こんにちは。
岐阜大学自動車部です。
岐阜大学のある岐阜市では、年に数回雪が積もります。
ですので、岐阜市内を走るほとんどの自動車は、冬にはスタッドレスタイヤを装着しています。
ということは、年に2回タイヤの履き替え作業を行っている人が多いのです。
そこで今回は、タイヤの履き替え作業の手順と一緒に、役に立つ情報を紹介します。
スタッドレスタイヤへの履き替えの時期は、初雪の1ヶ月前がベスト、だと言われています。
なぜならスタッドレスタイヤは、表面が削られて、内部のゴムが表面に出て初めて性能が発揮されるので、雪が降る前に、表面を削る必要があるからです。
特に新品のスタッドレスタイヤは、表面がツルツルなので、内部の吸水性のあるゴムが表面に出るように、事前に慣らし走行をして、表面を削る必要があります。
慣らし走行に必要な距離は、大体200kmと言われていますので、長距離乗られる方は、それほど早くから慣らし走行をする必要はないかも知れません。
目安ですが、岐阜県の平野部の初雪は、12月中旬から下旬と言われているので、11月の中旬から下旬にかけて、スタッドレスタイヤへ履き替えれば、十分間に合います。
ノーマルタイヤへの履き替えの時期は、雪が降らなくなった時期がベストです。
目安ですが、岐阜県の平野部では、3月の下旬から4月の上旬です。
また、スタッドレスタイヤは、ゴムが柔らかいこともあり、ウェットグリップが良くないので、遅くても雨の多い梅雨より前には、履き替えておきたいところです。
タイヤを履き替える前に、必ず準備しておきたいことは、事前にタイヤにエアーを、入れておくことです。
ノーマルタイヤの場合は約4ヶ月、スタッドレスタイヤの場合約8ヶ月保管されるので、エアーが抜けています。
エアーがない状態で走行すると、タイヤに負荷が加わり、バーストなどの危険性があります。
そのため、履き替える前に、タイヤにエアーを入れておく必要があります。
また、エアーを入れる際に、1本だけ異常に空気圧が低くなっていないか確認しておくと、エアー漏れや、パンクを見つけることができます。
指定の空気圧は、運転席のドアを開けた時に見える、ピラーの部分に書かれているので、それを見て適切な空気圧に調整します。
タイヤはゴムでできているので、年数の経過とともに劣化するので、装着前にゴムが劣化していないかを、確かめておきましょう。
スタッドレスタイヤの寿命は、大体3年から4年ですが、保管状況によって変化するので、心配であればタイヤ販売店で、タイヤの硬度を測定してもらえます。
タイヤの製造年は、サイドウォールに書かれた4桁の数字の、下2桁が西暦の下2桁になっています。
例えば「3017」と書かれていれば2017年製のタイヤです。
またノーマルタイヤの場合もそうですが、サイドウォールにひび割れや、大きな傷がないかも確認しましょう。
サイドウォールのひび割れは、バーストにつながることもあり、大変危険です。
タイヤをより長く使うために、タイヤ交換の際に、タイヤが装着されていた場所を記録し、ローテーションを行うと良いです。
ローテーションの方法は、回転方向に指定のあるタイヤの場合は、左右を入れ替えずに、前後のみを入れ替えるだけです。
回転方向に指定のないタイヤは、次の図3のようになります。
図3 タイヤローテーション
駆動輪になるタイヤは、左右を入れ替えると覚えておきましょう。
四輪駆動車は、メインの駆動輪が、前輪の場合は前輪駆動、後輪の場合は後輪駆動として、扱ってください。
また、タイヤが装着されていた場所を記録するために、場所を書いたシールを貼っておくと、良いでしょう。
タイヤ交換には、工具が必要です。
必要な工具は、以下の通りです。
ジャッキ
輪止め
レンチ
トルクレンチ
軍手
マイナスドライバー
油圧ジャッキ
トルクレンチ
ジャッキは、車載のパンタジャッキではなく、少ない力で車体を持ち上げることができる、油圧ジャッキを使うことが望ましいです。
また、マイナスドライバーは、ホイールキャップを外す時や、タイヤの溝に挟まっている、石を取ることに使います。
トルクレンチがない場合は、車載レンチの長さと、自分の体重を用いて、トルクを計算することができます。
ほとんどの車載レンチの長さは、約25cmになっているので、ソケットから力がかかる部分までの長さを22cmとすると、次の式よりトルクを計算することができます。
T=m×g×LT=m×9.8×0.22T=2.16×m
T : トルク [N・m]
m : 体重 [kg]
g : 重力加速度(≒9.8) [m/s2]
L : ソケットから力がかかる部分までの長さ(≒0.22) [m]
例えば体重50kgの人の場合のトルクは、T=108 [N・m]となります。
メーカー指定のホイールナットは、締め付けトルクが普通車の場合、100[N・m]から110[N・m]なので、体重50kgの人が全体重をかければ、十分なトルクをかけることができます。
体重に合わせて、車載レンチを持つ長さを調整することで、トルクレンチを使わずに、締め付けトルクを調整することができます。
タイヤレンチの長さを測る
I まず平坦な場所に駐車し、AT車はギアをPに入れ、MT車はギアをRに入れます。
そしてサイドブレーキを強く引きます。
車高が低く、ジャッキが車体の下に入らない場合は、事前にスロープに乗せてから、上記のことを実施します。
II 持ち上げるタイヤの、対角にあるタイヤのオーバーハング側(前輪の前または後輪の後ろ)に、輪止めをかけます。
輪止めをかけたところ
車体をジャッキアップすると、ジャッキアップしたタイヤの、対角のタイヤにオーバーハング側に、最も強く力がかかるからです。
