面を垣間見ることができるでしょう。
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