III ホイールキャップがある場合は外し、交換するタイヤの、ホイールナットを緩めておきます。
ジャッキアップしてから、ホイールナットを緩めようとすると、車体が揺れて、ジャッキが外れてしまう可能性があるので、事前に緩めておく必要があります。
IV ジャッキを、ジャッキアップポイントにかけます。
車種によっては、ジャッキアップポイントが分かりにくい場合もあるので、事前に取扱説明書で、確認しておくと良いです。
またこの際、車体に傷がつかないように、ジャッキの皿の上に、ゴム製のクッション材を乗せておくと良いです。
V ジャッキの位置が決まれば、ジャッキハンドルを上下に振り、車体を徐々に持ち上げていきます。
タイヤが数センチ浮くまで持ち上げます。
また、スタッドレスタイヤは、ノーマルタイヤより外径が大きいことが多いです。
そのため、ノーマルタイヤからスタッドレスタイヤへの交換の際は、多めにジャッキアップしておくと、作業がしやすいです。
また、フロアジャッキで両輪をジャッキアップしている場合、タイヤの近くのジャッキアップポイントの下に、ジャキスタンドを入れておくと、万が一ジャッキが下がった場合にも安全です。
VI ホイールナットを外します。
一番下に来ているナットを最後に外すと、タイヤが傾かなくて作業がしやすいです。
この時、完全にレンチがホイールナットにかかっているかに、注意をしましょう。
レンチがずれていると、ホイールナットの角が、削れてしまう可能性があります。
ナットにレンチが完全にかかっているとレンチが落ちない
VII タイヤを車体から外します。
ハブが固着して外れない場合は、一度タイヤが着地するくらいまでジャッキを下げ、タイヤに力を加えます。
そしてもう一度ジャッキアップすると、固着が外れます。
ホイールを外す際に、ハブボルト(ホイールナットを締め付けるボルト)のねじ山を舐めないように、気をつけて外します。
VIII 交換するタイヤを、車体に取り付けます。
この際も、ハブボルトのねじ山を舐めないように、気をつけます。
複数のP.C.D(すべてのバブボルトの中心を通る円の直径)や、穴数に対応しているホイールの場合、どの穴を使うのかを、事前に確認しておくと、スムーズに作業ができます。
IX タイヤをホイールナットで固定します。
ハブボルトと、ホイールナットのねじ山が合わないまま、締められるのを防ぐため、最初は手でホイールナットを締めます。
最も上のナットを締めてから、最も下のナットを締め、以降対角に軽い力で、締められなくなるまで締めていきます。
この際、ナットの形状が、ホイールの形状にあっているか、注意します。
特に、純正ホイールと社外品のホイールとを履き替える際には、注意が必要です。
ホイールナットの種類は、主に次の3種類あります。
60°テーパー座
平面座
球面座
60°テーパー座は、多くの社外ホイールで使われています。
純正ホイールではスズキ、日産、マツダ、ダイハツ、スバル、三菱の車に多く採用されています。
平面座は主に、トヨタ車のアルミホイールに採用されています。
また一部の社外ホイールにも、採用されています。
球面座は主に、ホンダ車に採用されています。
60°テーパー座とよく似ているので注意が必要です。
左から60°テーパー座、平面座、球面座
この3種類を誤って取り付けると、走行中にタイヤが外れる危険性があり、ホイールの座面も削られてしまうので、必ず正しく取り付ける必要があります。
X 周囲の安全を確認し、ジャッキを下ろしていきます。
ジャッキスタンドを使っていた場合は、ジャッキスタンドを外してから、ジャッキを下ろします。
油圧ジャッキの場合、油圧を抜くと、急激にジャッキが下がるので、慎重に下ろしていきます。
Ⅺ ジャッキを下ろした後、ホイールナットをトルクレンチで、規定トルクになるまで締め付けます。
締め付けトルクは、軽自動車の場合80[N・m]から90[N・m]の間、普通車の場合は100[N・m]から110[N・m]の間ですが、取扱説明書で確認しましょう。
XII 輪止めを外し、同様の手順で他の4本のタイヤを交換します。
XIII すべてのタイヤの交換が終わったら、数百メートル走行し、異常がないことを確かめます。
また走行後、ホイールナットが緩んでいないか、トルクレンチを使って、確認します。
XIV 外したタイヤの、溝に挟まっている石を取り除きます。
石を取り除くことで、パターンの変形を防ぐことができます。
また、タイヤの溝に挟まっている石が原因で出る、走行中のノイズも、低減できます。
この際に、タイヤがパンクしていないことを、確認しておくと、次回タイヤを履き替える際に、困りません。
XV 外したタイヤを、カーシャンプーなどで洗い、汚れを落とします。
特に、スタッドレスタイヤからノーマルタイヤへの履き替えの際は、スタッドレスタイヤに、融雪剤が付着していることがあり、念入りに洗う必要があります。
XVI 洗ったタイヤをよく乾かし、袋に入れて保管します。
タイヤは油分、外気、熱、紫外線で劣化するので、黒い袋に入れるのが望ましいです。
また保管場所で避けたいのが、エアコンの室外機の近くです。
エアコンの室外機では、オゾンが発生しており、オゾンによって、タイヤの劣化が、早まってしまいます。
さらに、盗難防止のために、ワイヤーなどでタイヤを固定しておくと良いです。
乾燥を避けるため、袋に入れて保管
今回は、タイヤの履き替え作業の手順と、気を付けるポイントについて、説明しました。
タイヤの履き替えシーズンになると、タイヤショップはとても混雑するので、このコラムを参考に、自分でタイヤを交換してみてはいかがでしょうか。
作業の際は、くれぐれも安全に気をつけてください。
(執筆:岐阜大学自動車部)